ハイスぺ年下救命医は強がりママを一途に追いかけ手放さない
「脅迫ですか。あの子に何かしようとしたらあなたを許しません」
「あなたが和馬さんと別れれば済むことじゃない!」
「お帰りください」

私は立ち上がり、先に打ち合わせスペースを出た。打ち合わせスペースに隣接したロビーから、エレベーターホールへ向かおうと歩き出す。

「私は本気ですわよ!」

背後で麗亜さんが怒鳴った。なんて、迷惑な人だろう。これ以上騒がれたら困る。
その時、私の横から腕をがしっとつかんだ人がいた。
見れば桜田さんがドーナツの箱を手にし、もう片腕を私の腕に絡めているのだ。

「月子先輩! お昼にしましょう!」

そう言って桜田さんは、エレベーターホールのさらに奥、階段の方へ私を引っ張っていく。ここまでくれば麗亜さんから私の姿は見えないという位置で、彼女は立ち止まった。

「桜田さん……」

見おろすと、彼女ははーっと深い息をつき、それからぺこっと頭を下げた。

「ごめんなさい、月子先輩。打ち合わせスペースに月子先輩の姿が見えて、なんかお相手の様子がおかしかったので、近くで待っていました」

おそらく話はいくらか聞こえていただろう。私は苦笑いで嘆息し、こちらからも頭を下げた。

「気づかってくれて、しかも助けてくれてありがとう」
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