大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
車に乗り込むと、江陽は、デートコースに割と組み込まれている、海浜公園へと向かった。
今の私達には、完全に二人きりになれるのは、車かホテルくらいしか無いのだ。
やはり、こちらも日曜の真っ昼間という事もあって、駐車スペースを探すのに時間がかかるほどには、込み合っていた。
そんな中、ようやく、広い駐車場の片隅にスペースを見つけ、江陽は車を停める。
「何か飲むか」
「――今はいいわ」
首を振って返すと、江陽は、シートベルトを外し、座席に背を預け、大きく息を吐いた。
「……疲れた?」
「いや、まあ――ただ、いろいろあり過ぎてな」
「それもそうね」
「――こういう時、二人で、同じ部屋に帰って、気兼ねなく過ごしてぇって思う」
不意打ちの言葉に、私は、口を閉じる。
――……私だって、思わないでもない。
帰る場所が一緒なら――デートが終わって一人になる、あの、さみしさは――少なくとも、無くなるだろう。
江陽の言う事もわかるし……同じ気持ちでもある。
――でも。
心のどこかに、まだ、引っかかっているのだ。
――ヤツの環境や、仕事の事。
――結婚する事で変わってしまう、いろいろ。
それを、受け入れる事が、私にできるのだろうか。
「羽津紀?」
「え、あ……」
顔を上げ、自分がうつむいていた事に気がついた。
私を見る江陽の表情は、曇っている。
そんな顔をさせたい訳ではない。
――でも、やっぱり、ウソはつけないのだ。
「羽津紀、どうかし――」
ヤツの言葉を遮るように、私は、口を開いた。
「……ごめんなさい。……まだ……何の気兼ねもなく、アンタと結婚する気持ちにはなれない……」
「――羽津紀」
傷つけているのは、重々承知だ。
私は、激痛が走る胸を押さえつけ、ヤツを見上げる。
「……アンタと別れたい訳じゃないのよ」
「――……ああ」
少しだけ、ホッとした江陽の空気に、涙が浮かぶ。
――こんな事を言っても、まだ、私を好きでいてくれるという安心感と、こんな事を言ってしまったという罪悪感。
ヤツは、そっと、私の頬に触れた。
「……なら、良い」
そう告げると、優しく涙を拭った。
私は、目を閉じ、その温もりを感じる。
――甘えているのは、わかっている。
それでも――胸にしこりを残したまま、先に進みたくはないのだ。
「――……ねえ、江陽……。……結婚しなきゃ、ずっと、一緒にいられないの……?」
ポツリと零れた言葉。
江陽に答えを投げるのは違うと、わかっている。
――でも、聞かずには、いられなかった。
すると、ヤツは、そっと私の手を握り、泣きそうな表情で――微笑んだ。
「……江陽?」
「――……じゃあ……羽津紀が納得できるまで――保留にするか?」
「こ……」
思わぬ言葉に、私は動揺する。
――そんな表情で、そんな悲しそうな声で――そんな事を言わせたい訳じゃないのに。
「オレ、少しは成長したと思ってるからな」
「え?」
「……自分の事だけしか見えてなかった、ガキの頃とは違う。――ちゃんと……お前の気持ち、大事にしてぇ」
「……こ……よ……」
その言葉に、胸が詰まる。
「――……あ、りが、と……。――……こう……ちゃん……」
私は、涙が止まるまでの間、ずっと、江陽の手の温もりを感じていた。
今の私達には、完全に二人きりになれるのは、車かホテルくらいしか無いのだ。
やはり、こちらも日曜の真っ昼間という事もあって、駐車スペースを探すのに時間がかかるほどには、込み合っていた。
そんな中、ようやく、広い駐車場の片隅にスペースを見つけ、江陽は車を停める。
「何か飲むか」
「――今はいいわ」
首を振って返すと、江陽は、シートベルトを外し、座席に背を預け、大きく息を吐いた。
「……疲れた?」
「いや、まあ――ただ、いろいろあり過ぎてな」
「それもそうね」
「――こういう時、二人で、同じ部屋に帰って、気兼ねなく過ごしてぇって思う」
不意打ちの言葉に、私は、口を閉じる。
――……私だって、思わないでもない。
帰る場所が一緒なら――デートが終わって一人になる、あの、さみしさは――少なくとも、無くなるだろう。
江陽の言う事もわかるし……同じ気持ちでもある。
――でも。
心のどこかに、まだ、引っかかっているのだ。
――ヤツの環境や、仕事の事。
――結婚する事で変わってしまう、いろいろ。
それを、受け入れる事が、私にできるのだろうか。
「羽津紀?」
「え、あ……」
顔を上げ、自分がうつむいていた事に気がついた。
私を見る江陽の表情は、曇っている。
そんな顔をさせたい訳ではない。
――でも、やっぱり、ウソはつけないのだ。
「羽津紀、どうかし――」
ヤツの言葉を遮るように、私は、口を開いた。
「……ごめんなさい。……まだ……何の気兼ねもなく、アンタと結婚する気持ちにはなれない……」
「――羽津紀」
傷つけているのは、重々承知だ。
私は、激痛が走る胸を押さえつけ、ヤツを見上げる。
「……アンタと別れたい訳じゃないのよ」
「――……ああ」
少しだけ、ホッとした江陽の空気に、涙が浮かぶ。
――こんな事を言っても、まだ、私を好きでいてくれるという安心感と、こんな事を言ってしまったという罪悪感。
ヤツは、そっと、私の頬に触れた。
「……なら、良い」
そう告げると、優しく涙を拭った。
私は、目を閉じ、その温もりを感じる。
――甘えているのは、わかっている。
それでも――胸にしこりを残したまま、先に進みたくはないのだ。
「――……ねえ、江陽……。……結婚しなきゃ、ずっと、一緒にいられないの……?」
ポツリと零れた言葉。
江陽に答えを投げるのは違うと、わかっている。
――でも、聞かずには、いられなかった。
すると、ヤツは、そっと私の手を握り、泣きそうな表情で――微笑んだ。
「……江陽?」
「――……じゃあ……羽津紀が納得できるまで――保留にするか?」
「こ……」
思わぬ言葉に、私は動揺する。
――そんな表情で、そんな悲しそうな声で――そんな事を言わせたい訳じゃないのに。
「オレ、少しは成長したと思ってるからな」
「え?」
「……自分の事だけしか見えてなかった、ガキの頃とは違う。――ちゃんと……お前の気持ち、大事にしてぇ」
「……こ……よ……」
その言葉に、胸が詰まる。
「――……あ、りが、と……。――……こう……ちゃん……」
私は、涙が止まるまでの間、ずっと、江陽の手の温もりを感じていた。