アイドルプロジェクト!
「今後の予定につきましては追って説明いたしますが、現在決定していることは3月にこの『20名』の中から合格者、全5名が決まるということです」
…3、月……。
あと約11カ月後にはアイドルとしてデビューできるかできないかが決まる。
まだわたしは15歳だけど、人生の全ての選択を迫られてるみたいでとても怖い。人生のまだ半分どころか4分の1にすら来ていないのに。
そんな人生における分岐点に自ら立ちに行く決心をしたんだ。そんな簡単に終われない。
「それでは最後に社長からお言葉をいただきたいと思います。社長、お願いします」
スクリーンの前に立った社長がゴホンと咳払いを1つすると、突然、場の空気が変わった。
なんというか、あぁこれから言われることは絶対に大切なことなんだってすぐにわかった。
「まずはじめに、これまでの書類選考に残れたことおめでトウ!キミたちは現在、言わば金の卵だ。アイドルという今だ未知の存在になるべくカラを破ろうとしているヒヨっ子。だが、今はどうであれ、これからは日本のアイドル界の最先端をゆく存在になってもらうのサっ。そんなキミたちに社長であるボクから問いたい。キミたちはプロになるという覚悟はあるカイ?」
プロ…。
……。
あたりに沈黙が流れる。
それはきっと無言の否定を表している。
「ここにいる時点でもうキミたちはもう芸能界の一員であるのサッ。ボクはその自覚が足りていないと思うんだヨウ。だれかと会えば挨拶をする。おはよう、こんにちは、こんばんは。よろしくお願いします。素直にカンシャの気持ちを伝える。ありがとうございます、ありがとうございました。今のキミたちは人としての基本ですら欠けている」
たしかに、社長や金剛寺さんが入ってきたとき、驚いて声を出せなかったってのもあるけど、誰一人として挨拶をしていなかった。
…社長はよく見ている。
いいや。
もうこの建物に入ったときから選考、プロジェクトは始まっていたんだ。
「まだ慣れない環境で戸惑っているのかもしれないが、そんなのもイイワケに過ぎナイ。ときには臨機応変にその場に順応することが必要になるのサ。それも含めてキミたちにこの場所で学んでホシイとボクは思っているヨウ☆」
サングラスで見えないはずの社長の目とあった気がした。澄んだ目がわたしを見てる。すべてを見ている。
社長はわたしたちに期待しているんだ。
期待に応えたい。
そう思った。