年の差十五の旦那様 外伝②~いつか、それが『愛』になる~
第18話 救い(2)
「でも、過去は過去です。そりゃあ、忘れることもできないし、変えることもできないけど……」

 私とマリンが捨て子だったのは、変えようのない事実。リスター家の人たちは優しかった。だけど、外ではそうもいかなかった。

 ……外では、嫌な思いをしたことだって、何度かあった。

「けど、いつまでもそれを理由にするわけにもいかなくて」

 うまい言葉が思いつかなくて、しどろもどろになる。

 目の前のアネットさんは少し間をおいて、噴き出していた。

 突然の笑い声に驚いて顔をあげると、彼女は目尻を指で拭っていた。

「それもそうねぇ。サイラスもそれくらいわかっているんでしょうね」

 肩をすくめ、アネットさんは立ち上がった。近くの戸棚を開けて、なにかを取り出す。

「そもそも、今さら親切にされても困ってしまうわ。あれくらいの態度でちょうどいいの」

 戻ってきた彼女の手には、缶があった。ラベルからして、お菓子かなにか……だと思う。

 中から真っ赤な玉を取り出して、彼女は私の唇にそれを押し付けた。

「はい、あーん」

 言われるまま口を開くと、口の中に押し込まれた。

 口の中いっぱいに広がるのは、たぶんいちごの味。程よい甘さが心を落ち着けていく。
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