シンデレラになりたくないドアマット令嬢は 、魔法使いとの幸せを思い願う
「──やッ! 離してください!」
「そう警戒しなくたって、ただ汚れたドレスを脱ぐだけですよ。私が信じられませんか?」
信じられない。ただ脱ぐだけなら、王子が手ずから脱がせなくとも使用人を呼んでくれればいい話だ。人柄が良さそうで無害そうな見た目をしていたから完全に油断してしまったし、シンデレラのストーリーを知っていたからこそ、私はその筋書きから逃げる事しか考えていなかった。
バタバタと手足を動かして抵抗するが、私の細腕では本気になった男性に敵うわけがない。
「では、こんな格好ですが言わせてもらいますね。私の花嫁は貴女に決めたのです。だからお名前を教えてください」
「どうし……」
「その清らかさ漂う美しさに一目惚れしました。どうか私に、貴女を愛する権利をください」
チャーミング王子の唇が頸に触れた瞬間、私は全力で叫んだ。
「──ランベールッ!」
面倒くさがり屋の彼が助けてくれるとは思えない。そもそもここから呼んだって聞こえる訳が無い。それでも私が助けを求められる存在は彼しか居なかったし……こういう事をするのなら、その相手は──ランベールが良かった。
「やだ、ランベール助けて……!」
「そんな数百年前の魔法使いの名前なんて、呼んだってどうにもなりませんよ」
どういう意味なのか分からない。私にとってランベールはドアマットだけど、今を生きている自称人間の魔法使いで……。
そこまで考えたところでハッとした。
(そうだ、私は魔法使い。ランベールから教えてもらった魔法がある!) 私は咄嗟に透明になる魔法を使用して、姿を隠した。この魔法なら、魔法の使えない人間であれば私の姿は見えないし、触れることも出来ない。チャーミング王子の拘束をすり抜けるようにして、静かにベッドから降りる。
「──!? 魔法使いか……どちらに隠れたのですか?」
どうやらチャーミング王子は完全に私を見失ったらしい。小さく舌打ちして、私から脱がせたガラスの靴を持ち立ち上がる。
(この隙に逃げなきゃ!)
私は姿を隠したままキョロキョロと辺りを伺う。ドアは開閉すると出入りがバレてしまいそうだが、幸いバルコニーに通じた窓が全開になっている。私はそこからバルコニーに出て……下を見て、ゴクリと唾を飲み込む。ここは地上五階。この高さから飛び降りたら死ぬ。
(……いや、このまま捕らわれてシンデレラとして生きるなら、いっそ死んだ方がマシかも)
そんな最悪の考えも脳内をチラついたが、首を横に振って自分の考えを否定した。そして深く息を吸って──吐いて。覚悟を決めて、バルコニーの柵に裸足で足をかける。
私は、ランベールと一緒に居たい。
「……魔法は、思い願えば何でも叶う。だからこそ『魔法』なのよ」
私は柵を蹴って宙に飛び出した。どうかそのまま宙を歩かせて!! ──と思うのだが、当然私の体は重力に従って落ちてゆく。
(嘘おぉぉぉおッ!?)
当たり前である。だって宙を歩いた事など無いのだから、宙を歩くイメージなんて上手く出来ないのだ。
地面にぶつかる!!──と思い目を瞑った所で、私の体はポカポカとした温かい春の陽気のような風に包まれた。
「そう警戒しなくたって、ただ汚れたドレスを脱ぐだけですよ。私が信じられませんか?」
信じられない。ただ脱ぐだけなら、王子が手ずから脱がせなくとも使用人を呼んでくれればいい話だ。人柄が良さそうで無害そうな見た目をしていたから完全に油断してしまったし、シンデレラのストーリーを知っていたからこそ、私はその筋書きから逃げる事しか考えていなかった。
バタバタと手足を動かして抵抗するが、私の細腕では本気になった男性に敵うわけがない。
「では、こんな格好ですが言わせてもらいますね。私の花嫁は貴女に決めたのです。だからお名前を教えてください」
「どうし……」
「その清らかさ漂う美しさに一目惚れしました。どうか私に、貴女を愛する権利をください」
チャーミング王子の唇が頸に触れた瞬間、私は全力で叫んだ。
「──ランベールッ!」
面倒くさがり屋の彼が助けてくれるとは思えない。そもそもここから呼んだって聞こえる訳が無い。それでも私が助けを求められる存在は彼しか居なかったし……こういう事をするのなら、その相手は──ランベールが良かった。
「やだ、ランベール助けて……!」
「そんな数百年前の魔法使いの名前なんて、呼んだってどうにもなりませんよ」
どういう意味なのか分からない。私にとってランベールはドアマットだけど、今を生きている自称人間の魔法使いで……。
そこまで考えたところでハッとした。
(そうだ、私は魔法使い。ランベールから教えてもらった魔法がある!) 私は咄嗟に透明になる魔法を使用して、姿を隠した。この魔法なら、魔法の使えない人間であれば私の姿は見えないし、触れることも出来ない。チャーミング王子の拘束をすり抜けるようにして、静かにベッドから降りる。
「──!? 魔法使いか……どちらに隠れたのですか?」
どうやらチャーミング王子は完全に私を見失ったらしい。小さく舌打ちして、私から脱がせたガラスの靴を持ち立ち上がる。
(この隙に逃げなきゃ!)
私は姿を隠したままキョロキョロと辺りを伺う。ドアは開閉すると出入りがバレてしまいそうだが、幸いバルコニーに通じた窓が全開になっている。私はそこからバルコニーに出て……下を見て、ゴクリと唾を飲み込む。ここは地上五階。この高さから飛び降りたら死ぬ。
(……いや、このまま捕らわれてシンデレラとして生きるなら、いっそ死んだ方がマシかも)
そんな最悪の考えも脳内をチラついたが、首を横に振って自分の考えを否定した。そして深く息を吸って──吐いて。覚悟を決めて、バルコニーの柵に裸足で足をかける。
私は、ランベールと一緒に居たい。
「……魔法は、思い願えば何でも叶う。だからこそ『魔法』なのよ」
私は柵を蹴って宙に飛び出した。どうかそのまま宙を歩かせて!! ──と思うのだが、当然私の体は重力に従って落ちてゆく。
(嘘おぉぉぉおッ!?)
当たり前である。だって宙を歩いた事など無いのだから、宙を歩くイメージなんて上手く出来ないのだ。
地面にぶつかる!!──と思い目を瞑った所で、私の体はポカポカとした温かい春の陽気のような風に包まれた。