【完結】年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「……こちら、お手紙です」

 そして、彼女はそんなことを言って私に一つのお手紙を差し出してくれた。……差出人の名前は、エリカ。多分、置き手紙とかそういうことなのだろう。

 封はされていない手紙を開けて、私は折りたたまれた便箋を開く。便箋にはお世話になったことへの感謝の言葉。それから、もう迷惑はかけたくないから、出て行くと書いてあった。最後に綴られた一文は……私の、お義姉様の幸せを願っているというもの。その文字は、微かに震えている。

(……エリカっ!)

 その手紙を握りしめながら、私はうつむいてしまう。……エリカは、多分エヴェラルド様に直談判しに行くつもりなのだ。最近のあの子の性格上、そういうことをしてもおかしくはない。

 そんなことを思いつつ、私が踵を返して玄関に向かおうとすれば、途中でギルバート様と鉢合わせる。彼は「……シェリル?」と怪訝そうな表情で私の名前を呼んでくださった。だからこそ、私はそっと視線を逸らす。

「……何か、あったのか?」

 そう問いかけられて、私は返答に困ってしまう。でも、どうせいずれはバレてしまうのだ。それに、先ほどクレアに報告してくれるように私は頼んでいる。遅かれ早かれ、バレてしまう。

「その……エリカが、いなくなりまして」
「……エリカ嬢が?」
「はい。置き手紙だけ残して、出て行ってしまったようです」

 目を伏せてそう告げれば、ギルバート様は「……捜すのか?」と問いかけてこられた。そのため、私は少しためらったのち頷く。

「多分、あの子は捜さないでほしいと、思っていると思います。……でも」
「でも?」
「私、あの子にこれ以上傷ついてほしくないのです」

 エリカはずっと幼少期から無茶ばっかりして、無理ばっかりして。重圧に押しつぶされそうな中、生きてきた。

 私はそれに気が付きつつも、自分の身を守るのに必死であの子を助けることが出来なかった。……私、なんだかんだ言ってもあの子の姉なのに。
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