大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
目の前の老人は――さすがに、巨大グループを作り上げた人物。
圧倒的な威圧感で、私をにらみつけた。
「――誰だ」
「名木沢羽津紀と申します。――江陽さんの、婚約者です」
すると、彼は、鼻で笑う。
「ああ、手切れ金でも、せしめに来たか」
「……は?」
「江陽の嫁は、そちらの叶津氏の孫、妙子さんに決まっている」
そう言って視線を私の後ろに向けた。
つられて振り返れば――振袖姿の、髪を上げた若い女性。
もしかしたら、大学を卒業したばかりか。
どこか幼さを残す彼女は、戸惑ったように私に視線を向けている。
「……あ、あの……もう、結婚は、決まった事だと聞いて……」
恐る恐る尋ねる彼女も、ある意味、被害者か。
「そうだよ、妙子さん。この女は、札束でも持たせて、二度と現れないようにするから、安心して江陽に嫁ぎなさい」
瞬間――完全に、堪忍袋の緒が切れた。
「そんなもん、誰がいるなんて言ったのよ、この化石ジジイ!!!アンタ等、一族揃って、天然記念物にでも登録してもらいなさい!」
私は、叫び終えた後、肩を上下させ、我に返る。
顔を上げれば、真っ赤になって震えている、老人。
それが、怒りによるものなのは、翔陽くんの時に知っている。
どうやら、同じタイプのようだ。
「――う、羽津紀……」
ひきつったような表情で私の元に駆け寄ってくる江陽は――どうやら、笑いをこらえているようだ。
私は、大きく息を吐くと、そっとヤツの手を握り、顔を上げた。
「――失言でしたわね、申し訳ありません。けれど、今の状況は、そう言われても仕方ないのだと、ご理解いただけると幸いですわ」
「――き、貴様……!」
ニコリ、と、笑みを張りつけ、頭を下げると、私は、江陽の手を引き、出入口へと向かう。
「待て!江陽は置いていけ!」
「――いい加減にしてください、叔父さん」
すると、この騒ぎの顛末を見守っていたのか、三ノ宮社長が奥から姿を現す。
「親父」
「――さ、三ノ宮社長」
彼は、ダークスーツに身を包み、同じようなスーツ姿の年配の男性と、大叔父さんと同じような紋付袴に身を包んだ、小柄な老人とともにやってきた。
おそらく――見合い相手の身内か。
「三ノ宮さん、陽平くんに事情は聞きましたよ。今回は、先走り過ぎたようですな」
その老人に言われ、大叔父さんは言葉を失う。
「ウチの可愛い孫娘には、ちゃんと、幸せな結婚をしてもらう予定なのでね。――二番目、三番目など、願い下げですぞ」
「――あ、いえ、叶津さん」
そう言って、彼は、立ち尽くしている孫娘さんの肩を叩いた。
「この話は、無かった事で――良いよな、妙子?」
「あ、え、お、お祖父様……」
そして、私に会釈をすると、そのままレストランを後にして行った。
圧倒的な威圧感で、私をにらみつけた。
「――誰だ」
「名木沢羽津紀と申します。――江陽さんの、婚約者です」
すると、彼は、鼻で笑う。
「ああ、手切れ金でも、せしめに来たか」
「……は?」
「江陽の嫁は、そちらの叶津氏の孫、妙子さんに決まっている」
そう言って視線を私の後ろに向けた。
つられて振り返れば――振袖姿の、髪を上げた若い女性。
もしかしたら、大学を卒業したばかりか。
どこか幼さを残す彼女は、戸惑ったように私に視線を向けている。
「……あ、あの……もう、結婚は、決まった事だと聞いて……」
恐る恐る尋ねる彼女も、ある意味、被害者か。
「そうだよ、妙子さん。この女は、札束でも持たせて、二度と現れないようにするから、安心して江陽に嫁ぎなさい」
瞬間――完全に、堪忍袋の緒が切れた。
「そんなもん、誰がいるなんて言ったのよ、この化石ジジイ!!!アンタ等、一族揃って、天然記念物にでも登録してもらいなさい!」
私は、叫び終えた後、肩を上下させ、我に返る。
顔を上げれば、真っ赤になって震えている、老人。
それが、怒りによるものなのは、翔陽くんの時に知っている。
どうやら、同じタイプのようだ。
「――う、羽津紀……」
ひきつったような表情で私の元に駆け寄ってくる江陽は――どうやら、笑いをこらえているようだ。
私は、大きく息を吐くと、そっとヤツの手を握り、顔を上げた。
「――失言でしたわね、申し訳ありません。けれど、今の状況は、そう言われても仕方ないのだと、ご理解いただけると幸いですわ」
「――き、貴様……!」
ニコリ、と、笑みを張りつけ、頭を下げると、私は、江陽の手を引き、出入口へと向かう。
「待て!江陽は置いていけ!」
「――いい加減にしてください、叔父さん」
すると、この騒ぎの顛末を見守っていたのか、三ノ宮社長が奥から姿を現す。
「親父」
「――さ、三ノ宮社長」
彼は、ダークスーツに身を包み、同じようなスーツ姿の年配の男性と、大叔父さんと同じような紋付袴に身を包んだ、小柄な老人とともにやってきた。
おそらく――見合い相手の身内か。
「三ノ宮さん、陽平くんに事情は聞きましたよ。今回は、先走り過ぎたようですな」
その老人に言われ、大叔父さんは言葉を失う。
「ウチの可愛い孫娘には、ちゃんと、幸せな結婚をしてもらう予定なのでね。――二番目、三番目など、願い下げですぞ」
「――あ、いえ、叶津さん」
そう言って、彼は、立ち尽くしている孫娘さんの肩を叩いた。
「この話は、無かった事で――良いよな、妙子?」
「あ、え、お、お祖父様……」
そして、私に会釈をすると、そのままレストランを後にして行った。