早河シリーズ短編集【masquerade】
3月21日(Sun)
次第に春めいてきた陽気に呼応した桜が間もなく開花を迎える。淡いピンク色の花をつけた枝が春風に気持ちよさげに揺れていた。
煙草の煙で綺麗な花を汚してしまいそうで、矢野は取り出しかけたシガレットケースをポケットにしまった。運転席の扉にもたれて街路樹の桜を見上げていると急に肩を叩かれた。
横を向いた矢野の頬に彼のものではない人差し指が触れる。すぐ側で小山真紀が微笑んでいた。
「引っ掛かったー」
『何ガキみたいなことしてんだよ』
矢野は苦笑いして、頬に触れた真紀の人差し指を掴んでそのまま彼女の手を握った。
「だって桜見て物思いに耽ってる一輝なんて珍しいもん」
真紀はスーツではなく私服だった。グレーのタイトなパンツスタイルにオフホワイトの薄手のニットを着ている。
真紀が非番の今日は、久々のデートだ。
『たまには俺も考え事するよ? 今日は真紀と何しようかなーとか、真紀どんな服着てくるのかなーとか、脱がせやすい服かなーとか色々』
「なんで脱がせる前提なのよ。変態っ」
口を尖らせて真紀は助手席に乗り込み、矢野は運転席に座る。
『真紀に関しては俺は変態を極めるって決めたの。俺の変態領域は真紀だから』
「変態領域って何?」
『俺の幸せの領域』
「バーカ」
隣で真紀が笑っていた。調子のいい矢野の冗談に彼女はいつも笑って返してくれる。
真紀が笑ってくれるたびに、この人を、この幸せを失いたくないと強く思う。
矢野の車は春の陽気に包まれた東京の郊外へ。郊外の自然公園ではさくら祭りが開催されている。
今日が春分の日の祝日で明日は振替休日、世間は三連休だ。日曜日の今日は道路も駐車場も混んでいた。
自然公園の駐車場はすでに満車が近く、駐車スペースを探すだけでも一苦労だ。
「桜の開花発表まだなのにけっこう人いるね」
『明日には東京も開花するって言ってたし、この天気でしかも三連休だからな』
公園の入り口にはさくら祭りの看板が立て掛けられ、園内の小道には屋台が並んでいる。正式な桜の開花は発表されていないが、見たところ公園の桜は充分に花開いていた。
昼食がまだの二人は屋台でお好み焼きと焼きそば、みたらし団子を購入した。空腹の二人は今は花より団子だ。
芝生の上に真紀が持参したレジャーシートを敷いて並んで座った。
「なんだかピクニックみたい」
『こういうデートものんびりしていいな』
「本当に最近は平和でのんびりしてるよね。この前までカオスと戦っていたのが嘘みたい」
犯罪組織カオスを壊滅に追い込むために奔走していた日々から3ヶ月が経つ。あの時の矢野は重症を負って一時は意識不明だった。
『真紀、話があるんだけど』
お好み焼きを半分食べたところで彼は箸を置いた。真紀はみたらし団子の串に手を伸ばしている。
次第に春めいてきた陽気に呼応した桜が間もなく開花を迎える。淡いピンク色の花をつけた枝が春風に気持ちよさげに揺れていた。
煙草の煙で綺麗な花を汚してしまいそうで、矢野は取り出しかけたシガレットケースをポケットにしまった。運転席の扉にもたれて街路樹の桜を見上げていると急に肩を叩かれた。
横を向いた矢野の頬に彼のものではない人差し指が触れる。すぐ側で小山真紀が微笑んでいた。
「引っ掛かったー」
『何ガキみたいなことしてんだよ』
矢野は苦笑いして、頬に触れた真紀の人差し指を掴んでそのまま彼女の手を握った。
「だって桜見て物思いに耽ってる一輝なんて珍しいもん」
真紀はスーツではなく私服だった。グレーのタイトなパンツスタイルにオフホワイトの薄手のニットを着ている。
真紀が非番の今日は、久々のデートだ。
『たまには俺も考え事するよ? 今日は真紀と何しようかなーとか、真紀どんな服着てくるのかなーとか、脱がせやすい服かなーとか色々』
「なんで脱がせる前提なのよ。変態っ」
口を尖らせて真紀は助手席に乗り込み、矢野は運転席に座る。
『真紀に関しては俺は変態を極めるって決めたの。俺の変態領域は真紀だから』
「変態領域って何?」
『俺の幸せの領域』
「バーカ」
隣で真紀が笑っていた。調子のいい矢野の冗談に彼女はいつも笑って返してくれる。
真紀が笑ってくれるたびに、この人を、この幸せを失いたくないと強く思う。
矢野の車は春の陽気に包まれた東京の郊外へ。郊外の自然公園ではさくら祭りが開催されている。
今日が春分の日の祝日で明日は振替休日、世間は三連休だ。日曜日の今日は道路も駐車場も混んでいた。
自然公園の駐車場はすでに満車が近く、駐車スペースを探すだけでも一苦労だ。
「桜の開花発表まだなのにけっこう人いるね」
『明日には東京も開花するって言ってたし、この天気でしかも三連休だからな』
公園の入り口にはさくら祭りの看板が立て掛けられ、園内の小道には屋台が並んでいる。正式な桜の開花は発表されていないが、見たところ公園の桜は充分に花開いていた。
昼食がまだの二人は屋台でお好み焼きと焼きそば、みたらし団子を購入した。空腹の二人は今は花より団子だ。
芝生の上に真紀が持参したレジャーシートを敷いて並んで座った。
「なんだかピクニックみたい」
『こういうデートものんびりしていいな』
「本当に最近は平和でのんびりしてるよね。この前までカオスと戦っていたのが嘘みたい」
犯罪組織カオスを壊滅に追い込むために奔走していた日々から3ヶ月が経つ。あの時の矢野は重症を負って一時は意識不明だった。
『真紀、話があるんだけど』
お好み焼きを半分食べたところで彼は箸を置いた。真紀はみたらし団子の串に手を伸ばしている。