続お菓子の国の王子様〜結婚に向けて〜       花村三姉妹  美愛と雅の物語
そんなわけで、今日は日中、実家に帰って家族と一緒にお昼ごはんを食べる予定。


……、ふと気づいた。

 
これが、『花村美愛』として過ごす最後の誕生日なんだ。そう思った瞬間、胸の奥にじんわりとした感情が広がった。


少しだけ感傷に浸りながら、シャワーを浴びようとベッドから起き上がると……。

 
えっ……!

 
驚いたことに、私、何も着ていなかった……!そ、そういえば昨夜……、雅さんが寝かしつけてくれたとき、そのままだったんだ……。

 
誰かに見られるわけじゃないけれど、やっぱりちょっと恥ずかしい。急いで床に落ちていたパジャマを拾い、もぞもぞと着直してから浴室へ向かった。





シャワーを浴びて気分もすっきりしたあと、キッチンへ行くと、ダイニングテーブルの上に、小さな花束とメモが置かれていた。

 
それは、薄紫のバラのブーケ。そして雅さんからの、手書きのメッセージ。

 
『美愛ちゃん、お誕生日おめでとう。
今夜はホテル・クー(Hotel 9)に宿泊するからね。
あとで一緒にお祝いしよう。
愛してるよ──雅』

 
もう……雅さんったら。
朝からこんなサプライズ……。


忙しいはずなのに、ちゃんと私のために時間を作ってくれて……。胸がいっぱいになって、涙がこぼれそうになる。

 
……、でも、どうしてこのバラのこと、知ってるんだろう?





この薄紫のバラは「My Little Angel」と呼ばれていて、私が生まれた年に父さまが、おじいちゃまの庭に植えてくれたもの。私にとって、とても特別なお花だ。

 
ちなみに、圭衣ちゃんはオレンジと黄色の「Firecracker」、
ようちゃんは、明るい黄色の「Sunshine」。


花村家では、私たち3姉妹それぞれに、想いのこもったバラがある。


ようちゃんが正式に花村家に養女として迎えられた年にも、ちゃんと記念に植えられたんだ。

 
私はそのブーケを、そっと花瓶に入れてリビングに飾った。


それから身支度を整えて、ミッドタウン駅へと向かう。
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