大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
「オレさ、聖ちゃんみたいに、きょうだい多いんだよね」
「え」
「オレ、弟、弟、妹、妹――あと、双子の姉妹」
「――……そ、それは、また……」
指折り数えながら言う彼に、どう反応していいのやら。
けれど、ご両親は、さぞかし大変な思いで育てられたのだろう。
それだけは、想像がつく。
「まあ、そういう訳で――自分で言うのもなんだけど、面倒見は良いと思うんだ。江陽も、その延長っていうか」
「――そう、ですか……」
「アイツ、初めて会った時から、女の子に告白されててさぁ……その度に、ずっと好きなコがいるって、断ってたんだよね」
すると、話題がこちらに戻って来て、私は、グラスを持ったまま固まってしまう。
「……そ、う、ですか……」
「うん。あんまりにも言うモンだから、てっきり、断る常套句だと思って、いつだったか聞いたんだよ。――好きな子なんて、本当はいないんだよな、って」
楠川さんは、再びグラスのアルコールを飲み干すと、楽しそうに笑った。
「そしたらさ、何て言ったと思う?」
「――……さあ……」
「生まれた時から、その子しか、好きじゃない。――ガキだったから、迷惑かけてばっかりだったし、嫌われてるけど――いつか、必ず会いに行く、って――……そう、言ってたんだよね……」
彼は、グラスの水滴を指で拭うと、ジッと見つめる。
――そこに映るのは――昔か、今か。
「……なのにさ、何で、アイツの純愛、みんなでぶち壊すようなマネしてくれるんだろうね……」
その、独り言のような言葉に、私は、気まずさを覚え、視線を下げた。
――これまでの江陽の姿が垣間見え……罪悪感が募ってしまう。
けれど、その頃の私は、男嫌いが高じて、女子高へ通っている真っ最中。
更に言えば――アイツへの恨みは募りに募って、たまに母親がヤツの名を口にすると、火が付いたように怒り出すほどだった。
アイツにとって、純愛というものでも――私には、トラウマにしかならなかったもの。
ようやく、それを乗り越えて、自分の気持ちがハッキリとした矢先に、この騒ぎだ。
楠川さんでなくとも、グチのひとつも言いたくなる。
「でもさ、ようやく、羽津紀さんと再会えて、付き合えるようになって――アイツ、舞い上がってたよ」
「そ、そう、ですか……」
「だから――何があっても、アイツの気持ちを疑わないでほしいな」
「――わかってます」
反射的に言い返した私を、楠川さんは、目を丸くして見てきた。
それに気づき――自分が言った言葉の意味を理解し、急に恥ずかしくなってしまう。
「――そっか。……なら、心配いらない、かな?」
「……ええ……。――気を遣わせてしまって、申し訳ありません」
大体、問題なのは、江陽ではなく――私自身の、気持ちなのだ。
けれど、それを彼に言うのは、違う。
私は、残っていたサラダを片づけ、彼は、空いた皿をまとめ始めた。
そして、二人揃って、チラリと聖を見やると、イスに座ったまま、半分夢の中のよう。
「……送って行こうか?」
「……お願いします……」
私では、到底、彼女を抱えて歩くのは無理だ。
苦笑いでうなづく楠川さんに、私は、頭を下げたのだった。
「え」
「オレ、弟、弟、妹、妹――あと、双子の姉妹」
「――……そ、それは、また……」
指折り数えながら言う彼に、どう反応していいのやら。
けれど、ご両親は、さぞかし大変な思いで育てられたのだろう。
それだけは、想像がつく。
「まあ、そういう訳で――自分で言うのもなんだけど、面倒見は良いと思うんだ。江陽も、その延長っていうか」
「――そう、ですか……」
「アイツ、初めて会った時から、女の子に告白されててさぁ……その度に、ずっと好きなコがいるって、断ってたんだよね」
すると、話題がこちらに戻って来て、私は、グラスを持ったまま固まってしまう。
「……そ、う、ですか……」
「うん。あんまりにも言うモンだから、てっきり、断る常套句だと思って、いつだったか聞いたんだよ。――好きな子なんて、本当はいないんだよな、って」
楠川さんは、再びグラスのアルコールを飲み干すと、楽しそうに笑った。
「そしたらさ、何て言ったと思う?」
「――……さあ……」
「生まれた時から、その子しか、好きじゃない。――ガキだったから、迷惑かけてばっかりだったし、嫌われてるけど――いつか、必ず会いに行く、って――……そう、言ってたんだよね……」
彼は、グラスの水滴を指で拭うと、ジッと見つめる。
――そこに映るのは――昔か、今か。
「……なのにさ、何で、アイツの純愛、みんなでぶち壊すようなマネしてくれるんだろうね……」
その、独り言のような言葉に、私は、気まずさを覚え、視線を下げた。
――これまでの江陽の姿が垣間見え……罪悪感が募ってしまう。
けれど、その頃の私は、男嫌いが高じて、女子高へ通っている真っ最中。
更に言えば――アイツへの恨みは募りに募って、たまに母親がヤツの名を口にすると、火が付いたように怒り出すほどだった。
アイツにとって、純愛というものでも――私には、トラウマにしかならなかったもの。
ようやく、それを乗り越えて、自分の気持ちがハッキリとした矢先に、この騒ぎだ。
楠川さんでなくとも、グチのひとつも言いたくなる。
「でもさ、ようやく、羽津紀さんと再会えて、付き合えるようになって――アイツ、舞い上がってたよ」
「そ、そう、ですか……」
「だから――何があっても、アイツの気持ちを疑わないでほしいな」
「――わかってます」
反射的に言い返した私を、楠川さんは、目を丸くして見てきた。
それに気づき――自分が言った言葉の意味を理解し、急に恥ずかしくなってしまう。
「――そっか。……なら、心配いらない、かな?」
「……ええ……。――気を遣わせてしまって、申し訳ありません」
大体、問題なのは、江陽ではなく――私自身の、気持ちなのだ。
けれど、それを彼に言うのは、違う。
私は、残っていたサラダを片づけ、彼は、空いた皿をまとめ始めた。
そして、二人揃って、チラリと聖を見やると、イスに座ったまま、半分夢の中のよう。
「……送って行こうか?」
「……お願いします……」
私では、到底、彼女を抱えて歩くのは無理だ。
苦笑いでうなづく楠川さんに、私は、頭を下げたのだった。