大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
しばらく車は、海沿いのドライブコースを進んでいく。
私は、左手に見える海を眺めたまま、江陽に尋ねた。
「……ねえ、江陽、どこ行くの?」
「――……早く、うーちゃんと、二人だけになりてぇ」
直球に甘えるように言われ、思わず身もだえそうになる。
「……バカ」
「嫌か?」
「……別に……良い、けど……」
元々、ヤツは、早くホテルに行きたいと言っていたのだ。
そう思ったが、自分の持ち物を思い出し、ストップをかける。
「あ、でも、待って。いろいろ持ってない」
「別に、ゴムなら、持ち歩いてるけど」
「バッ……!!!そういう、いろいろじゃなくてっっ!!!!」
――ていうか、持ち歩くな!
思わず心の中で突っ込んでしまうが、口にはできない。
それは――まあ、必要は必要なのだから。
私が用意するには、高いハードルを何本も越えなければいけないから、文句は言えない。
「――……だからっ……化粧品は最低限だし……着替えの服とか――下着とかっ!」
恥を忍んでそう続ければ、ヤツは、クスリ、と、笑う。
「……何よ、こうちゃん」
「いや――また、こんな風にできて、うれしいんだよ」
「え」
「――……もう、一生、会えねぇと思ってたからな」
真顔で、そう続けられ、私はうつむく。
「……私だって……アンタが決めた事なら……もう、無理だと思ってた」
「……翔陽に、感謝、だな……」
そう、ポツリと言う江陽の手を、私は、そっと握った。
「うーちゃん?」
「……それは……アンタの顔が……ひどかったからよ」
「え」
ギョッとして私に視線を向けた江陽は、眉を寄せる。
「……い、一応、見た目は悪くはねぇ方だと思ってるけどな……」
「そういう意味じゃないわよ、このバカ江陽!」
「はぁ⁉」
「――アンタがっ……何もかも、あきらめたような顔してたって……」
そう続ければ、ヤツは息をのんだ。
「……もしかしなくても、無意識?」
「……ああ。――そうか……アイツには、そう見えたのか……」
「じゃあ、すべて納得した上だったの?」
「――まさか。……でも……オレが望んでいた条件が、すべて、揃えられていて――羽津紀の事を、あきらめられなかったけど――家族も、捨てきれなかった」
悔しそうにつぶやくヤツは、そっと私の手に指を絡ませた。
「……ごめんな……うーちゃん……」
私は、かすかに首を振って返すだけだ。
以前、江陽が言っていた意味が――やっと、わかった気がした。
恋人よりも、仕事や親友が優先される。
それが私とはいえ――やりきれない部分もあるのだと。
私だって――本当は、ご家族よりも、私を選んでほしかった。
江陽にとって、天秤にかける事がとてつもなく苦しいものだと、わかっているのに。
「――お互い、大事なものが他にあると、大変よね」
「――……だな」
私は、真っ直ぐ前を向いている江陽を見つめる。
――それでも――お互いを、切り捨てられなかった。
どんなに離れていても――気持ちは、同じだと思い続けたから。
「……なあ、羽津紀。……この先、また、こんな事があるかもしれねぇ」
「……ええ」
「でも、もう、何があっても、離れねぇから――」
「……ええ……」
その、真剣な口調に、ウソは無い。
そう思える。
――何より、視線が動く事は無いのだから。
「……でも、私は――やっぱり、今の優先順位は譲れないわ」
「もう、わかってる。――だから、ヤキモチは覚悟しておけ」
「……何よ、それ」
ニヤリ、と、口元を上げるヤツを、私はクスクスと笑いながら見上げた。
「その度、立てなくなるからな」
「――……っ……!!!」
その意味を理解してしまい、真っ赤になる。
「バ、バカ江陽!」
「ああ、とりあえず、今日はもう、無理だと思え」
「え」
「――離れてた分、しっかり回収させてもらうからな」
「……バ、バカッ!」
仕返しとばかりに、ヤツの太ももをつねろうとするが――悔しい事に、筋肉ばかりで掴む事ができない。
腹が立った私は、代わりにそこを、思い切り平手でたたいたのだった。
私は、左手に見える海を眺めたまま、江陽に尋ねた。
「……ねえ、江陽、どこ行くの?」
「――……早く、うーちゃんと、二人だけになりてぇ」
直球に甘えるように言われ、思わず身もだえそうになる。
「……バカ」
「嫌か?」
「……別に……良い、けど……」
元々、ヤツは、早くホテルに行きたいと言っていたのだ。
そう思ったが、自分の持ち物を思い出し、ストップをかける。
「あ、でも、待って。いろいろ持ってない」
「別に、ゴムなら、持ち歩いてるけど」
「バッ……!!!そういう、いろいろじゃなくてっっ!!!!」
――ていうか、持ち歩くな!
思わず心の中で突っ込んでしまうが、口にはできない。
それは――まあ、必要は必要なのだから。
私が用意するには、高いハードルを何本も越えなければいけないから、文句は言えない。
「――……だからっ……化粧品は最低限だし……着替えの服とか――下着とかっ!」
恥を忍んでそう続ければ、ヤツは、クスリ、と、笑う。
「……何よ、こうちゃん」
「いや――また、こんな風にできて、うれしいんだよ」
「え」
「――……もう、一生、会えねぇと思ってたからな」
真顔で、そう続けられ、私はうつむく。
「……私だって……アンタが決めた事なら……もう、無理だと思ってた」
「……翔陽に、感謝、だな……」
そう、ポツリと言う江陽の手を、私は、そっと握った。
「うーちゃん?」
「……それは……アンタの顔が……ひどかったからよ」
「え」
ギョッとして私に視線を向けた江陽は、眉を寄せる。
「……い、一応、見た目は悪くはねぇ方だと思ってるけどな……」
「そういう意味じゃないわよ、このバカ江陽!」
「はぁ⁉」
「――アンタがっ……何もかも、あきらめたような顔してたって……」
そう続ければ、ヤツは息をのんだ。
「……もしかしなくても、無意識?」
「……ああ。――そうか……アイツには、そう見えたのか……」
「じゃあ、すべて納得した上だったの?」
「――まさか。……でも……オレが望んでいた条件が、すべて、揃えられていて――羽津紀の事を、あきらめられなかったけど――家族も、捨てきれなかった」
悔しそうにつぶやくヤツは、そっと私の手に指を絡ませた。
「……ごめんな……うーちゃん……」
私は、かすかに首を振って返すだけだ。
以前、江陽が言っていた意味が――やっと、わかった気がした。
恋人よりも、仕事や親友が優先される。
それが私とはいえ――やりきれない部分もあるのだと。
私だって――本当は、ご家族よりも、私を選んでほしかった。
江陽にとって、天秤にかける事がとてつもなく苦しいものだと、わかっているのに。
「――お互い、大事なものが他にあると、大変よね」
「――……だな」
私は、真っ直ぐ前を向いている江陽を見つめる。
――それでも――お互いを、切り捨てられなかった。
どんなに離れていても――気持ちは、同じだと思い続けたから。
「……なあ、羽津紀。……この先、また、こんな事があるかもしれねぇ」
「……ええ」
「でも、もう、何があっても、離れねぇから――」
「……ええ……」
その、真剣な口調に、ウソは無い。
そう思える。
――何より、視線が動く事は無いのだから。
「……でも、私は――やっぱり、今の優先順位は譲れないわ」
「もう、わかってる。――だから、ヤキモチは覚悟しておけ」
「……何よ、それ」
ニヤリ、と、口元を上げるヤツを、私はクスクスと笑いながら見上げた。
「その度、立てなくなるからな」
「――……っ……!!!」
その意味を理解してしまい、真っ赤になる。
「バ、バカ江陽!」
「ああ、とりあえず、今日はもう、無理だと思え」
「え」
「――離れてた分、しっかり回収させてもらうからな」
「……バ、バカッ!」
仕返しとばかりに、ヤツの太ももをつねろうとするが――悔しい事に、筋肉ばかりで掴む事ができない。
腹が立った私は、代わりにそこを、思い切り平手でたたいたのだった。