続お菓子の国の王子様〜結婚に向けて〜       花村三姉妹  美愛と雅の物語

雅サイド

昨日、美愛ちゃんは実家へ戻り、結婚前の夜を家族と過ごした。

 
……、ちゃんと眠れたかな?

 
俺のほうはというと久しぶりに、あまりよく眠れなかった。もしかすると、美愛ちゃんを抱きしめて眠るのが、いつの間にか“日常”になっていたからかもしれない。

 
隣にいないベッドの右側を見ると、プードルのBon Bonがちょこんと座っている。

 
……、なんだか、あいつも少し寂しそうに見える。

 
ふと、あることを思いついて、圭衣ちゃんと葉子ちゃんにメッセージを送ってみた。


2人ともすぐに賛成してくれたので、その勢いのまま仁にも連絡を入れる。

 



キッチンでコーヒーを淹れながら、窓の外に広がる青空をぼんやりと眺める。そのとき、昨夜の出来事がふと蘇ってきた。

 
独身最後の夜。


このマンションにあるバーVIPで、仲間たちと昔話に花を咲かせながら過ごした夜。

 
京兄、悠士兄、大和、仁、涼介、そして彰人。この6人がいてくれたからこそ、今の自分がいると実感する。

 
思い出が、走馬灯のように頭の中を駆け巡った。

 
幼い頃から、家族にはたくさんの愛情を注がれてきた。けれど、いつしか“西園寺”という名前が、重く肩にのしかかるようになった。

 

周囲に寄ってくる人たち、時には、無邪気な子どもでさえも、この名前を目当てに近づいてくる。

 
そんな中、初めて付き合った彼女に好きなものを否定され、


「あなたが西園寺だから近づいた」


そう言われた瞬間、何かが崩れた。

 
自分という存在に、まったく自信が持てなかった。将来に対する不安ばかりが膨らんでいった。それでも、学校では常にトップの成績をキープし続けた。

 
夢も希望もなかった、あの頃。


それでも俺を支えてくれたのは、家族と、この6人の仲間たちだった。
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