早河シリーズ最終幕【人形劇】
四人掛けのテーブルに早河となぎさ、向かいに有紗と麻衣子が座り、高山は隣の席に落ち着いた。
大人達の表情の暗さに気付いた有紗は全員の顔をキョロキョロと窺って首を傾げる。
「みんなどうしたの? 早河さんもお父さんも暗い顔して。私ならもう元気だよ?」
『……有紗。今から俺が言うことは本当は有紗は知らなくてもいいことかもしれない。だけど俺は有紗には知っていて欲しいと思ってる。それが有紗のためだから。これが俺の気持ち。まず先にこれだけ言っておくな』
「えっと……うん。わかった。話って何?」
顔を強張らせた有紗が髪の毛の毛先を指で弄ぶ。これは有紗が不安を感じている時に表れる癖だ。
『有紗のカウンセリングを担当した神明先生は本当は臨床心理士でもなければ、神明大輔という名前でもない』
「……神明先生?」
有紗はまばたきを繰り返した。この後の言葉を慎重に選んで早河は話を続ける。
『神明大輔の正体は犯罪組織カオスのキング、貴嶋佑聖。……佐伯洋介が所属していた犯罪組織のトップだ』
佐伯の名に有紗の唇が震えた。隣にいる麻衣子が有紗を抱き寄せて肩をさする。
「あ……の……どういうこと? わけがわからない」
『だよな。わけがわからなくて当たり前だ』
「神明先生は……神明先生じゃなかったの?」
『臨床心理士の神明大輔はこの世に存在しない。貴嶋が作り出した架空の人間だ』
唇と一緒に有紗の肩も震えている。かなり混乱しているようだ。
神明の正体を有紗には言わない選択も考えた。
しかし貴嶋を〈臨床心理士の神明大輔〉と思い込んでいる有紗に、もしも貴嶋が接触を試みれば簡単に命を奪われる危険もある。
これは有紗を守るための苦渋の選択だった。
「でも……神明先生、いい人だよ。優しかったし……あんないい人が犯罪組織のキングって言われても……」
『それは神明大輔という偽りの仮面だ』
「だけど……っ!」
有紗の声が大きくなった。彼女は赤ん坊が駄々をこねるように頭を左右に揺らす。
『有紗。お前の前に神明大輔として現れていた貴嶋はなぎさの兄で俺の先輩刑事の香道さんを俺の目の前で殺している。俺の父親も貴嶋に殺された。受け入れたくなくてもそれが現実だ』
有紗はなぎさを見る。それから早河を見た彼女の目からは涙が溢れていた。
有紗の泣き顔を見るのが辛くて早河は席を立つ。カフェを出る早河をなぎさが追いかけた。
大人達の表情の暗さに気付いた有紗は全員の顔をキョロキョロと窺って首を傾げる。
「みんなどうしたの? 早河さんもお父さんも暗い顔して。私ならもう元気だよ?」
『……有紗。今から俺が言うことは本当は有紗は知らなくてもいいことかもしれない。だけど俺は有紗には知っていて欲しいと思ってる。それが有紗のためだから。これが俺の気持ち。まず先にこれだけ言っておくな』
「えっと……うん。わかった。話って何?」
顔を強張らせた有紗が髪の毛の毛先を指で弄ぶ。これは有紗が不安を感じている時に表れる癖だ。
『有紗のカウンセリングを担当した神明先生は本当は臨床心理士でもなければ、神明大輔という名前でもない』
「……神明先生?」
有紗はまばたきを繰り返した。この後の言葉を慎重に選んで早河は話を続ける。
『神明大輔の正体は犯罪組織カオスのキング、貴嶋佑聖。……佐伯洋介が所属していた犯罪組織のトップだ』
佐伯の名に有紗の唇が震えた。隣にいる麻衣子が有紗を抱き寄せて肩をさする。
「あ……の……どういうこと? わけがわからない」
『だよな。わけがわからなくて当たり前だ』
「神明先生は……神明先生じゃなかったの?」
『臨床心理士の神明大輔はこの世に存在しない。貴嶋が作り出した架空の人間だ』
唇と一緒に有紗の肩も震えている。かなり混乱しているようだ。
神明の正体を有紗には言わない選択も考えた。
しかし貴嶋を〈臨床心理士の神明大輔〉と思い込んでいる有紗に、もしも貴嶋が接触を試みれば簡単に命を奪われる危険もある。
これは有紗を守るための苦渋の選択だった。
「でも……神明先生、いい人だよ。優しかったし……あんないい人が犯罪組織のキングって言われても……」
『それは神明大輔という偽りの仮面だ』
「だけど……っ!」
有紗の声が大きくなった。彼女は赤ん坊が駄々をこねるように頭を左右に揺らす。
『有紗。お前の前に神明大輔として現れていた貴嶋はなぎさの兄で俺の先輩刑事の香道さんを俺の目の前で殺している。俺の父親も貴嶋に殺された。受け入れたくなくてもそれが現実だ』
有紗はなぎさを見る。それから早河を見た彼女の目からは涙が溢れていた。
有紗の泣き顔を見るのが辛くて早河は席を立つ。カフェを出る早河をなぎさが追いかけた。