早河シリーズ完結編【魔術師】
 新世代カオスは皆が目的がバラバラで一致団結していないところが弱点でしたね。昔のカオスは一致団結☆してたじゃないですか。アレでも。

作者としても愛着あるのはやっぱり本編シリーズに登場する旧世代のカオスの皆様ですね。殺し屋ケルベロスも変装の名人ファントムも莉央の保護者のスコーピオンも皆さん個性が強くて好きです。
シークレットゲストとしてスパイダーさんも登場してます。

 貴嶋が脱獄してまで会いたかった存在は美月であり早河であり、貴嶋には早河、美月、佐藤、山内《スパイダー》がいたから彼は孤独の王にはなりませんでした。
貴嶋と千秋の決定的な違いはここですね。

最終幕で莉央が命を懸けた意味もようやく身を結びます。貴嶋はキングだけれど、キングとしてじゃない、貴嶋佑聖という人間として扱ってくれる人達が周りにいました。

 莉央が死んでしまっている完結編で、貴嶋の内面に近付けるのは早河と美月だけ。

 【最終幕 人形劇】でもそうでしたが、早河サイドと同時進行して貴嶋サイドの物語を進める時は、キーパーソンの美月がいい役割をするんですよ。

【人形劇】も【魔術師】も、貴嶋に捕らわれた美月の視点(悪側を外側から見る)がなくて完全な早河の視点(正義側)だけだと、貴嶋とカオス側が何をして、何を考えているのか描けませんからね。

 美月の立ち位置がヒロインではなく“キーパーソン”に当てはまるのはそういうことです。それも主人公側ではなく、主人公と敵対する側と深く関わるキーパーソン。

美月は貴嶋サイドの物語を読者側にネタバレせず描写するために欠かせないキャラクターでした。
この「主人公と敵対する側と深く関わるキーパーソン」は、貴嶋には美月を、莉央には隼人と、それぞれペアリングさせています。

 あとは意外と早河シリーズ本編で貴嶋が銃を撃つ場面がないんですよねぇ。
理由は雑魚の始末は部下が殺るから貴嶋が手を下す人間は限られるっていう。

彼が銃を持つ場面があるのは、シリーズ最初の影法師と最後の人形劇、この完結編くらいですね。
キングは獲物を一発で仕留めますよ……。無駄に綺麗な顔で『そろそろ逝こうか』って相手に言いながら残酷に……頭を……(顔が最高に良い)

 貴嶋の死刑が執行された時は早河も美月も泣くかもしれません。そこまでの未来は描かないけど私も泣くかも……。
貴嶋は愛されるダークヒーローだったと思います。長い間、お疲れ様でした。

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