大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
それからは、亜澄さんが、明るい話題を振ってくれ、あまり深刻にならずに済んだ。
気がつけば、紅茶はお代わりしてしまったし、緊張はしていたけれど、彼女と話すのは楽しかった。
――まるで、年の離れた姉のような彼女が、義理の母親になるのなら、悪くないと思うほどには。
何せ、実の母親は、世間一般の、いわゆる”おばさん”像を凝縮したような人間なのだ。
良くも悪くも、正反対のような二人だから、これまで交流し続けられたのだろうか。
「ああ、そうだ、羽津紀ちゃん。今度、紀子さんのご都合確認していただけるかしら」
「え」
「もう、顔合わせくらい、してしまいましょうよ。私は、羽津紀ちゃんのご家族にはお会いしてるけれど、江陽は、ちゃんと挨拶したの?」
「え、あ……」
私は、気まずくなり、チラリと隣の江陽を見上げる。
すると、ヤツは、大きく息を吐くと亜澄さんに言った。
「あのなぁ……もう、とっくに、してンだけど」
「えぇ⁉そうなの、羽津紀ちゃん⁉」
私は、気恥ずかしくなりながらも、うなづく。
――それは、江陽と付き合い始めて、一か月もしないほどの頃。
もう、既に結婚を視野に入れていたヤツは、あっさりと、ウチの敷居をまたいでいた。
その前に、だまし討ちのようなお見合いで、母親と顔を合わせていたから、ハードルが下がったのだろうか。
妹二人がいる時を見計らって、ちゃっかりと挨拶に来たのだ。
――……あの時の、二人の、驚いた後に向けてきた生温かい視線は、今思い出しても腹が立つ。
「……まあ、そういうコトだけど……家族同士は、まだだからな。もう、進められるところは、進めておくか」
そう言って、江陽は、私を見やる。
「――……あ、え、ええ……」
その言葉に――心からは、うなづく事ができなかった。
それから、江陽の実家を後にした私は、ヤツの車で、速攻、ホテルに連行された。
――ラブ、のつく方の、ホテルに。
中に入ると、江陽は、大きなベッドに、ドカリ、と、腰を下ろした。
そして、ジロリ、と、私を見上げる。
「……な、何よ……」
「……何だよ、そのカッコ」
「は?」
唐突に言いがかりをつけられ、眉を寄せて返す。
――また、一体、何を言い出した、コイツは。
すると、無言で手招きされ、渋々ながらヤツの元に行くと、力任せに引き寄せられた。
「きゃあっ⁉」
あっさりと倒れ込んでしまった私を、江陽は、簡単に抱き留める。
そして、私の胸に顔をうずめた。
「ちょっ……江陽?!」
「……こんなカッコ、翔陽に見せんじゃねぇよ」
「……は??」
私は、ヤツを引きはがそうとするが、力では勝てない。
仕方なく視線だけを向けた。
「……悪かったわね、見苦しいモノ見せて」
――これでも、自分では頑張った方なのに。
心の中でぼやくと、江陽は、ポツリと言った。
「違ぇよ」
「……じゃあ、何なのよ」
ヤツは、一瞬だけ口ごもるが、あきらめたように続けた。
「……翔陽、見惚れてただろ」
「はぁあ???」
私は、あきれ返ってしまった。
惚れた欲目、とでも言うものだろう。
どこをどうしたら、そんな風に思えるのだ。
けれど、江陽は、拗ねたよう言う。
「いい加減、自覚しろ。――お前、結構な美人だぞ」
「――あのねぇ……そういう言葉は、聖のような女性に言うものでしょうに」
すると、ヤツは顔を上げ、至近距離まで、その無駄に端正な顔を近づけた。
「……な、何よ」
「羽津紀の方がキレイだ」
「――……っ……⁉」
真っ直ぐに見つめられ――そんな歯の浮くようなセリフを言われ、頭が茹る。
「なっ、なっ……バ、バッカじゃないの?!」
「照れてんのかよ」
「うるさい!」
図星――なのだろうか。
もう、自分でも、何で怒っているのか、わからない。
江陽は、そんな私を、楽しそうに見やり、軽くキスをしてくる。
「……可愛い」
「バカ」
「――オレにとっては、うーちゃんは、一番キレイだし、可愛いぞ」
「……っ……」
そんな事は無い、と、言いたかったが――反論は、きれいさっぱり、江陽に吸い取られてしまった。
気がつけば、紅茶はお代わりしてしまったし、緊張はしていたけれど、彼女と話すのは楽しかった。
――まるで、年の離れた姉のような彼女が、義理の母親になるのなら、悪くないと思うほどには。
何せ、実の母親は、世間一般の、いわゆる”おばさん”像を凝縮したような人間なのだ。
良くも悪くも、正反対のような二人だから、これまで交流し続けられたのだろうか。
「ああ、そうだ、羽津紀ちゃん。今度、紀子さんのご都合確認していただけるかしら」
「え」
「もう、顔合わせくらい、してしまいましょうよ。私は、羽津紀ちゃんのご家族にはお会いしてるけれど、江陽は、ちゃんと挨拶したの?」
「え、あ……」
私は、気まずくなり、チラリと隣の江陽を見上げる。
すると、ヤツは、大きく息を吐くと亜澄さんに言った。
「あのなぁ……もう、とっくに、してンだけど」
「えぇ⁉そうなの、羽津紀ちゃん⁉」
私は、気恥ずかしくなりながらも、うなづく。
――それは、江陽と付き合い始めて、一か月もしないほどの頃。
もう、既に結婚を視野に入れていたヤツは、あっさりと、ウチの敷居をまたいでいた。
その前に、だまし討ちのようなお見合いで、母親と顔を合わせていたから、ハードルが下がったのだろうか。
妹二人がいる時を見計らって、ちゃっかりと挨拶に来たのだ。
――……あの時の、二人の、驚いた後に向けてきた生温かい視線は、今思い出しても腹が立つ。
「……まあ、そういうコトだけど……家族同士は、まだだからな。もう、進められるところは、進めておくか」
そう言って、江陽は、私を見やる。
「――……あ、え、ええ……」
その言葉に――心からは、うなづく事ができなかった。
それから、江陽の実家を後にした私は、ヤツの車で、速攻、ホテルに連行された。
――ラブ、のつく方の、ホテルに。
中に入ると、江陽は、大きなベッドに、ドカリ、と、腰を下ろした。
そして、ジロリ、と、私を見上げる。
「……な、何よ……」
「……何だよ、そのカッコ」
「は?」
唐突に言いがかりをつけられ、眉を寄せて返す。
――また、一体、何を言い出した、コイツは。
すると、無言で手招きされ、渋々ながらヤツの元に行くと、力任せに引き寄せられた。
「きゃあっ⁉」
あっさりと倒れ込んでしまった私を、江陽は、簡単に抱き留める。
そして、私の胸に顔をうずめた。
「ちょっ……江陽?!」
「……こんなカッコ、翔陽に見せんじゃねぇよ」
「……は??」
私は、ヤツを引きはがそうとするが、力では勝てない。
仕方なく視線だけを向けた。
「……悪かったわね、見苦しいモノ見せて」
――これでも、自分では頑張った方なのに。
心の中でぼやくと、江陽は、ポツリと言った。
「違ぇよ」
「……じゃあ、何なのよ」
ヤツは、一瞬だけ口ごもるが、あきらめたように続けた。
「……翔陽、見惚れてただろ」
「はぁあ???」
私は、あきれ返ってしまった。
惚れた欲目、とでも言うものだろう。
どこをどうしたら、そんな風に思えるのだ。
けれど、江陽は、拗ねたよう言う。
「いい加減、自覚しろ。――お前、結構な美人だぞ」
「――あのねぇ……そういう言葉は、聖のような女性に言うものでしょうに」
すると、ヤツは顔を上げ、至近距離まで、その無駄に端正な顔を近づけた。
「……な、何よ」
「羽津紀の方がキレイだ」
「――……っ……⁉」
真っ直ぐに見つめられ――そんな歯の浮くようなセリフを言われ、頭が茹る。
「なっ、なっ……バ、バッカじゃないの?!」
「照れてんのかよ」
「うるさい!」
図星――なのだろうか。
もう、自分でも、何で怒っているのか、わからない。
江陽は、そんな私を、楽しそうに見やり、軽くキスをしてくる。
「……可愛い」
「バカ」
「――オレにとっては、うーちゃんは、一番キレイだし、可愛いぞ」
「……っ……」
そんな事は無い、と、言いたかったが――反論は、きれいさっぱり、江陽に吸い取られてしまった。