【完結】年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「……少し近づいて、様子を窺いましょうか」

 そんな私のためらいを感じ取ってか、ロザリア様がにっこりと笑ってそう提案してくれた。だから、私はこくんと首を縦に振って物陰に隠れつつエヴェラルド様の方に向かう。

「……来て、くれたんだね」

 少し近づくと、エヴェラルド様のうっとりとしたような声が聞こえてきた。その声に含まれている感情は恋慕や好意などがほとんどのように聞き取れる。……やっぱり、お話の相手はエリカなのだろう。

「いつ見ても、エリカはきれいだね。……まるで、天使のような愛らしさだ。髪の毛を切っても、素晴らしいよ」

 エヴェラルド様のそのお言葉には、仄かな狂気が宿っているようにも感じられた。

 それに対して、エヴェラルド様が話しかける人物は「ふざけないで」と力強く言う。その声は、やはりというべきかエリカのものだった。

「エヴェラルド様。私、貴方のこと気持ち悪いと思っているわ」

 つんと澄ましたような声だった。エリカは、明らかに怒っていた。

「だからね、私、貴方のことをこっぴどく振りに来たのよ。……あんな狂気的なラブレターをどうも、ありがとうございましたってね」

 力強い言葉。でも、何処となく震えているのが言葉の節々から伝わってくる。その言葉に私の胸がきゅうっと締め付けられてしまう。……助けに行きたい。そう思うけれど、今乱入するのは逆効果だとわかっていた。

 そのため、私はすぐに助けに行ける距離でそっと二人の様子を窺うことしか、出来なかった。
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