大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
「あ、お帰りー、羽津紀ー!」
「聖」
彼女は、部屋から出てくると、目の前の彼に視線を向けた。
「何か話し声がすると思ったら――想兄ちゃん、羽津紀に何かしたの⁉」
「はあぁ?そんな訳無いだろう」
「――え」
――”兄ちゃん”……??
ポカンとしている私に気づいたのか、聖は、笑顔で言った。
「あ、コレ、一番上の兄の想真。想兄ちゃん、こちら、名木沢羽津紀さん。アタシの親友だよ」
「――聖の?」
目を丸くした彼は、それでも、頭を下げてくれた。
「初めまして、久保想真と申します。聖が、いつもお世話になっております」
その礼儀正しい挨拶に、私は、ようやく警戒を解いた。
「初めまして。……名木沢羽津紀です」
お互いに頭を下げ合う。
どうやら、ストーカーという線ではなかったようで、一安心だ。
私は、顔を上げ、彼を見上げる。
よく見たら、聖に負けず劣らずの端正な顔立ち。
そして、目元が、彼女に似ている気がする。
「……もしかして、ストーカーと間違われました?」
すると、直球でそう尋ねられ、私は、身を縮こませた。
「も、申し訳ありません……」
バカ正直に謝ると、彼は口元を上げる。
「――いえ。……聖の事情をご存じなら、親友というのも、納得できます」
「え」
「それに、コイツが、こんな風な態度を取るのなら、気を許しているという証拠なので」
「――ああ」
私は、素直に納得した。
聖の、この甘えたような口調は、ごく一部の気を許した人間か、落とそうとしている男にしかしないのだ。
「そうだ。――コイツに何かあったら、いつでもご連絡ください」
彼は、そう言って、名刺を取り出す。
私は、恐る恐る両手で受け取り――目を見開いた。
――”ワールドスパイス 企画課長 久保想真”。
反射で顔を上げる。
――まさか、ウチのライバル企業とは。
それに気づいたのか、彼は苦笑いで肩をすくめた。
「……聖には、同じような会社はやめろと言ってたのですがね。身内で競合他社だと、いろいろ面倒でしょう?」
「でもー、想兄ちゃんがいろいろ仕事の話してたから、興味が湧いたのー」
「けどなぁ……よりによって、何で、ライバル会社だよ」
「だって、ウチしか、拾ってもらえなかったんだもんー」
二人の間の空気は、確実に身内のそれだ。
私は、ようやく安心できたが――想真さんの肩書に、別の警戒心を持ってしまったのだった。
「聖」
彼女は、部屋から出てくると、目の前の彼に視線を向けた。
「何か話し声がすると思ったら――想兄ちゃん、羽津紀に何かしたの⁉」
「はあぁ?そんな訳無いだろう」
「――え」
――”兄ちゃん”……??
ポカンとしている私に気づいたのか、聖は、笑顔で言った。
「あ、コレ、一番上の兄の想真。想兄ちゃん、こちら、名木沢羽津紀さん。アタシの親友だよ」
「――聖の?」
目を丸くした彼は、それでも、頭を下げてくれた。
「初めまして、久保想真と申します。聖が、いつもお世話になっております」
その礼儀正しい挨拶に、私は、ようやく警戒を解いた。
「初めまして。……名木沢羽津紀です」
お互いに頭を下げ合う。
どうやら、ストーカーという線ではなかったようで、一安心だ。
私は、顔を上げ、彼を見上げる。
よく見たら、聖に負けず劣らずの端正な顔立ち。
そして、目元が、彼女に似ている気がする。
「……もしかして、ストーカーと間違われました?」
すると、直球でそう尋ねられ、私は、身を縮こませた。
「も、申し訳ありません……」
バカ正直に謝ると、彼は口元を上げる。
「――いえ。……聖の事情をご存じなら、親友というのも、納得できます」
「え」
「それに、コイツが、こんな風な態度を取るのなら、気を許しているという証拠なので」
「――ああ」
私は、素直に納得した。
聖の、この甘えたような口調は、ごく一部の気を許した人間か、落とそうとしている男にしかしないのだ。
「そうだ。――コイツに何かあったら、いつでもご連絡ください」
彼は、そう言って、名刺を取り出す。
私は、恐る恐る両手で受け取り――目を見開いた。
――”ワールドスパイス 企画課長 久保想真”。
反射で顔を上げる。
――まさか、ウチのライバル企業とは。
それに気づいたのか、彼は苦笑いで肩をすくめた。
「……聖には、同じような会社はやめろと言ってたのですがね。身内で競合他社だと、いろいろ面倒でしょう?」
「でもー、想兄ちゃんがいろいろ仕事の話してたから、興味が湧いたのー」
「けどなぁ……よりによって、何で、ライバル会社だよ」
「だって、ウチしか、拾ってもらえなかったんだもんー」
二人の間の空気は、確実に身内のそれだ。
私は、ようやく安心できたが――想真さんの肩書に、別の警戒心を持ってしまったのだった。