早河シリーズ完結編【魔術師】
▼キングの救済

 今回はキングを辞めたい男とキングになりたい女が登場します。

最後の物語では〈犯罪組織カオスのキング〉とは何か……を考えました。
早河シリーズに馴染みのある方は普通にキング=貴嶋になりますし、彼がキングを名乗ることが自然になっていると思います。

 【最終幕 人形劇】で本当のマリオネットは貴嶋自身だったことが明かされます。父親の先代キングの思い描くレールに知らず知らずに乗せられていたわけです。

タイトルの〈魔術師〉とは貴嶋のことでもありますが、本当の魔術師は貴嶋に逃れられない呪いをかけた父親の辰巳です。
キングとは世襲でもあり、父親からの逃れられない呪いでもあり、重荷でもある。貴嶋は生まれながらにキングになることを定められていました。

 一方、男尊女卑の家庭で育った千秋はキングになりたかった女。彼女にとってのキングとは権力の象徴なんでしょうね。
生まれながらにキングの宿命を背負う貴嶋と唯一無二のキングの称号にこだわる千秋。

第四章の病院と第五章の車の中で二度描写がある〈タマゴロールと缶コーヒー〉のくだりや宝塚の話題、隼人の付き添いで病院にいる美月の警護をしていたのは千秋なのでその辺りでダンタリオンの正体に気付く人は気付くかなー?って思っています。

第四章の病院での千秋と芳賀の会話にまさかの核心が含まれていました。

 作中に明記していますが、土屋千秋は【最終幕 人形劇】に登場しています。
登場ページは第一章と第六章のなぎさが珈琲専門店Edenを訪れる場面です。
このページでは千秋は大学1年生で名無しの登場キャラでした。

最終幕で千秋の名前の記載をしなかったのは、あのページはなぎさの視点なのでカフェの店員の名前なんて相当親しくしていないと覚えていないよなぁと。

 事件として見ると、未成年者集団自殺(第一章)→子ども達の誘拐(第二章)→映画館飛び降り自殺(第三章)→隼人の殺人未遂と殺人未遂の容疑で佐藤を手配(第三章&第四章)→美月拉致(第四章)→美月とキングの殺人未遂(第六章)と、複数の人間達がそれぞれに犯罪を実行しているために、事件の様相も変化していきます。

この内、貴嶋の直接的な命令があったのはなんと美月の拉致だけで他は新世代のカオスのメンバーが計画していたことでした。

 本編シリーズからの読者さまほど貴嶋への先入観があると思います。どうせ今回も貴嶋が悪いことやらせているんでしょ~と早河や美月以外のキャラクター達も思っていたんですよ。

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