年の差十五の旦那様 外伝②~いつか、それが『愛』になる~
第17話 恋する乙女(1)
 アネットさんの仕事部屋の扉をノックすると、すぐに声が返ってきた。扉を開けて室内に足を踏み入れる。アネットさんは奥の執務机に向き合っていた。ちらりとこちらを見て、立ち上がる。

 応接用のソファーに移動したアネットさんは、視線で私にも腰かけるように促してきた。好意に甘えて、彼女の目の前に腰を下ろす。

「待ってたわ。相談ってなにかしら?」

 元々用意してくれていたのだろう。応接テーブルの上にはティーセットがある。慣れた手つきで二人分のお茶を淹れ、片方のティーカップを私に差し出してくれた。

 カップを手に取って、両手で包み込む。ちょうどいい温もりが手のひらに伝わってきて、ほんの少し緊張がほぐれた。

 いくら母親のように思っていたとしても、恋愛の相談をするのは緊張する。だって、はじめてだもの。

「わざわざ私に――ってことは、サイラスには言いにくいことなんでしょう?」

 自身のカップに口を付けて、アネットさんが私をじっと見つめる。一見すると厳しく感じる視線だけど、彼女が私を心配してくれているのはわかる。私がアネットさんを母親のように思うのと同時に、彼女も私とマリンを娘のように思ってくれている。……うぬぼれではない……はず。
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