【完結】年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「だから、自分を卑下するな」

 そのお言葉は、命令系だったけれど、声音はとても優しくて。それに驚いて私が目を見開けば、ギルバート様は「……俺が、褒める、から」と消え入るような声で私に言ってくださった。

「シェリルの境遇からすれば、自分に自信を持てという方が無理だろう。……だから、俺がシェリルに自信をつけさせて、やりたいんだ」
「……ギルバート様」
「ただ、その、だな……」

 ギルバート様のことを上目遣いで見つめていれば、ギルバート様は「あー」と声を漏らされた後、「あんまり、積極的にはなってくれるな」とボソッと零されて。

「……俺は、シェリルと正式に婚姻するまで手を出すつもりはない。だから、あんまり迫ってこられると、だな……」

 そこでギルバート様は一旦言葉を切られる。……この続きは、なんとなく予想が出来た。つまり、まだ私に手を出したくないから、積極的にしないでほしい、と言うことなのだろう。

(……私は、今手を出されても問題ないけれど……)

 でも、世間体を考えるにそれは無理な話なのだ。特に、ギルバート様は辺境の貴族をまとめる立場にある。貴族たちの見本になるべき存在なのだ。だから、仕方がない、のよね。

「……分かり、ました」

 少しがっかりしたけれど、それが決まりなのだから仕方がない。それに、ギルバート様のお気持ちを知れただけでも、大きな一歩を踏み出したと考えなくちゃ。私たちは、とてもゆっくりだけれど進んでいる。そう、思いたかった。

「……まぁ、口づけくらいならば、シェリルが望むのならば……いい、けれどな」

 だけど、そんな風にギルバート様が漏らされたお言葉に、私は心が歓喜するのを実感した。だから、ギルバート様のお顔を上目遣いで見つめれば、ギルバート様は「……分かった」と口元を少しだけ緩めながら零されて。
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