年の差十五の旦那様 外伝②~いつか、それが『愛』になる~
「話すなら早いほうがいいと思う。一緒にいるうちに、本当のことを知られるのが怖くなるだろうし」
「ロレイン」
「今の関係を壊したくないとか思って、言えなくなるんだよ。時期は逃すと面倒になる」

 まるで、似たような経験をしたことがあるみたいな口調だ。

 ロレインも、なにかあるんだろうか。

「あたし、好きなんだ。ずっと、ずーっと」

 天井を見上げたロレインが、まっすぐに俺を見る。その瞳に宿った感情は、なんだろうか。

「なのに、あたしじゃダメなんだ。……だから、今のままでいい」
「それって」
「好きなんだ。あんた――の」
「……うん」
「――叔父さんのことが」

 ……だろうと、思った。

 対するロレインは、両手を頬に当てて、きゃっきゃとしている。

「伝える気ないのか?」
「言えるわけないじゃん。……あの人は、ずっと亡くなった奥さんのことを想ってるんだよ」

 まぁ、それはそうだ。

「だから、あたしはたまに会うだけで十分なの」
「だったら、いいけど」

 今の関係に満足しているなら、外野が余計な口出しなんてできない。

「難儀な恋してるんだな」
「あんたこそ」

 玄関で言葉を交わしていると、奥から叔父さんの声が聞こえた。

 その声にロレインは顔をぱぁっと明るくして、廊下の奥へと駆けていく。

「あいつのほうが、よっぽど強い」

 今のままでいいと言い切れるのは、それだけ割り切っているという意味なのか。

 その割に、叔父さんとの距離が近いことについて、なにかを言うつもりはなかった。
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