大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
気が遠くなるほどに抱き合って、意識が遠のきそうになってしまうのを、どうにか耐える。
――江陽とは、まだ、いろいろ話さなきゃならない事が、たくさんあるのだ。
「うーちゃん?眠いなら、寝ていいんだぞ?」
「……嫌よ。……ちゃんと、アンタと話すって、決めてたのに……」
「え」
隣で横になっていた江陽は、私をのぞき込む。
「何をだよ」
「……結婚の事」
「――……ああ、そうだよな」
「……今、思い出したようにうなづかないで。……忘れてたでしょ」
眉を寄せ、ヤツをにらめば、視線をさまよわせている。
「だから、バレバレよ」
「……悪ぃ……。……いや、昨日まで――今朝までは、ちゃんと覚えていたぞ?」
「お見合いで、全部吹っ飛んだワケ」
「……っ……」
図星だったのか、ヤツは黙り込む。
けれど、私を抱き寄せると、髪に顔をうずめて言った。
「――……ちゃんと、考える」
「……そのつもりよ」
「――……でも、悪い」
「え?」
私が目を丸くすると同時に、ヤツは、覆いかぶさってくる。
「こ、江陽?」
「――足りねぇ」
「江陽!」
「考えるのは――後にしようぜ」
「バカ!」
私の抗議も空しく、江陽は、再び、私の身体をまさぐり始め――結局、気がつけば、ベッドの時計は、朝の八時を表示していたのだった――。
大した話もできないままにホテルを後にすると、江陽は、当然のようにデートコースに移ろうとした。
「ひとまず、どっかでメシにしようぜ」
車を走らせながら言うヤツを、私は、ジロリ、と、見やる。
「あのね、江陽。――……私達、今、普通にデートしている場合じゃないと思うのだけれど」
「……わかってる」
「じゃあ――」
「でもよ、コレで、オレ達が、いわゆる”普通の”結婚しないと、大叔父さんに付け入る隙を与えると思わねぇ?」
私は、一瞬、口ごもる。
――江陽の言いたい事も、わかる。
少しでもイレギュラーが入れば、そこから、横槍が入るに決まっている。
昨日、初めて会ったばかりだけれど、あの老人が、目を光らせているだろう事は、簡単に想像がつくのだ。
「……でも……だからって、私が仕事を辞める選択は無いわよ」
「それも、わかってる。――……羽津紀には、オレよりも大事なものは、いっぱいあるだろうしな」
江陽は、少しだけ拗ねたように言うと、通り沿いに見えたファミレスに車を停めた。
「拗ねないでよ、江陽」
「――拗ねたくもなるだろ。……オレは、羽津紀が最優先なのに、お前は、仕事や――それこそ、聖の方が大事なんだろ」
私は、そう言ってシートベルトを外そうとする江陽の手に、自分の手をそっと重ねた。
「羽津紀」
「……ごめんなさい……。でも、私にとって、それは、今まで手に入れたくても、入らなかったものなの」
「――……オレのせいで、な」
その言葉に、反射的に顔を上げた。
視界に入った江陽は、少しだけ、さみしそうで。
「……江陽」
「――……ガキだったから、しょうがない、で、済ませるつもりは無ぇよ。……ただ……あの頃は、今よりもオレの世界は、お前だけだったから――」
私は、重ねていた手を、そっと握った。
「――……昔の事でしょう」
「でも」
「江陽」
引き下がろうとしているヤツを、私は、真っ直ぐに見つめる。
「アンタと付き合う前に、昔の事は、手打ちにしたじゃない。それを、今さら、掘り起こさないで。――それとも、アンタは、贖罪のために私と付き合ってるの?」
「ンな訳無ぇだろ!」
条件反射のように叫ぶヤツは――真っ直ぐ、私と視線を合わせている。
それだけで、ウソではないと思えるのだ。
「――なら、過去じゃなくて、未来の事を考えましょう。……こうちゃんは、考えたくないの?」
「……っ……」
息をのむ江陽の顔は、一瞬にして、真っ赤だ。
「……お、前……なぁ……」
「何よ」
「ズルい」
「何がよ」
「……ンな、可愛い顔して、可愛いく聞くんじゃねぇよ」
ふてくされながら言うヤツに、私は、思い切り眉を寄せて言った。
「……アンタ、いつも思うけど――視力、大丈夫?」
――江陽とは、まだ、いろいろ話さなきゃならない事が、たくさんあるのだ。
「うーちゃん?眠いなら、寝ていいんだぞ?」
「……嫌よ。……ちゃんと、アンタと話すって、決めてたのに……」
「え」
隣で横になっていた江陽は、私をのぞき込む。
「何をだよ」
「……結婚の事」
「――……ああ、そうだよな」
「……今、思い出したようにうなづかないで。……忘れてたでしょ」
眉を寄せ、ヤツをにらめば、視線をさまよわせている。
「だから、バレバレよ」
「……悪ぃ……。……いや、昨日まで――今朝までは、ちゃんと覚えていたぞ?」
「お見合いで、全部吹っ飛んだワケ」
「……っ……」
図星だったのか、ヤツは黙り込む。
けれど、私を抱き寄せると、髪に顔をうずめて言った。
「――……ちゃんと、考える」
「……そのつもりよ」
「――……でも、悪い」
「え?」
私が目を丸くすると同時に、ヤツは、覆いかぶさってくる。
「こ、江陽?」
「――足りねぇ」
「江陽!」
「考えるのは――後にしようぜ」
「バカ!」
私の抗議も空しく、江陽は、再び、私の身体をまさぐり始め――結局、気がつけば、ベッドの時計は、朝の八時を表示していたのだった――。
大した話もできないままにホテルを後にすると、江陽は、当然のようにデートコースに移ろうとした。
「ひとまず、どっかでメシにしようぜ」
車を走らせながら言うヤツを、私は、ジロリ、と、見やる。
「あのね、江陽。――……私達、今、普通にデートしている場合じゃないと思うのだけれど」
「……わかってる」
「じゃあ――」
「でもよ、コレで、オレ達が、いわゆる”普通の”結婚しないと、大叔父さんに付け入る隙を与えると思わねぇ?」
私は、一瞬、口ごもる。
――江陽の言いたい事も、わかる。
少しでもイレギュラーが入れば、そこから、横槍が入るに決まっている。
昨日、初めて会ったばかりだけれど、あの老人が、目を光らせているだろう事は、簡単に想像がつくのだ。
「……でも……だからって、私が仕事を辞める選択は無いわよ」
「それも、わかってる。――……羽津紀には、オレよりも大事なものは、いっぱいあるだろうしな」
江陽は、少しだけ拗ねたように言うと、通り沿いに見えたファミレスに車を停めた。
「拗ねないでよ、江陽」
「――拗ねたくもなるだろ。……オレは、羽津紀が最優先なのに、お前は、仕事や――それこそ、聖の方が大事なんだろ」
私は、そう言ってシートベルトを外そうとする江陽の手に、自分の手をそっと重ねた。
「羽津紀」
「……ごめんなさい……。でも、私にとって、それは、今まで手に入れたくても、入らなかったものなの」
「――……オレのせいで、な」
その言葉に、反射的に顔を上げた。
視界に入った江陽は、少しだけ、さみしそうで。
「……江陽」
「――……ガキだったから、しょうがない、で、済ませるつもりは無ぇよ。……ただ……あの頃は、今よりもオレの世界は、お前だけだったから――」
私は、重ねていた手を、そっと握った。
「――……昔の事でしょう」
「でも」
「江陽」
引き下がろうとしているヤツを、私は、真っ直ぐに見つめる。
「アンタと付き合う前に、昔の事は、手打ちにしたじゃない。それを、今さら、掘り起こさないで。――それとも、アンタは、贖罪のために私と付き合ってるの?」
「ンな訳無ぇだろ!」
条件反射のように叫ぶヤツは――真っ直ぐ、私と視線を合わせている。
それだけで、ウソではないと思えるのだ。
「――なら、過去じゃなくて、未来の事を考えましょう。……こうちゃんは、考えたくないの?」
「……っ……」
息をのむ江陽の顔は、一瞬にして、真っ赤だ。
「……お、前……なぁ……」
「何よ」
「ズルい」
「何がよ」
「……ンな、可愛い顔して、可愛いく聞くんじゃねぇよ」
ふてくされながら言うヤツに、私は、思い切り眉を寄せて言った。
「……アンタ、いつも思うけど――視力、大丈夫?」