続お菓子の国の王子様〜結婚に向けて〜       花村三姉妹  美愛と雅の物語
そんなとき、彼女と出会った。まだ小さかった美愛ちゃん。その無垢な心に、俺は救われた。

 
彼女の何気ない言葉を聞いて、『男だって甘いものが好きでいいんだ』と、また素直に思えるようになった。

 
“いつか、自分もお菓子を扱う仕事がしたい。誰かを笑顔にするお菓子を作りたい。そして、そんなお菓子を提供するカフェを経営したい”

 
そう心の底から願うようになったのは、あの出会いがあったからだった。

 
周囲の後押しもあって、俺は夢に向かって走り続けた。

 



……、とはいえ、その後、恋愛とはしばらく縁がなかった。いや、正確には“恋”とは無縁だったというべきか。


それなりに楽しんだとは思うけれど、どれも後腐れのない関係ばかりで、ほとんどが年上の女性だった。

 
ただ、美愛ちゃんとのあの一日の出来事だけは、何度も思い返していた。

 
『あの子は、今もお菓子屋さんになりたいと思っているだろうか?』
『俺との約束を、覚えているだろうか?』
『どうか、あの子の心がピュアなままでありますように──』

 
彼女を思い出すたびに、無意識のうちに、彼女と同じくらいの年齢の子を目で追ってしまうことがあった。

 
……、あの頃は、本気で悩んだ。


『もしかして俺、年下の子に異常に執着してるんじゃないか?』って。

 
けれど、周囲からはあっさりと言われた。


『それって、その子だけでしょ。他の子には全然興味なさそうだったし』

 
確かに、そうだった。俺が見ていたのは、“彼女”だけだったのだ。

 
今でもはっきり覚えている。弁護士を目指していた頃の涼介が、真剣な顔で忠告してくれた。

 
『お前が“あのお姫様”を探してるのは知ってる。それは否定しない。でもな、たとえその子に出会えたとしても、絶対に未成年とは体の関係を持つな。それをしたら、お前だけじゃない。家族も、すべてを失うことになる』

 
あの忠告が頭に残っていたおかげで、変な方向には進まずに済んだのかもしれない。

 



昨夜の集まりが、お開きになる前。改めて、仲間たちに感謝の気持ちを伝えた。


正直、誰もが思っていたはずだ。まさか俺と“あの時の女の子”が、もう一度出会い、こうして結婚までたどり着くなんて。

 
けれど今、仲間たちはみんな、まるで自分のことのように喜んでくれている。

 
心から、感謝しかない。

 
さて……、コーヒーを飲んだら、シャワーを浴びて、支度に取りかかるとしよう。

 
今日は俺の人生で、一番大切な日だ。
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