【完結】年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「お嬢さん。……もうすぐ、リスター伯爵領につくよ」

 それからまたしばらくして、御者がそう声をかけてくれた。窓の外を眺めれば、そこはとても自然が豊かで、王都とはまた違った雰囲気の街が広がっていて。……ここからだったら、歩けるかな。そう思ったけれど、リスター伯爵家のお屋敷がある場所を私は知らない。……だから、どうすることも出来なかった。

「……あの、リスター伯爵家のお屋敷まで、行けますか……?」

 恐る恐る御者にそう告げれば、「追加料金をくれればね」と彼は言う。そのため、私は残っていた持ち金を全部渡して、リスター伯爵家のお屋敷まで連れて行ってもらうことにした。あれで足りていたのか、足りていなかったのかは、分からない。それでも、もう私にお金は必要ないのだ。……お義姉様に拒否されたら、死ぬだけだもの。

「……お義姉様、お願い、助けて――!」

 自分勝手なお願い。

 分かっている。分かっていても――あのお優しいお義姉様のことが、忘れられなかった。
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