【完結】年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「……私も、エリカに何かをあげられたらいいのだけれど」

 次に私がそう言って眉を下げれば、エリカは「もう必要ないわよ」と言いながらやれやれと言った表情を浮かべる。

「お義姉様にはたくさんもらったわ。……それに、ワンピースもたくさんもらったもの」
「……そう」

 そう言って私がしゅんとしてしまえば、エリカは「本当に、お義姉様は世話好きね」と言いながら肩をすくめていた。

「お義姉様のことだし、きっと立派な母親になるわ」
「……エリカ?」

 正直なところ、エリカのその言葉には戸惑ってしまう。いきなり母親になるなんて言われても……困るというか、照れるというか。

「いずれ、甥か姪に会わせてね。……きっと、お義姉様にそっくりな可愛らしい子だから」
「……エリカったら」

 もうなんと返せばいいかがわからなくて、照れ隠しのようにそう告げる。

 不意にギルバート様の横顔を見上げれば、彼は顔を真っ赤にされていた。……私よりも、照れていないかしら?

「じゃあ、行くわね」

 エリカがそう言って馬車に乗り込もうとする。

 そんな彼女の様子を見つつ、私は彼女に渡さなければならないものを思い出す。……ギルバート様が渡してくださるというから、任せていたのに。彼は一向に渡す素振りを見せてくださらない。

「……ギルバート様」

 彼にそっと耳打ちをすれば、ギルバート様はハッとして「エリカ嬢」とエリカの名前を呼ばれた。
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