年の差十五の旦那様 外伝②~いつか、それが『愛』になる~
 第二子の妊娠が判明したときのことだ。一番つわりがひどい時期に、奥さまは泣いていた。

 あれは妊娠による精神的不調だって侍医は言っていた。あと、つわりでかなり気持ちが参っているのだろうと。

 私はどう声をかけたらいいかわからなくて、結局根気強く「気にしないでほしい」と伝えることしかできなかった。

「あの言葉で私、楽になったの。あなたはすごく私のことを考えてくれて、わかってくれるんだって思ったのもあるのよ」
「……私には、それしかできなくて」

 寄り添うか、励ますか。私にできることは少なくて、役に立てたという実感は薄い。

「それでいいじゃない。クレアは私がここに来たばかりのころも、すごく親切にしてくれた。……私、あなたが思う以上にあなたに感謝しているのよ」
「……奥さま」
「だから、私はあなたが悩んでいるのなら相談に乗りたいし、困っているなら助けたいと思うの」

 私の手を奥さまが握る。温かくて、優しい力加減。ついつい涙があふれた。

「そりゃあ、アネットさんのほうが頼りになるだろうけど……」

 そして、次の言葉に笑みがこぼれた。

「アネットさんと奥さまでは頼りになる部類が違いますから」
「……そう?」
「えぇ。アネットさんって、私にとってお母さんみたいな存在で。同年代の相談相手ではありませんから」
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