コンネリシャス王国の  恋物語
一緒に来ていた母は、チリルの提案に面白そうと言ってバンアロア国の王都を少し歩いて女性がどんな服を着ているのか何が流行しているのか知る必要があると言った。

母は二日程泊っていく事になった。

チリルの意思も確認し母と入れ違いにルーシーが来てくれることになったので、ルルとジュオン王子一行はその日にコンネリシェス王国に夕方の船で帰った。

またお城に招待されでもしたら面倒なので、みんな平服で身分も隠して入国している。

母のテイアムだけは、きちんと旅券証も本名で持って来ている。

母が残るのでセレスは護衛として一緒に残って母と共に帰って来ることになった。

長い間ルルとチリルを守ってくれたセレスにルルは心からのお礼を言った。

バンアロア伝染病(と今では言われている。)の時もお城に連れていかれた時もセレスがいてくれてどれだけ心強かったかわからない。
そう言うとセレスは嬉しそうに微笑んで、親友のフェイレアの大切な妹を守れてうれしいよと言ってルルの頭をなでてくれた。

それを見てジュオン王子がイラっとしたのに同行した騎士たちは気付いたが当の二人は全く気付いていなかった。

セレスは役目を終えてコンネリシェス王国に帰るが、今度は近衛騎士として王子妃のルルの護衛ができればと思っている。
だが、この思いは誰にも言えない。

親友のフェイレアにも打ち明けることはないだろう。

ルルとチリルと三人でバンアロア国に来てルルの人柄に触れるようになっていくとルルに惹かれていくのを止めることができなかった。

いつも廻りの人の事を第一に考える優しいルル、ここにきて弱音を一切吐かなかったルル寂しいときもあっただろうにいつも笑顔を絶やさなかったルル、お料理が得意でいつも美味しい食事を作ってくれた。

そして俺とチリルが美味しい美味しいと言って食べるのを嬉しそうに笑ってみていたルル、自分の作る料理やスイーツで幸せになってもらえるのがすごく嬉しいと言ってほほ笑むルル、きらきら光るシルバーブロンドの髪をいつも無造作に一つに縛って、大きなグリーンの瞳をキラキラさせている美しいルル。

時々裏庭のベンチに座り満天の星を見上げて静かに涙を流しているときもあった。

ジュオンとそっと呟いて涙をぬぐっている華奢な肩を、抱きしめたい衝動と戦っていた俺の気持ちは知らないだろうが、黙ってその横にすわり大丈夫かと問う俺に、大丈夫よと言ってほほ笑んでくれるルルの泣き笑いの顏が忘れられない。
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