早河シリーズ短編集【masquerade】
8月22日(Sat)午後9時
独り暮らし先の大田区の自宅に来ていた美月と言い合いになった。喧嘩の原因は美月の浮気。浮気相手は告白してきたサークルの先輩だと言う。
「最近、隼人の気持ちが私に向いていない気がして……不安だった」
『は? 俺のせいかよ』
「……そうだよ」
真っ直ぐに突き刺さる美月の瞳を直視できず隼人は美月から顔を背けた。
『浮気した次は開き直りか。……俺も偉そうに言えたものじゃねぇけど』
「リオって人のことどう思ってるの?」
美月は妙なところで勘が鋭い。彼女は隼人の心の揺らぎに気付いているのだ。
『どうして今、寺沢莉央の名前が出てくるんだよ?』
「私が静岡に行く前と、隼人が刺されて意識を取り戻してからとで、隼人の私への態度が変わってた。私の目を見なくなってた」
『別に……そんなことない』
「今だってそう。どうして私から目をそらすの? いつも堂々としてる隼人らしくないよ」
美月の勘の鋭さと正直さは時として諸刃の刃となる。彼女はいつでも真っ直ぐだ。
その真っ直ぐな瞳を隼人は愛した。彼女の瞳の前で嘘はつけない。
「私がしたことはいけないことだよ。馬鹿なことしたって思ってるし、隼人も、サークルの先輩も傷付けた。だけど……私を不安にさせてるのは隼人のその態度なんだよ。隼人は時々、私以外の誰かを見てる。そんな感じがするの。それってリオって人のこと考えているんじゃないの?」
次第に流れる涙が固く握り締めた美月の手の甲に落ちる。隼人はソファーを離れ、窓際に寄りかかった。
『もし仮に、俺が寺沢莉央のことを考えてるとしても……じゃあ美月はどうなんだよ? 俺が何も気付いていないとでも思ってるのか? お前だって俺といる時に佐藤のこと思い出してるだろ? そんなの見てりゃわかるんだよ』
これ以上言ってはいけないとわかっていても歯止めが効かない。
傷付いた美月の泣き顔。彼女のそんな顔は二度と見たくなかったのに、美月を傷付けている原因は自分にある。
「隼人は私が佐藤さんをまだ好きなことを知ってる。私も知りたいの。隼人は……リオさんが好きなの?」
美月はどこまでも真っ直ぐで、それ故に危うい。彼女は本当に答えが聞きたいのか?
聞いても後悔するだけの答えを……。
『好きだよ。俺は寺沢莉央に惚れてる』
隼人の答えを聞いた美月が泣きながら玄関を飛び出した。玄関の扉が閉まると同時に隼人はその場にうずくまる。
『相変わらずとことん真っ直ぐぶつかる奴だよな……』
明らかに悪いのは自分だ。言うつもりもなかった佐藤のことまで持ち出して美月を傷付けた。
これで美月と別れることになっても仕方ない……いや、美月を手離したくない。
独り暮らし先の大田区の自宅に来ていた美月と言い合いになった。喧嘩の原因は美月の浮気。浮気相手は告白してきたサークルの先輩だと言う。
「最近、隼人の気持ちが私に向いていない気がして……不安だった」
『は? 俺のせいかよ』
「……そうだよ」
真っ直ぐに突き刺さる美月の瞳を直視できず隼人は美月から顔を背けた。
『浮気した次は開き直りか。……俺も偉そうに言えたものじゃねぇけど』
「リオって人のことどう思ってるの?」
美月は妙なところで勘が鋭い。彼女は隼人の心の揺らぎに気付いているのだ。
『どうして今、寺沢莉央の名前が出てくるんだよ?』
「私が静岡に行く前と、隼人が刺されて意識を取り戻してからとで、隼人の私への態度が変わってた。私の目を見なくなってた」
『別に……そんなことない』
「今だってそう。どうして私から目をそらすの? いつも堂々としてる隼人らしくないよ」
美月の勘の鋭さと正直さは時として諸刃の刃となる。彼女はいつでも真っ直ぐだ。
その真っ直ぐな瞳を隼人は愛した。彼女の瞳の前で嘘はつけない。
「私がしたことはいけないことだよ。馬鹿なことしたって思ってるし、隼人も、サークルの先輩も傷付けた。だけど……私を不安にさせてるのは隼人のその態度なんだよ。隼人は時々、私以外の誰かを見てる。そんな感じがするの。それってリオって人のこと考えているんじゃないの?」
次第に流れる涙が固く握り締めた美月の手の甲に落ちる。隼人はソファーを離れ、窓際に寄りかかった。
『もし仮に、俺が寺沢莉央のことを考えてるとしても……じゃあ美月はどうなんだよ? 俺が何も気付いていないとでも思ってるのか? お前だって俺といる時に佐藤のこと思い出してるだろ? そんなの見てりゃわかるんだよ』
これ以上言ってはいけないとわかっていても歯止めが効かない。
傷付いた美月の泣き顔。彼女のそんな顔は二度と見たくなかったのに、美月を傷付けている原因は自分にある。
「隼人は私が佐藤さんをまだ好きなことを知ってる。私も知りたいの。隼人は……リオさんが好きなの?」
美月はどこまでも真っ直ぐで、それ故に危うい。彼女は本当に答えが聞きたいのか?
聞いても後悔するだけの答えを……。
『好きだよ。俺は寺沢莉央に惚れてる』
隼人の答えを聞いた美月が泣きながら玄関を飛び出した。玄関の扉が閉まると同時に隼人はその場にうずくまる。
『相変わらずとことん真っ直ぐぶつかる奴だよな……』
明らかに悪いのは自分だ。言うつもりもなかった佐藤のことまで持ち出して美月を傷付けた。
これで美月と別れることになっても仕方ない……いや、美月を手離したくない。