【完結】年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
 多分、彼女は今笑っている。……それがわかるからこそ、出て行かなくてよかったと思う。……あの場で出て行ったら、エリカは自分の気持ちを伝えることは出来なかっただろうから。

「……エリカ様」

 マリンがそんな風に声を零した。それとほぼ同時に、エリカの視線がこちらに注がれる。……そして、私とばっちりと目が合ってしまった。

「……お義姉様」

 見つかった。そう思って逃げようかと思ったけれど、逃げることもできずに私はそっと視線を逸らす。

「どうして、ここにいらっしゃるの……?」

 エリカがゆっくりとこちらに近づいてきて、そう問いかけてくる。なので、私は視線を逸らしながら「……貴女のことを、捜していたの」ということしか出来なくて。

「貴女が、何か一人で突っ走ろうとしているんじゃないかって思って、気が気じゃなくて……」

 目を瞑って白状するようにそう言えば、エリカは「……お義姉様」と私のことを呼ぶ。その声は、何となく呆れたような声だった。

「あのね、お義姉様」
「……エリカ」
「私、お義姉様に勇気をもらったわ」

 凛としたような声で、エリカがそう告げてくる。それに驚いて目を見開けば、彼女は「お義姉様が、あの時エヴェラルド様にはっきりとおっしゃってくれたから。……私、彼と向き合う決意が出来た」と続ける。

「お義姉様。……私、お義姉様のこと……その」
「……うん」
「お義姉様のこと……大好き、なの。私が言うことが許されることなのかはわからない。……でも、大好きよ、それだけ、伝えたい」

 にっこりと笑って、エリカが私にそう告げてくれる。なので、私は彼女に近づいて――その華奢な身体を、抱きしめていた。

「エリカ」
「……うん」
「私も、貴女のことを大切に、思っているわ」

 たったそれだけ。しっかりと伝えたくて、私はそう告げる。

 そうすれば……エリカは「……ありがとう」と静かな声で言ってくれた。
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