続お菓子の国の王子様〜結婚に向けて〜       花村三姉妹  美愛と雅の物語
次はいよいよ婚約発表だ。美愛ちゃん……、大丈夫だろうか?

 
「次に、私事ですが、昨年の晩秋に彼女と正式に婚約し、私たちは来月、挙式と入籍をする予定です」

 
ステージに響いたその言葉に、会場が一瞬静まりかえった。そして次の瞬間凍りついた空気を打ち破るように、フラッシュの嵐が再来し、キンキンとした悲鳴と歓声がこだまする。

 
客席からひときわ熱い視線を感じながら、美愛ちゃんに目を向けた。


……、やはり、固まっている。


本来ならこのあとステージへと歩いてくるはずだった彼女は、その場から動けずにいた。

 
大和に視線を移すと、あいつは俺が何をするつもりかをすぐに察したらしい。俺がステージを降りる直前、手に持っていたマイクを大和に手渡すと、あいつは無言でそれを受け取り、次の流れを引き継いでくれた。俺はそっと美愛ちゃんのもとへ歩き出す。

 
煌びやかなドレスやタキシードが揺れる中、会場中の視線がこちらに集まる。


だが、俺の目に映るのは、たった一人。


この愛おしい女性だけ。

 
右手を差し伸べ、彼女に来るよう促す。


その瞬間緊張のあまり、つまずいた彼女が俺の胸元に飛び込んできた。

 
カメラのフラッシュが一斉にたかれ、再び歓声と悲鳴があがる。


彼女は、俺の腕の中で小さく震えていた。


俺はそっと耳元で囁く。

 
「やっと俺の元に来てくれたね、可愛いお姫様。大丈夫だよ、そばにいるから」

 
そして自然に、頭頂部にキスを落とした。これは俺のクセみたいなもの。だけど、今日は特別だ。

 
みんなに、はっきりと見せつけよう。この子が、俺が誰よりも愛し、守り抜くと誓った女性だと。この愛を、世界中に知らしめてやろう。

 
再びステージに戻り、美愛ちゃんをみんなに紹介する。


マスコミから婚約指輪の写真のリクエストが入り、彼女に左手を見せるよう伝えると、少し戸惑いながらも、彼女はぎこちなく微笑んで応えてくれた。


その指には、確かに俺との絆がきらめいている。

 
もう十分だろう。美愛ちゃんも、俺も、今日という日を精いっぱい見せた。

 
大和も同じ気持ちだったようで、司会者に目配せして締めの合図を送る。

 



やがて、会場に心地よいジャズの旋律が流れはじめ、レセプションが本格的にスタートした。

 
招待客たちは、Bon Bonのカフェメニューに舌鼓を打ち、会話に花を咲かせている。


俺と美愛ちゃんも、腕を組んだまま各テーブルをまわり、丁寧に挨拶を交わしていった。

 
「おめでとうございます」
「お似合いです!」


温かい祝福の言葉が、次々に俺たちのもとに届く。


笑顔で応えながら、美愛ちゃんの手の震えが少しずつおさまっていくのを感じた。

 



とくに人気だったのは、看板スイーツ3種

『母さんのバナナブラウニー』、
『ミャーのレモンチーズケーキ』、
『父さまのりんごシュトゥルーデル』。

 
そして、オリジナルドリンク『ボンボンのショコラショー、この甘くて優しいココアは、今日という日を象徴するかのような、あたたかさを持っていた。

 
やっとここまで来た。
彼女と一緒に、笑って歩ける場所に。
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