【完結】年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「いやぁ、ようやく領主様にも春が来たってか」
「こんな可愛らしい婚約者に愛されて、領主様は幸せだねぇ」

 何処からかそんな声が聞こえてくる。それに対して、ギルバート様は顔を真っ赤にされていた。……こういうところ、好き。っていうか、この場合顔を赤くするのは私なのでは?

(でも、自分よりも慌てている人を見ると人間って冷静になっちゃうのよね……)

 そう思いながら、私は領民からの祝福を受けたりからかいを受けたりされるギルバート様を見つめていた。……なんだろうか。ギルバート様って、やっぱり慕われているのね。

「シェリル様、どうか領主様のことをよろしくお願いいたしますね……!」

 対する私は、気がついたらご老人から拝まれてしまっていた。挙句の果てにはギルバート様の幼少期のお話を聞かされる始末。……面白かったから、別にいいのだけれど。

(それに、ギルバート様の幼少期のお話を知れるのは嬉しいわ……)

 素直にそう思いながら、私はご老人たちのお話に耳を傾ける。

 ご老人たち曰く、幼少期のギルバート様はよくここら辺の田舎町に顔を出されていたらしい。だからこそ、ご老人たちからすればずっと成長を見守ってきていた子供という印象が強いみたいだった。

「いやぁ、挙式が終わった際にはぜひともこちらにいらっしゃってくださいな」
「は、はい」
「生きているうちに領主様が幸せになるのを見れるなんて、幸せだわぁ……」

 ギルバート様、本当に愛されているのね。私はそれを実感していた。

(受け入れられて、よかった)

 それとほぼ同時に、すっと心配が消えていく。結局、私はギルバート様の婚約者として領民の人たちに受け入れられるかが不安だったのだ。……特に、こういう田舎町で。

 そんなことを考えながら、私は丁寧な言葉でからかいを受けるギルバート様のお姿を眺めていた。……このお方と、ずっと一緒にいる。それが、今の私の夢なのだ。

 そして、そのためには――。

(エヴェラルド様のこと、何とかしなくちゃね)

 そう、思うのだ。
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