早河シリーズ最終幕【人形劇】
子ども達はここにいる人間を全員、“お巡りさん”と呼ぶだろう。阿部の息子も阿部の仕事は“お巡りさん”だと思っている。
お巡りさんは正義の職業だと彼は息子に教えていた。そのお巡りさんが本当は人殺しだとしたら、きっと子ども達は何も信じられなくなってしまう。
国家の大義名分を掲げて人殺しをしたいがために刑事になった人間を、阿部は知っている。その男と彼ら四人の姿が重なって見えた。
『お前達に命令を下している人間は笹本警視総監だろう?』
阿部は長い脚を一歩前に出した。堂々とした阿部の佇まいにたじろいだ四人は後ろに下がる。
『何が起きても笹本が守ってくれるとでも思っているのか? お前達も笹本も結局は貴嶋の捨て駒に過ぎない』
『知った口を叩くな。ここであんたが大人しく引き下がってくれたらそれでいい。俺達も無駄な殺生はしたくないんでね』
男は腰に下げていた特殊警棒を取り出して弄ぶ。警棒は使い方によっては命を奪う危険のある武器だ。
これが警察官の誇りも志《こころざし》も捨て去った哀れな刑事の成れの果てかと思うと虫酸が走る。
『仲間を殺しているくせに何が無駄な殺生だ』
言葉を吐き捨てた阿部は栗山と塩屋に目配せして四人の男に攻撃を仕掛ける。乱闘による過剰な動きは腹部の傷に響くがやむを得ない。
阿部は振り下ろされる警棒を避けて男の背後に回り込み、隙をついて警棒を奪った。彼は急所を狙って一撃で相手の動きを封じる。
栗山と塩屋も男を取り押さえ、栗山が呼んだ公安部の刑事によって四人に手錠がかけられた。
『林田刑事を殺害した容疑でこいつらの身柄は警察庁に引き渡す』
『栗山さん、それは……』
『林田の殺害は警視庁上層部が関わっている。警察組織の規律を正す目的も含めてこの案件は警察庁への引き渡しが妥当だ』
栗山の決定に公安部の部下達は異を唱えようとしたが口を閉じて渋々引き下がる。
『後で係長にどやされますよ』
『別に慣れてる』
部下の小言にも栗山は涼しい顔だ。
公安部のやりとりの一部始終を見聞きしていた阿部も苦笑いしていた。
お巡りさんは正義の職業だと彼は息子に教えていた。そのお巡りさんが本当は人殺しだとしたら、きっと子ども達は何も信じられなくなってしまう。
国家の大義名分を掲げて人殺しをしたいがために刑事になった人間を、阿部は知っている。その男と彼ら四人の姿が重なって見えた。
『お前達に命令を下している人間は笹本警視総監だろう?』
阿部は長い脚を一歩前に出した。堂々とした阿部の佇まいにたじろいだ四人は後ろに下がる。
『何が起きても笹本が守ってくれるとでも思っているのか? お前達も笹本も結局は貴嶋の捨て駒に過ぎない』
『知った口を叩くな。ここであんたが大人しく引き下がってくれたらそれでいい。俺達も無駄な殺生はしたくないんでね』
男は腰に下げていた特殊警棒を取り出して弄ぶ。警棒は使い方によっては命を奪う危険のある武器だ。
これが警察官の誇りも志《こころざし》も捨て去った哀れな刑事の成れの果てかと思うと虫酸が走る。
『仲間を殺しているくせに何が無駄な殺生だ』
言葉を吐き捨てた阿部は栗山と塩屋に目配せして四人の男に攻撃を仕掛ける。乱闘による過剰な動きは腹部の傷に響くがやむを得ない。
阿部は振り下ろされる警棒を避けて男の背後に回り込み、隙をついて警棒を奪った。彼は急所を狙って一撃で相手の動きを封じる。
栗山と塩屋も男を取り押さえ、栗山が呼んだ公安部の刑事によって四人に手錠がかけられた。
『林田刑事を殺害した容疑でこいつらの身柄は警察庁に引き渡す』
『栗山さん、それは……』
『林田の殺害は警視庁上層部が関わっている。警察組織の規律を正す目的も含めてこの案件は警察庁への引き渡しが妥当だ』
栗山の決定に公安部の部下達は異を唱えようとしたが口を閉じて渋々引き下がる。
『後で係長にどやされますよ』
『別に慣れてる』
部下の小言にも栗山は涼しい顔だ。
公安部のやりとりの一部始終を見聞きしていた阿部も苦笑いしていた。