ハイスぺ年下救命医は強がりママを一途に追いかけ手放さない
自分ではそんなつもりはなかった。しかし、琴絵さんの言葉に衝撃を受けた。あれほど嫌だと思っていた彼の父親の言葉に影響を受けていた?

「恋人の家族に認めてもらえないってすごくつらいことだよ。自己肯定感が下がった月子が、和馬くんのそばにいられない理由を自分の中でどんどん大きくしていっても仕方ないと思う」
「私、……そんなに自分に自信をなくしていたのかな」
「あの頃は和馬くんの仕事を盾に脅されてもいたしね。でも、もう二年経って状況がこれほど変わって、和馬くんはまだブレていない。月子も真正面から向き合うときがきたのかもね。復縁か、完全な離別か」

そのとき、ドアチャイムが鳴り響いた。こんな時間に誰だろう。
時刻は二十時。浅岡さんが来る予定はないし、宅配便も頼んでいない。
インターホンについた古いカメラを見ると、見覚えのある男性の姿。ゾッとした。

「和馬のお父さん……」
「え!?」

琴絵さんが声をあげ、すぐに眦を決すると玄関へ向かう。

「月子は出てこなくていい。私が帰ってもらう」
「でも」
「月子と真優紀の顔を見た方が怒りが増すかもしれない」

琴絵さんに言い含められ、リビングで待機した。しかしそう広い家ではないので、玄関の物音はよく聞こえるのだ。
ドアが開き、まず久しぶりに聞く彼の父親の声がした。

「武藤さんのお宅ですね。月子さんに用事があって参りました」
「どなたかは存じ上げています。月子はおりません」
「あなたが月子さんの叔母さんですか。隠し立てしてもいいことはありませんよ」
「何がいいことはありませんよ、ですか。具体的におっしゃってくださいよ」

琴絵さんの嘲笑うような声が聞こえる。挑発するつもりはないのかもしれないが、叔母も充分怒っているのだ。
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