大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
7.私には、この仕事が、捨てられないのだ
いつの間にか、だいぶ暗くなった外を窓から見やる。
周囲のビルの明かりが、辺りを照らしているが、顔を上げれば、宵闇だ。
「名木沢さん」
すると、後ろから声をかけられ振り返る。
――声の主は、もう、わかる。
「片桐さん」
「送るよ。――ウチの企画書で遅くなったんだろうしね」
「――ありがとうございます」
私は、素直に頭を下げ、彼と並んで門を出た。
――が。
「浮気ですか、羽津紀さん」
「――……は?」
唐突に、覚えのない事を言われ、目を丸くする。
――言葉の主は――江陽の弟――翔陽くんだ。
学生服のまま、会社の前で待っていたようで、今も、チラチラと通行人からの視線を受けていた。
けれど、彼は、そんなものを気にするでもなく、私の目の前まで来ると、隣の片桐さんを見上げる。
彼は、戸惑ったように、私に尋ねた。
「――えっと、どなた、かな?名木沢さん」
「あ、こ、江陽の弟さんで――」
「え」
驚いた片桐さんに、翔陽くんは、勝ち誇ったように言った。
「初めまして。――いや、でも、いろいろと調べさせてもらったので、初めてという気がしませんね。――羽津紀さんの元カレの、片桐敬さん?」
そう言って彼を見上げると、翔陽くんは、私を見やる。
「先日、あなたに言われたので、相応のものを揃えさせてもらいますよ」
「――え」
一瞬、何の事かと思ったが、あの時、彼にキレて怒鳴りつけた時の事のようだ。
――それ相応のものを持ってきなさい!
それを――この子は、馬鹿正直に集めているのか。
若干、不憫に思ってしまうが、これも、大叔父さんの教育の弊害なのだろう。
そう思うと、怒るに怒れなくなってしまう。
それ以前に、高校生が、何故、そんな探偵のような真似をしているのか。
私は、翔陽くんを見やり、尋ねた。
「……何で、そんな事しているのかしら?」
「そんなの、あなたが兄さんの伴侶にふさわしくないからでしょう」
「――……はあ……」
まさかの物言いに、思わずポカンとしてしまった。
高校生が、伴侶、とか……。
隣の片桐さんに至っては、自分が、何に巻き込まれているのかも、わかっていない様子だ。
「……あの……翔陽、くん?あなたが、私と江陽の結婚が気に入らなくても、私達は、ちゃんと、ご両親の承諾は得ているのよ?」
「そんなもの、無効でしょう」
「――は?」
「大叔父さんが認めない限り、結婚は成立しませんから」
「――……はあ……??」
私は、眉を寄せ、彼を見つめる。
――……この子、本当に大丈夫なのかしら……?
当然のように言う内容は、時代錯誤も甚だしい。
それを、理解していない――というか、疑問も持っていない。
「――あの、弟くん?ちょっと、いいかな」
すると、戸惑っていた片桐さんが、片手を上げ、翔陽くんに尋ねた。
「――何ですか。浮気の証明ですか」
「まさか。――僕は、ただ、遅くなったから、彼女を帰り道がてら送るだけだったんだけど――キミには、それすら浮気になるのかな?」
「当然です。他に恋人のいる男女が連れ立って歩いている時点で、浮気じゃないんですか」
「……はあ……」
あっけに取られた片桐さんは、困ったように、私を見下ろす。
――まさか、一昔前どころか――こっちも化石か。
私は、大きく息を吐くと、翔陽くんの前に出た。
周囲のビルの明かりが、辺りを照らしているが、顔を上げれば、宵闇だ。
「名木沢さん」
すると、後ろから声をかけられ振り返る。
――声の主は、もう、わかる。
「片桐さん」
「送るよ。――ウチの企画書で遅くなったんだろうしね」
「――ありがとうございます」
私は、素直に頭を下げ、彼と並んで門を出た。
――が。
「浮気ですか、羽津紀さん」
「――……は?」
唐突に、覚えのない事を言われ、目を丸くする。
――言葉の主は――江陽の弟――翔陽くんだ。
学生服のまま、会社の前で待っていたようで、今も、チラチラと通行人からの視線を受けていた。
けれど、彼は、そんなものを気にするでもなく、私の目の前まで来ると、隣の片桐さんを見上げる。
彼は、戸惑ったように、私に尋ねた。
「――えっと、どなた、かな?名木沢さん」
「あ、こ、江陽の弟さんで――」
「え」
驚いた片桐さんに、翔陽くんは、勝ち誇ったように言った。
「初めまして。――いや、でも、いろいろと調べさせてもらったので、初めてという気がしませんね。――羽津紀さんの元カレの、片桐敬さん?」
そう言って彼を見上げると、翔陽くんは、私を見やる。
「先日、あなたに言われたので、相応のものを揃えさせてもらいますよ」
「――え」
一瞬、何の事かと思ったが、あの時、彼にキレて怒鳴りつけた時の事のようだ。
――それ相応のものを持ってきなさい!
それを――この子は、馬鹿正直に集めているのか。
若干、不憫に思ってしまうが、これも、大叔父さんの教育の弊害なのだろう。
そう思うと、怒るに怒れなくなってしまう。
それ以前に、高校生が、何故、そんな探偵のような真似をしているのか。
私は、翔陽くんを見やり、尋ねた。
「……何で、そんな事しているのかしら?」
「そんなの、あなたが兄さんの伴侶にふさわしくないからでしょう」
「――……はあ……」
まさかの物言いに、思わずポカンとしてしまった。
高校生が、伴侶、とか……。
隣の片桐さんに至っては、自分が、何に巻き込まれているのかも、わかっていない様子だ。
「……あの……翔陽、くん?あなたが、私と江陽の結婚が気に入らなくても、私達は、ちゃんと、ご両親の承諾は得ているのよ?」
「そんなもの、無効でしょう」
「――は?」
「大叔父さんが認めない限り、結婚は成立しませんから」
「――……はあ……??」
私は、眉を寄せ、彼を見つめる。
――……この子、本当に大丈夫なのかしら……?
当然のように言う内容は、時代錯誤も甚だしい。
それを、理解していない――というか、疑問も持っていない。
「――あの、弟くん?ちょっと、いいかな」
すると、戸惑っていた片桐さんが、片手を上げ、翔陽くんに尋ねた。
「――何ですか。浮気の証明ですか」
「まさか。――僕は、ただ、遅くなったから、彼女を帰り道がてら送るだけだったんだけど――キミには、それすら浮気になるのかな?」
「当然です。他に恋人のいる男女が連れ立って歩いている時点で、浮気じゃないんですか」
「……はあ……」
あっけに取られた片桐さんは、困ったように、私を見下ろす。
――まさか、一昔前どころか――こっちも化石か。
私は、大きく息を吐くと、翔陽くんの前に出た。