続お菓子の国の王子様〜結婚に向けて〜       花村三姉妹  美愛と雅の物語
6:2月14日

美愛サイド

ゆっくりと重たいまぶたを開けると、レースのカーテン越しに朝の光が差し込んでいた。澄んだ青空が広がり、今日もいいお天気になりそう。

 
体には、少しだけ心地よい疲れが残っている。昨夜、雅さんと大切な時間を過ごしたからだ。

 
初めて体を重ねてから、私たちはよく愛し合っているけれど、他のカップルって、週に何回くらいしているんだろう? ……、なんて、さすがにようちゃんにも聞けないよね。

 
雅さんは、いつだって優しく私を求めてくれる。平日はお仕事が忙しくてそんなに多くはないけれど、週末やお休みの前の日には、私のことをとことん甘やかしてくれる。

 
もちろん、無理にされたことなんて一度もない。私の体調が良くない日や、生理のときはそっと気づかってくれて、代わりに温かいハーブティーを淹れてくれたり、お腹をさすってくれたり……。

 
あとで知ったんだけど、母さま(産婦人科医)に『何か自分にできることはないか』と尋ねてくれていたらしい。……、そんなところも、本当に雅さんらしい。





だんだん頭がはっきりしてきて、枕元のスマホを手に取って時間を確認する。

 
「9時30分……っ!?」

 
えっ……、うそ!?
もう、こんな時間!?


今日はバレンタインデー。そして、カフェBon Bonのオープン日で──私の誕生日!

 
本当は、朝一番に起きて、雅さんのために朝ごはんを用意しようと思っていたのに……、寝過ごしちゃった……!

 
雅さんは、オープン前の準備で朝早くカフェに行くって言ってたから、それまでに何かしてあげたかったのに。


……、それに、本当はカフェBon Bonのお手伝いもしたかった。でも雅さんからは、なぜかいいお返事がもらえなかった。


「今日は美愛ちゃんの誕生日なんだから、ゆっくりしてて」

「Bon Bonの本社スタッフも手伝ってくれるし、大丈夫だよ」


──って、優しく言ってくれたけれど、なんだか少しだけ…、寂しい。

 
せっかく一緒に頑張りたかったのに、私じゃ力不足って思われたのかな……?

 
あぁ、ダメだ。また悪い方向に考えちゃってる……。
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