大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
足元のおぼつかない聖を支えながら、マンションまで江陽と三人で歩いていく。
「――おい、本当に大丈夫かよ」
「大丈夫よ」
「……聖一人くらい、オレがおんぶしていくけどな」
私は、ジロリと隣を歩くヤツを見上げた。
「……何だよ」
「自分の知らないうちに、恋人でもない男に運ばれるなんて、嫌でしょうが」
「……じゃあ、お前なら良いのかよ」
「良いに決まってるじゃない。聖は大事な親友よ」
そう返せば、ムスリ、と、江陽は表情を変える。
「……何よ」
「……別に。……お前にとって、オレの優先順位は、常に聖の次なんだな、と、思ってよ」
「当然でしょ。何回言えば、わかるのよ」
すると、ヤツは、真顔で私をのぞき込んで尋ねた。
「――……お前、本っ……当に、聖と何にも無いんだよな?」
「……ハァ??」
それは、どういう意味だ。
聖と、そういう関係だとでも言いたいのか。
私は、眉をしかめて江陽をにらむ。
「……アンタ、思考回路、腐ってるの?」
「だってよ、お前等の仲の良さ、おかしくねぇ?」
「……どういう意味よ」
「――普通、彼氏が優先されるもんだろ?」
そう、当然のように言われ、私は、足を止めた。
「……あれぇ、羽津紀ー?部屋着いたのー?」
私にしなだれかかりながら、聖が尋ねてきたので、微笑み、あやすように、その柔らかい髪を撫でた。
「ちょっと待っててね、聖。――すぐ、終わるから」
「ハーイ」
「……おい、羽津紀……?」
上機嫌な聖をそっと離すと、私は、江陽の目の前に立つ。
「――……羽津紀?」
ヤツは、若干たじろぎ、一歩後ずさる。
――それもそうだろう。
今、私の中は、先ほどとは別の怒りで一杯なのだから。
「――いい加減にして、江陽。みんながみんな、恋人が最優先じゃないの。――それが不満なら、別れる?」
「バッ……!」
江陽は、青くなり、私の両肩を掴んだ。
「何言ってんだ、羽津紀!――オレは、ただ……」
「ただ、何よ。この先、聖を優先するたびに、そんな事言われたら、たまったもんじゃないのよ」
親友が恋人より大事。
――それは、そんなにおかしい事なんだろうか。
――……それならば――私は、友情を取る。
結婚した後も、聖との友情はずっと続いていくだろうし、そのつもりだ。
それは、きっと、彼女だって同じだろう。
たとえ、聖の方の優先順位が、恋愛が上だとしてもだ。
それは、最初から、そうだったんだから、今さら不満など無い。
江陽は、そういうものを、すべて飲み込んでくれて――ずっと、付き合ってきたと思っていたのに。
「――……悪い……。……羽津紀がどうこうじゃなくて、だな……」
私が本気で怒っている事を理解した江陽は、気まずそうに頭を下げ、そのまま、口ごもりながら続けた。
「……ただ……な……。……その……オレが――お前の事、独り占めしてぇだけなんだよ」
「――え」
ヤツの言葉を脳内で処理できた途端、全身が熱くなる。
「なっ……何っ、言ってっ……!」
「だから!ただの、ヤキモチなんだよ!」
お互い真っ赤になりながら、硬直。
――何だ、それは。
――昔の独占欲は、いまだ健在という訳か。
そう、わかってしまうと、胸の奥がむずがゆい。
「……だから――ウソでも、別れるとか言うなよ……」
半泣きになりそうな雰囲気に、私は、バツが悪くなる。
「……わ、悪かったわよ。……つい……勢いで……」
口ごもりながらも謝ると、江陽は、顔を勢いよく上げた。
「――そうか。……良かった……」
心底ホッとしたような口調に、罪悪感が募る。
私だって、本気な訳じゃないのだけれど――つい、口をついて出てしまうのだ。
――江陽は、きっと、受け入れる事は無いと思ってしまって――。
こういうものを、甘えていると言うのなら――私は、これまで、どれだけコイツに甘えていたんだろう。
「羽津紀?」
「え」
顔を上げると、江陽が心配そうにのぞき込んできた。
「アルコール回ったか?」
「――ううん、大丈夫よ」
「そうか。――そろそろ、聖がヤバイ。早く帰るぞ」
私は、そう言われ、慌てて振り返る。
「羽津紀ー、お話、終わったー?」
上機嫌で手を振る聖へ駆け寄ると、再び、三人でマンションへの道のりを歩いたのだった。
「――おい、本当に大丈夫かよ」
「大丈夫よ」
「……聖一人くらい、オレがおんぶしていくけどな」
私は、ジロリと隣を歩くヤツを見上げた。
「……何だよ」
「自分の知らないうちに、恋人でもない男に運ばれるなんて、嫌でしょうが」
「……じゃあ、お前なら良いのかよ」
「良いに決まってるじゃない。聖は大事な親友よ」
そう返せば、ムスリ、と、江陽は表情を変える。
「……何よ」
「……別に。……お前にとって、オレの優先順位は、常に聖の次なんだな、と、思ってよ」
「当然でしょ。何回言えば、わかるのよ」
すると、ヤツは、真顔で私をのぞき込んで尋ねた。
「――……お前、本っ……当に、聖と何にも無いんだよな?」
「……ハァ??」
それは、どういう意味だ。
聖と、そういう関係だとでも言いたいのか。
私は、眉をしかめて江陽をにらむ。
「……アンタ、思考回路、腐ってるの?」
「だってよ、お前等の仲の良さ、おかしくねぇ?」
「……どういう意味よ」
「――普通、彼氏が優先されるもんだろ?」
そう、当然のように言われ、私は、足を止めた。
「……あれぇ、羽津紀ー?部屋着いたのー?」
私にしなだれかかりながら、聖が尋ねてきたので、微笑み、あやすように、その柔らかい髪を撫でた。
「ちょっと待っててね、聖。――すぐ、終わるから」
「ハーイ」
「……おい、羽津紀……?」
上機嫌な聖をそっと離すと、私は、江陽の目の前に立つ。
「――……羽津紀?」
ヤツは、若干たじろぎ、一歩後ずさる。
――それもそうだろう。
今、私の中は、先ほどとは別の怒りで一杯なのだから。
「――いい加減にして、江陽。みんながみんな、恋人が最優先じゃないの。――それが不満なら、別れる?」
「バッ……!」
江陽は、青くなり、私の両肩を掴んだ。
「何言ってんだ、羽津紀!――オレは、ただ……」
「ただ、何よ。この先、聖を優先するたびに、そんな事言われたら、たまったもんじゃないのよ」
親友が恋人より大事。
――それは、そんなにおかしい事なんだろうか。
――……それならば――私は、友情を取る。
結婚した後も、聖との友情はずっと続いていくだろうし、そのつもりだ。
それは、きっと、彼女だって同じだろう。
たとえ、聖の方の優先順位が、恋愛が上だとしてもだ。
それは、最初から、そうだったんだから、今さら不満など無い。
江陽は、そういうものを、すべて飲み込んでくれて――ずっと、付き合ってきたと思っていたのに。
「――……悪い……。……羽津紀がどうこうじゃなくて、だな……」
私が本気で怒っている事を理解した江陽は、気まずそうに頭を下げ、そのまま、口ごもりながら続けた。
「……ただ……な……。……その……オレが――お前の事、独り占めしてぇだけなんだよ」
「――え」
ヤツの言葉を脳内で処理できた途端、全身が熱くなる。
「なっ……何っ、言ってっ……!」
「だから!ただの、ヤキモチなんだよ!」
お互い真っ赤になりながら、硬直。
――何だ、それは。
――昔の独占欲は、いまだ健在という訳か。
そう、わかってしまうと、胸の奥がむずがゆい。
「……だから――ウソでも、別れるとか言うなよ……」
半泣きになりそうな雰囲気に、私は、バツが悪くなる。
「……わ、悪かったわよ。……つい……勢いで……」
口ごもりながらも謝ると、江陽は、顔を勢いよく上げた。
「――そうか。……良かった……」
心底ホッとしたような口調に、罪悪感が募る。
私だって、本気な訳じゃないのだけれど――つい、口をついて出てしまうのだ。
――江陽は、きっと、受け入れる事は無いと思ってしまって――。
こういうものを、甘えていると言うのなら――私は、これまで、どれだけコイツに甘えていたんだろう。
「羽津紀?」
「え」
顔を上げると、江陽が心配そうにのぞき込んできた。
「アルコール回ったか?」
「――ううん、大丈夫よ」
「そうか。――そろそろ、聖がヤバイ。早く帰るぞ」
私は、そう言われ、慌てて振り返る。
「羽津紀ー、お話、終わったー?」
上機嫌で手を振る聖へ駆け寄ると、再び、三人でマンションへの道のりを歩いたのだった。