大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
23.愛の無い結婚をお望みで?
そこからタクシーで約十五分。
たどり着いた、以前訪れた時と同じ、ありふれた一軒家。
私は、翔陽くんと車から降り立つと、それを見上げる。
江陽が来る約束の時間は、もう過ぎていて――見覚えがあり過ぎる、ヤツの車が駐車スペースに停まっていた。
おそらく、逆算しての時間指定だったのだろう。
――これから……私は、翔陽くんの婚約者として、振る舞わないといけないのだ。
気合いを入れると、クスリ、と、隣から笑い声。
私が視線を向ければ、彼は、困ったように微笑んだ。
「緊張してるのが、丸わかりですよ。――本当に婚約者になったみたいですね」
「べ、別に……」
「その顔じゃ、説得力ありませんからね」
反論しようとしたが、あっさりと流されてしまったので、眉を寄せる。
「……どういう意味よ」
「鏡で見てみます?眉間のシワ、スゴイですよ?」
「ちょっと!アラサー女子に、シワとか禁句よ?!」
「大丈夫ですよ、充分お綺麗ですから。シワも、魅力の一つです」
「アンタ、からかってるわよね⁉」
「――だって、可愛い反応するんですから、意地悪言いたくもなりますよ」
お互いに、砕けた雰囲気で言い合っていると、玄関のドアが先に開いた。
「いらっしゃい、羽津紀ちゃん」
「――亜澄さん」
迎えてくれた彼女は、相も変わらず、年齢不詳の美貌と可愛らしさで微笑む。
いつもよりもキレイ目な服なのは、食事会という名目のせいだろう。
私は、慌てて、先ほどの駅ビルで買った洋菓子を手渡した。
「よ、よろしければ、後でお召し上がりください」
「まあ、ありがとう、羽津紀ちゃん。気を遣わせて、ごめんなさいね」
彼女は、そう言いながらお菓子の入った紙袋を受け取ると、中にうながす。
「さ、入ってちょうだい。――今、ちょうど、江陽達も来たところなの」
「――……っ……ハ、イ……」
緊張で、声がかすれた。
すると、翔陽くんは、それをかばうように、手を取る。
「……翔陽くん」
「――僕に任せてください。とにかく、あなたは、僕の婚約者。ひとまず、うなづいてくれるだけで、良いんです」
「……わ、わかったわ……」
そして、通されたリビング。
以前は、急に招かれて緊張したが――今日は、違う種類の緊張感だ。
「江陽、聞いてるでしょ?翔陽が、婚約者さん連れて来るって」
亜澄さんが、ドアを開けながら、中に向かって声をかける。
「――ああ」
すると、そんな、そっけない声が聞こえる。
私は、翔陽くんの陰に隠れながら、部屋に足を踏み入れた。
「久し振り――でもないか、兄さん」
「ああ。……だが、急に何だ、お前に婚約し――……」
江陽の言葉が、不自然に途切れた。
「――江陽さん?どうか……」
そして、その隣に座っていた――叶津さんの言葉も。
「兄さん、叶津さん。――紹介します。僕の婚約者の、名木沢羽津紀さんです」
たどり着いた、以前訪れた時と同じ、ありふれた一軒家。
私は、翔陽くんと車から降り立つと、それを見上げる。
江陽が来る約束の時間は、もう過ぎていて――見覚えがあり過ぎる、ヤツの車が駐車スペースに停まっていた。
おそらく、逆算しての時間指定だったのだろう。
――これから……私は、翔陽くんの婚約者として、振る舞わないといけないのだ。
気合いを入れると、クスリ、と、隣から笑い声。
私が視線を向ければ、彼は、困ったように微笑んだ。
「緊張してるのが、丸わかりですよ。――本当に婚約者になったみたいですね」
「べ、別に……」
「その顔じゃ、説得力ありませんからね」
反論しようとしたが、あっさりと流されてしまったので、眉を寄せる。
「……どういう意味よ」
「鏡で見てみます?眉間のシワ、スゴイですよ?」
「ちょっと!アラサー女子に、シワとか禁句よ?!」
「大丈夫ですよ、充分お綺麗ですから。シワも、魅力の一つです」
「アンタ、からかってるわよね⁉」
「――だって、可愛い反応するんですから、意地悪言いたくもなりますよ」
お互いに、砕けた雰囲気で言い合っていると、玄関のドアが先に開いた。
「いらっしゃい、羽津紀ちゃん」
「――亜澄さん」
迎えてくれた彼女は、相も変わらず、年齢不詳の美貌と可愛らしさで微笑む。
いつもよりもキレイ目な服なのは、食事会という名目のせいだろう。
私は、慌てて、先ほどの駅ビルで買った洋菓子を手渡した。
「よ、よろしければ、後でお召し上がりください」
「まあ、ありがとう、羽津紀ちゃん。気を遣わせて、ごめんなさいね」
彼女は、そう言いながらお菓子の入った紙袋を受け取ると、中にうながす。
「さ、入ってちょうだい。――今、ちょうど、江陽達も来たところなの」
「――……っ……ハ、イ……」
緊張で、声がかすれた。
すると、翔陽くんは、それをかばうように、手を取る。
「……翔陽くん」
「――僕に任せてください。とにかく、あなたは、僕の婚約者。ひとまず、うなづいてくれるだけで、良いんです」
「……わ、わかったわ……」
そして、通されたリビング。
以前は、急に招かれて緊張したが――今日は、違う種類の緊張感だ。
「江陽、聞いてるでしょ?翔陽が、婚約者さん連れて来るって」
亜澄さんが、ドアを開けながら、中に向かって声をかける。
「――ああ」
すると、そんな、そっけない声が聞こえる。
私は、翔陽くんの陰に隠れながら、部屋に足を踏み入れた。
「久し振り――でもないか、兄さん」
「ああ。……だが、急に何だ、お前に婚約し――……」
江陽の言葉が、不自然に途切れた。
「――江陽さん?どうか……」
そして、その隣に座っていた――叶津さんの言葉も。
「兄さん、叶津さん。――紹介します。僕の婚約者の、名木沢羽津紀さんです」