大嫌い同士の大恋愛     ー結婚狂騒曲ー
 翌朝、ぼんやりと覚醒していくと、いつもの天井に違和感。

 ――ああ、そうだった。

 聖の部屋だ、ここは。

 私は、起き上がると、視線を下げる。
 彼女は、割と、寝相が悪い。
 隣で、半分布団から出ている聖は、未だ夢の中だ。

 ――まったく、本当に、妹のよう。

 あきれながら、彼女に布団をかけると、うーん、と、可愛い唸り声が聞こえた。

「聖、起きた?朝よ?」

「んー……」

 ぼうっとしながら、ゆっくりと起き上がった聖は、キョロキョロと部屋を見回す。
 そして、私を認識すると、はああ、と、大きく息を吐いた。

「ごっ……めーん……。……やっちゃった……?」

「アンタにしては、珍しく、完全なる酔っ払いだったわよ?帰り、楠川さんに抱えてもらって来たんだからね」

「ホントにー……⁉あー……楠川クンに悪いコトしたなー……」

 再びため息をつくと、聖は、眉を寄せる。
 二日酔いだろうか。
 だが、キョロキョロした彼女は、私を見て尋ねた。
「……アタシの部屋?」
 それもそう。
 聖が酔っぱらった時は、私の部屋に泊まるのが、いつものルート。
 私は、思い出し、彼女に告げた。
「ああ、想真さんが、ちょうどアンタの部屋に来てたトコで、鉢合わせたのよ」
「え」
「それで、部屋に運んでもらって、私がこちらに泊まる事にしたの」
 説明し終えると、聖は、我に返り部屋を見回す。
「聖?」
「想兄ちゃん――何か、言ってた?」
「え?」
「お見合い写真、置いていってない?!」
「ちょっと、聖、どういう事?」
 慌てる彼女をなだめようと、私は、肩を掴む。
 けれど、その険しい表情に、目を丸くした。
「聖……?」
「……想兄ちゃん、一度言い出すと、頑固なの……」
「――えっと……?」
 まるで、自分の事を言われているようで、ドキリ、と、してしまった。
「お見合い断ったけど……相手が気に入らなかっただけだと思ってるみたいで……」
「――もしかして、また、持って来たの……?」
「うん、一昨日の午前中、羽津紀が出てる時にねー……。また、突き返したんだけど……納得してないみたいだったから……」
 ――そうか。だから、ストレス発散のような飲み方になってしまったのか。
「いえ、私が見た時は、何も持ってられなかったわよ」
「……そう……」
 聖は、ゆっくりと立ち上がると、テーブルに置いたスマホを確認。
 そして、眉間のシワを深くした。

「……昨日は、持ち帰ったんだって……。また、来るって……」

「……それは……」

 私には、口の挟めない事。
 家族には、家族にしかわからない事もあるのだから。

「やだー、見捨てないでよ、羽津紀ー!」
 すると、聖が、半泣きで抱き着いてくる。
 私は、なだめるように、背中を撫でた。

「大丈夫よ、何があっても、私はアンタの味方よ」

「じゃあ、想兄ちゃん説得するの、手伝ってー!」

「え」

 聖の申し出に、思わず固まる。
 ――あの彼を……説得……?
 頑固、と、聖が言ったように、見た感じ、かなり、意志が強そうだった。

「お願い、羽津紀ー!」

 けれど、聖の必死なお願いに、私は、引きつりながらも、うなづいたのだった。
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