大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
10.過去じゃなくて、未来の事を考えましょう
ホテルを後にした私達は、そのままタクシーで郊外の方へ向かった。
時間にして、約二十分程。
閑静な住宅街の外れ――およそ、日本で一、二を争うような企業の社長が住んでいるようには思えない、ありふれた一軒家に到着した。
「さ、羽津紀ちゃん、上がってちょうだい」
タクシーから降りて、上機嫌に先を行く亜澄さんが、私を手招きする。
私は、それにおずおずとうなづき、彼女の後について行った。
江陽は、私の後に。三ノ宮社長は一番後ろだ。
亜澄さんは、玄関のドアを指でタッチし、鍵が開く。
――やはり、見た目では判断できない。
おそらく、外観よりも、中に重きを置いているのだろう。
そんな事を思っていると、
「ただいま、翔陽、いるんでしょう?」
玄関に入った彼女の第一声に、思わず、ギクリとしてしまう。
そんな私をよそに、あっさりと、彼は二階から顔を出した。
「お帰り、お母さん。上手くいった――……」
そう言いながら階段を下りてきた翔陽くんは、私に視線を向け――目を丸くした。
「ちょっと、翔陽。何、固まっているの。ちゃんとご挨拶なさい」
「え、あ」
「――こ、こんにちは。……お邪魔します……」
動揺が見えた彼に、私は先に挨拶をする。
ささいな事で突っ込まれるのは、ごめんなのだから、できる限り隙を見せないようにしないと。
けれど、彼は、ギョッとして、私を凝視してくる。
――……何か、マズい事、したかしら……。
――いや、この状況自体、既にマズいのか。
すると、不意に、後ろへと江陽に引き寄せられた。
「ちょっ……江陽⁉」
振り返り見上げれば、剣呑な表情で翔陽くんをにらんでいる。
「――翔陽、羽津紀だ。挨拶は」
「――え、あ……ど、うも……」
それだけ言うと、彼は、踵を返し、階段を上って行った。
まるで、人見知りしている子供のよう。
「ごめんなさいね、羽津紀ちゃん。まったく、もう、翔陽にも困ったものね」
「あ、いえ。――大丈夫ですので」
ため息をつく亜澄さんに、私は、慌てて返す。
どれだけ悪態をつかれようが――江陽の弟なのだ。
「気を悪くしないでね。あの子には、ちゃんと言っておくから」
「ありがとうございます……」
あきれ半分に言われ、どう返したらいいのかわからず、取り繕うようにそれだけ返す。
「さ、どうぞ、座ってちょうだい。今、お茶の用意するわね」
亜澄さんは、リビングのドアを開けると、そう言ってキッチンへと向かった。
私は、手伝った方が良いのか迷ったが、
「気にするな。お前は、今、客なんだから座っておけ」
そう、先に座った江陽にうながされたので、うなづいて、ソファに腰を下ろした。
時間にして、約二十分程。
閑静な住宅街の外れ――およそ、日本で一、二を争うような企業の社長が住んでいるようには思えない、ありふれた一軒家に到着した。
「さ、羽津紀ちゃん、上がってちょうだい」
タクシーから降りて、上機嫌に先を行く亜澄さんが、私を手招きする。
私は、それにおずおずとうなづき、彼女の後について行った。
江陽は、私の後に。三ノ宮社長は一番後ろだ。
亜澄さんは、玄関のドアを指でタッチし、鍵が開く。
――やはり、見た目では判断できない。
おそらく、外観よりも、中に重きを置いているのだろう。
そんな事を思っていると、
「ただいま、翔陽、いるんでしょう?」
玄関に入った彼女の第一声に、思わず、ギクリとしてしまう。
そんな私をよそに、あっさりと、彼は二階から顔を出した。
「お帰り、お母さん。上手くいった――……」
そう言いながら階段を下りてきた翔陽くんは、私に視線を向け――目を丸くした。
「ちょっと、翔陽。何、固まっているの。ちゃんとご挨拶なさい」
「え、あ」
「――こ、こんにちは。……お邪魔します……」
動揺が見えた彼に、私は先に挨拶をする。
ささいな事で突っ込まれるのは、ごめんなのだから、できる限り隙を見せないようにしないと。
けれど、彼は、ギョッとして、私を凝視してくる。
――……何か、マズい事、したかしら……。
――いや、この状況自体、既にマズいのか。
すると、不意に、後ろへと江陽に引き寄せられた。
「ちょっ……江陽⁉」
振り返り見上げれば、剣呑な表情で翔陽くんをにらんでいる。
「――翔陽、羽津紀だ。挨拶は」
「――え、あ……ど、うも……」
それだけ言うと、彼は、踵を返し、階段を上って行った。
まるで、人見知りしている子供のよう。
「ごめんなさいね、羽津紀ちゃん。まったく、もう、翔陽にも困ったものね」
「あ、いえ。――大丈夫ですので」
ため息をつく亜澄さんに、私は、慌てて返す。
どれだけ悪態をつかれようが――江陽の弟なのだ。
「気を悪くしないでね。あの子には、ちゃんと言っておくから」
「ありがとうございます……」
あきれ半分に言われ、どう返したらいいのかわからず、取り繕うようにそれだけ返す。
「さ、どうぞ、座ってちょうだい。今、お茶の用意するわね」
亜澄さんは、リビングのドアを開けると、そう言ってキッチンへと向かった。
私は、手伝った方が良いのか迷ったが、
「気にするな。お前は、今、客なんだから座っておけ」
そう、先に座った江陽にうながされたので、うなづいて、ソファに腰を下ろした。