大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
私は、恐る恐る、聖を抱えている想真さんを見上げる。
けれど、彼の表情からは、特に負の感情は見受けられず、ひとまず胸を撫で下ろした。
「名木沢さん、申し訳ありませんが、聖の部屋の鍵はわかりますか」
「え、あ、ハイ――お待ちください」
まるで、仕事のような言い方になってしまうが、大きなくくりで言えば、この人も同業だ。
うなづいた私は、手に持っていた聖のバッグの外ポケットから、部屋の鍵を取り出し、そのままドアを開けた。
「ありがとうございます。――相当、親しいんですね」
「え、あ。……ええ、まあ……彼女には、自分がつぶれた時には、鍵を開けるように頼まれておりますので」
「そうでしたか。ありがとうございます」
彼は、私が開けたドアを通り、リビングの方へ聖を運ぶと、そのまま下ろす。
平衡感覚の無い彼女は、パタリ、と、横に倒れた。
「おい、聖!」
「――んー……?」
「あの……こんな風になると、たぶん、朝まで起きませんよ」
「――……え」
ギョッとして、想真さんは、私を振り返った。
「なので、そういう時は、いつも私の部屋に泊めているんです」
「……重ね重ね、妹が、申し訳ありません……」
あきれ返ったように、彼はそう言って、頭を下げる。
「いえ、私も、聖――さんには、お世話になりっぱなしなので……」
「ああ、呼び捨てで良いですよ。聖がそう呼ばせているのなら、構いませんから」
何だか、言葉の端々に、これまで彼女が遭遇したいろいろが感じ取られ、眉を下げる。
「――大変、でしたでしょう」
思わず口にした言葉に、彼は、眉を寄せ、聞き返した。
「――それは、どういう意味で?」
「……いえ、聖から、昔からいろいろと面倒事に巻き込まれていたと、聞いていたので……」
その彼女についていてくれたのが――この方なのだ。
彼は、合点がいったのか、うなづいてくれた。
「そこまで、ご存じでしたか。――まあ、欲目ですが、妹達の中でコイツが一番美人なんで……」
「いえ、誰が見ても、聖は美人ですよ。……でも、だからこそ、辛い事もあったと」
「――ありがとうございます。……そう言っていただけると、少しは報われます」
想真さんは、聖を見やり、立ち上がる。
その高さは、私が、顔を垂直に上げなければいけない程。
そんな彼は、こちらを見下ろし、微笑んだ。
さすがに、聖のお兄さん。どんな表情でも、イケメンは崩れない。
「――でも、名木沢さんも、お綺麗ですよ?」
「へ?」
だが、唐突に、そんな言葉を投げかけられ、私は、完全に硬直。
対する彼は平然と頭を下げると、聖をよろしくお願いします、と、部屋を後にした。
――ああ、もう、社交辞令にも程がある!
――聖には悪いけれど――女慣れしていない?
私は、憤りながらも、ゴロゴロと寝ぼけ半分に転がっている聖に、ベッドルームから持って来た布団を敷き、どうにか彼女を滑り込ませる。
「もう……メイク落としは、明日。――ていうか、全部明日よ、聖」
そして、夢見が良いのか、ニコニコと笑いながら、口をもぐつかせている彼女に、そう告げると、サラリと、その髪を撫でる。
――……こんな風に、可愛くて美人だったら――江陽との結婚も、ためらわなくて済むんだろうか……。
一番最初、翔陽くんは、江陽の相手を聖と勘違いしていた。
けれど――お似合いだとも。
思い出したら、何だか腹が立ってきた。
――……ええ、どうせ、私は、江陽には見劣りしますよ!
これまでの生活、仕事、それに加えて――外見。
プロポーズにうなづいた後から、次々と現れる問題に、私は、どう折り合いをつければ良いんだろう……。
けれど、彼の表情からは、特に負の感情は見受けられず、ひとまず胸を撫で下ろした。
「名木沢さん、申し訳ありませんが、聖の部屋の鍵はわかりますか」
「え、あ、ハイ――お待ちください」
まるで、仕事のような言い方になってしまうが、大きなくくりで言えば、この人も同業だ。
うなづいた私は、手に持っていた聖のバッグの外ポケットから、部屋の鍵を取り出し、そのままドアを開けた。
「ありがとうございます。――相当、親しいんですね」
「え、あ。……ええ、まあ……彼女には、自分がつぶれた時には、鍵を開けるように頼まれておりますので」
「そうでしたか。ありがとうございます」
彼は、私が開けたドアを通り、リビングの方へ聖を運ぶと、そのまま下ろす。
平衡感覚の無い彼女は、パタリ、と、横に倒れた。
「おい、聖!」
「――んー……?」
「あの……こんな風になると、たぶん、朝まで起きませんよ」
「――……え」
ギョッとして、想真さんは、私を振り返った。
「なので、そういう時は、いつも私の部屋に泊めているんです」
「……重ね重ね、妹が、申し訳ありません……」
あきれ返ったように、彼はそう言って、頭を下げる。
「いえ、私も、聖――さんには、お世話になりっぱなしなので……」
「ああ、呼び捨てで良いですよ。聖がそう呼ばせているのなら、構いませんから」
何だか、言葉の端々に、これまで彼女が遭遇したいろいろが感じ取られ、眉を下げる。
「――大変、でしたでしょう」
思わず口にした言葉に、彼は、眉を寄せ、聞き返した。
「――それは、どういう意味で?」
「……いえ、聖から、昔からいろいろと面倒事に巻き込まれていたと、聞いていたので……」
その彼女についていてくれたのが――この方なのだ。
彼は、合点がいったのか、うなづいてくれた。
「そこまで、ご存じでしたか。――まあ、欲目ですが、妹達の中でコイツが一番美人なんで……」
「いえ、誰が見ても、聖は美人ですよ。……でも、だからこそ、辛い事もあったと」
「――ありがとうございます。……そう言っていただけると、少しは報われます」
想真さんは、聖を見やり、立ち上がる。
その高さは、私が、顔を垂直に上げなければいけない程。
そんな彼は、こちらを見下ろし、微笑んだ。
さすがに、聖のお兄さん。どんな表情でも、イケメンは崩れない。
「――でも、名木沢さんも、お綺麗ですよ?」
「へ?」
だが、唐突に、そんな言葉を投げかけられ、私は、完全に硬直。
対する彼は平然と頭を下げると、聖をよろしくお願いします、と、部屋を後にした。
――ああ、もう、社交辞令にも程がある!
――聖には悪いけれど――女慣れしていない?
私は、憤りながらも、ゴロゴロと寝ぼけ半分に転がっている聖に、ベッドルームから持って来た布団を敷き、どうにか彼女を滑り込ませる。
「もう……メイク落としは、明日。――ていうか、全部明日よ、聖」
そして、夢見が良いのか、ニコニコと笑いながら、口をもぐつかせている彼女に、そう告げると、サラリと、その髪を撫でる。
――……こんな風に、可愛くて美人だったら――江陽との結婚も、ためらわなくて済むんだろうか……。
一番最初、翔陽くんは、江陽の相手を聖と勘違いしていた。
けれど――お似合いだとも。
思い出したら、何だか腹が立ってきた。
――……ええ、どうせ、私は、江陽には見劣りしますよ!
これまでの生活、仕事、それに加えて――外見。
プロポーズにうなづいた後から、次々と現れる問題に、私は、どう折り合いをつければ良いんだろう……。