ハイスぺ年下救命医は強がりママを一途に追いかけ手放さない
気にしないと言ってしまったのは私だ。今日は墓穴を掘ってばかりいる。
おずおずと右手を差し出すと和馬が大事そうに両手で包んだ。

「綺麗な手」
「普通だよ」
「この手がごつい一眼レフカメラを持つのが格好いいと思った」

和馬が静かな口調で言った。昔を思い出すように細められた瞳。

「きみの撮る夜の風景が好きだったよ」
「……もう何年も撮ってない」

ふっと微笑み、和馬が私の手の甲を撫でた。

「今の月子は、スマホは頻繁に構えてるよ。アルバムが真優紀だらけだものね」
「和馬のスマホだって、真優紀の写真だらけじゃない。知ってるよ」
「はは、成長の瞬間を逃したくなくて」

その笑顔につられて、私も笑った。

「月子、いつかまた写真撮影の趣味を復活させようよ。今は忙しくてなかなかできないかもしれないけど」
「夫婦の老後の趣味みたいな言い方しないで。私は和馬とよりを戻すとは言ってない」

拒否の言葉は以前より力をなくしている。別れた経緯の真実を和馬は知っているし、今、よりを戻すことに対する不安があることも伝えてある。
伝えていないのは私の本当の気持ちだけ……。

「俺はいつまでだって待てるよ。愛を試されてるみたいで燃えるしね」
「気持ち悪いわよ……」
「なんとでも。好きだよ、月子」

そう言って、和馬は私の右手の甲にキスを落とした。騎士が忠誠を誓うような所作に、不覚にも胸が高鳴っていた。
< 103 / 158 >

この作品をシェア

pagetop