ハイスぺ年下救命医は強がりママを一途に追いかけ手放さない
真優紀が和馬を見上げる。最初のような過剰な反応はないが、まだ警戒しているのが見て取れる。

「真優紀ちゃん」

和馬は優しい声で話しかけた。きっと、小さな患者にはこうして話すのだろう。

「真優紀ちゃん、こんにちは」
「なーな、あー」

真優紀は声をあげ、地面をハイハイして私の脛にしがみついた。話しかけられるのは想定外だったようだ。安全な私のもとへ戻って、和馬をじっと見ている。

「本当はこの後、食事にでもと思ったんだけど、真優紀は俺が怖いみたいだし無理はさせられないな」
「……外食は、この子もあまり慣れていないからいいわ」

そう言いながら、せっかくの初対面で真優紀を抱き上げることもできなかった和馬が不憫に思えてならなかった。
いや、そんな気持ちは私の未練がそうさせるのだ。きっちりと決別しないといけない。

「和馬、悪いけど帰ります。この子と私は、もうあなたの人生の外側の存在だから、どうか忘れてほしい」
「そんなふうには思えない」
「あなたは父親だから一度だけ会わせた。だけど、今後はお互い関わらずにいきましょう」

和馬が私の手にそっと触れた。

「俺に、挽回するすべはない?」
「挽回もなにも、私たちは合意のもとに別れたでしょう。別の人生になっただけよ」
「月子が好きだ。今でもずっと」

その言葉にどきりとし、和馬の顔が見られない。揺れてしまう表情を見せるわけにはいかない。手を振り払い、真優紀を抱き上げて顔を隠した。

「あなたにはふさわしい人が他にいる。縁談だって、きっとお父さんは諦めていないよ」

記憶の中では、かなり立派なお家柄のお嬢さんとの縁談だった。和馬が拒否しても、あのお父さんが簡単に言うことを聞くとは思えない。

「確かに父はまだ画策しているようだが、俺は相手に直接断っているし、破談になったものと考えてる。おかしいだろ。片方に結婚の意志がないのに、縁談が進むはずがない」
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