大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
「ちょっ……江陽!」
――朝っぱらから、何してんのよ!
反射で跳ね除けようとするが、そこは、男女の力の差か。
ビクともしないので、せめて、腕の中でもがいてみる。
「羽津紀」
「だから、何よ!」
思わずケンカ口調になってしまうが、仕方ない。
江陽の後、隣に入居してきたのは、総務部の人。
そんなに顔を合わせる訳ではないけれど――気まずくなったら、どうしてくれる。
「――昨日、ずっと、考えてた」
けれど、その言葉に――硬直してしまった。
「……羽津紀が嫌な事は、したくねぇ。――でも、オレはさ、もう、お前といる未来しか必要無ぇんだよ」
「――江陽」
「……だから――二人で、何とか考えてみねぇか……?」
恐る恐るうかがうように、私を離してのぞき込む江陽の言葉に、胸が詰まった。
「う、羽津紀?」
慌てる江陽が、歪んで見える。
頬に伝う涙は――ヤツの大きな手で、そっと、拭い取られた。
――ああ、成長したなぁ……。
――昔だったら、絶対に、自分の意思を曲げようとしなかったのに――……。
まるで、母親のような感動を覚えてしまうが――それ以上に、うれしかった。
「――……うん……」
江陽の手に頬を寄せ、私は、うなづく。
「――二人で、考えましょう……」
どちらか一方の意思だけは、結婚できないし――してはいけないのだと思う。
お互いに同じ気持ちでなければ、きっと、この先、続いていけない。
「――おう」
江陽は、そっと私の頬を撫で、手を離す。
「……週末、時間取れるか?」
そう尋ねられ、素直にうなづく。
「でもね、江陽。……あせらなくても、もう、離れないから――」
「……羽津紀」
「だから、ゆっくり、考えましょう」
「――……わかった」
江陽を見上げれば、視線は、真っ直ぐに私に向かっていた。
それだけで――信じられてしまうのは、これまで一緒にいた時間の賜物。
――最悪だった記憶しかなかったのに――今は、幼なじみも悪くはないと、思えてしまう。
「羽津紀?」
無意識に上がってしまった口元をうつむいて隠し、私は、ヤツに持っていたバッグを押し付けた。
「え」
「――お弁当。……アンタの分も、作ったから……」
「お、おう。……サンキュ」
そう言って受け取った江陽は、チラリと、隣の部屋に視線を向ける。
「聖、昨日、夕飯作ってたのか?」
「――違うわよ」
「え?」
私は、むずかゆくなる胸を押さえつけ、ヤツに言った。
「……き、昨日……あんなだったから……その……仲直り?……っていうか……」
言っているうちに恥ずかしくなり、口ごもる。
――ああ、もう!こんなの、私じゃないみたい!
けれど、江陽は、再び私を抱き締めると、うれしそうに言った。
「良かった……。――……婚約破棄どころか、別れるとか言い出すかと思った……」
「――……バカね、こうちゃん」
私は、そっとヤツを離し、手を握る。
「――うーちゃん?」
「……マンション出るまで、だから」
すると、江陽は、うれしそうに指を絡める。
そして、ギュっと、力を込めて言った。
「会社まででも良いだろ」
「バッ……恥ずかしいじゃない!」
「既に、いろいろ恥ずかしいと思うけどな」
「自覚があるなら、慎みなさい!」
「嫌だね。――牽制しねぇと、誰に取られるかわからねぇじゃん」
「そんな訳無いでしょうに!」
いつものように口ゲンカ。
――でも、ヤツの表情は、甘くて。
落ち着かない私は、けれど、ヤツと手を繋いだまま、エレベーターに乗り込んだのだった。
――朝っぱらから、何してんのよ!
反射で跳ね除けようとするが、そこは、男女の力の差か。
ビクともしないので、せめて、腕の中でもがいてみる。
「羽津紀」
「だから、何よ!」
思わずケンカ口調になってしまうが、仕方ない。
江陽の後、隣に入居してきたのは、総務部の人。
そんなに顔を合わせる訳ではないけれど――気まずくなったら、どうしてくれる。
「――昨日、ずっと、考えてた」
けれど、その言葉に――硬直してしまった。
「……羽津紀が嫌な事は、したくねぇ。――でも、オレはさ、もう、お前といる未来しか必要無ぇんだよ」
「――江陽」
「……だから――二人で、何とか考えてみねぇか……?」
恐る恐るうかがうように、私を離してのぞき込む江陽の言葉に、胸が詰まった。
「う、羽津紀?」
慌てる江陽が、歪んで見える。
頬に伝う涙は――ヤツの大きな手で、そっと、拭い取られた。
――ああ、成長したなぁ……。
――昔だったら、絶対に、自分の意思を曲げようとしなかったのに――……。
まるで、母親のような感動を覚えてしまうが――それ以上に、うれしかった。
「――……うん……」
江陽の手に頬を寄せ、私は、うなづく。
「――二人で、考えましょう……」
どちらか一方の意思だけは、結婚できないし――してはいけないのだと思う。
お互いに同じ気持ちでなければ、きっと、この先、続いていけない。
「――おう」
江陽は、そっと私の頬を撫で、手を離す。
「……週末、時間取れるか?」
そう尋ねられ、素直にうなづく。
「でもね、江陽。……あせらなくても、もう、離れないから――」
「……羽津紀」
「だから、ゆっくり、考えましょう」
「――……わかった」
江陽を見上げれば、視線は、真っ直ぐに私に向かっていた。
それだけで――信じられてしまうのは、これまで一緒にいた時間の賜物。
――最悪だった記憶しかなかったのに――今は、幼なじみも悪くはないと、思えてしまう。
「羽津紀?」
無意識に上がってしまった口元をうつむいて隠し、私は、ヤツに持っていたバッグを押し付けた。
「え」
「――お弁当。……アンタの分も、作ったから……」
「お、おう。……サンキュ」
そう言って受け取った江陽は、チラリと、隣の部屋に視線を向ける。
「聖、昨日、夕飯作ってたのか?」
「――違うわよ」
「え?」
私は、むずかゆくなる胸を押さえつけ、ヤツに言った。
「……き、昨日……あんなだったから……その……仲直り?……っていうか……」
言っているうちに恥ずかしくなり、口ごもる。
――ああ、もう!こんなの、私じゃないみたい!
けれど、江陽は、再び私を抱き締めると、うれしそうに言った。
「良かった……。――……婚約破棄どころか、別れるとか言い出すかと思った……」
「――……バカね、こうちゃん」
私は、そっとヤツを離し、手を握る。
「――うーちゃん?」
「……マンション出るまで、だから」
すると、江陽は、うれしそうに指を絡める。
そして、ギュっと、力を込めて言った。
「会社まででも良いだろ」
「バッ……恥ずかしいじゃない!」
「既に、いろいろ恥ずかしいと思うけどな」
「自覚があるなら、慎みなさい!」
「嫌だね。――牽制しねぇと、誰に取られるかわからねぇじゃん」
「そんな訳無いでしょうに!」
いつものように口ゲンカ。
――でも、ヤツの表情は、甘くて。
落ち着かない私は、けれど、ヤツと手を繋いだまま、エレベーターに乗り込んだのだった。