大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
13.すべて、過去の事、なのだ
昨日のアルコールは、多少残ってはいたが、仕事に支障が出るほどでは無かった。
始業後から、いつものように企画書類のチェックやら、確認やら。
ただ、ふとした瞬間に、昨日の江陽の悲しそうな微笑みが脳裏をよぎり、手は止まる。
今日、ヤツは、企画が通った商品のサンプル確認に、工場へ直接向かっている。
何だかんだと、この二年で、一班の仕事も板についてきたようだ。
顔を合わせない事で、余計、罪悪感が募ってしまう気もするが――何とか、集中しなければ。
心の中で気合いを入れ、再び、書類に視線を落とす。
――けれど。
やはり、いつものようにはいかず、結局、ダラダラと、残業せざるを得なくなってしまったのだった。
「そろそろ、終わりにしませんか、名木沢さん?」
不意に、頭上から声がかかり、顔を上げる。
「――片桐さん」
私が呼べば、彼は、変わらない穏やかな微笑みをくれた。
そして、隣にイスを持って来ると、そのまま座る。
「あ、あの?」
「集中できないままの残業は、時間の無駄、でしょう?」
「――っ……」
思わず言葉を失ってしまう。
――ああ、やっぱり、この人にはお見通しなんだ……。
私は、持っていた書類を置くと、頭を下げた。
「――すみません」
「僕に謝る必要は無いけどね」
「でも」
彼は、私の机の上に肘をつくと、のぞき込んで尋ねる。
「――結婚間近で、集中切れた?」
茶化すように言う片桐さんの気持ちを考えると、一瞬、口ごもってしまう。
――彼からも、プロポーズはされたのだ。
――二年も、前に。
黙り込んでしまった私に、彼は、穏やかに――けれど、どこか、棘のある言い方で続けた。
「僕達の肝煎りの企画、浮ついた気分で目を通されてもね」
「――す、みま、せん……」
残業してまで、目を通していたのは――四班――片桐さんの新規企画班の書類。
先日から空いた時間をすべて使っていたけれど、何だかんだと集中できずにいたのだ。
それは、江陽とのいろんな問題もあるし、結婚自体が引っかかっていたという事もある。
私は、唇を噛み、片桐さんに頭を下げた。
――ああ、何て、恥ずかしい。
結婚に関するいろいろな問題で、頭が一杯というのもあったけれど――それで、仕事のパフォーマンスを落とすのは、違うだろう。
にじみ出てくる涙をこらえていると、そっと、頬を撫でられる。
顔を上げれば、眉を下げた片桐さんが、歪んだ視界に入った。
始業後から、いつものように企画書類のチェックやら、確認やら。
ただ、ふとした瞬間に、昨日の江陽の悲しそうな微笑みが脳裏をよぎり、手は止まる。
今日、ヤツは、企画が通った商品のサンプル確認に、工場へ直接向かっている。
何だかんだと、この二年で、一班の仕事も板についてきたようだ。
顔を合わせない事で、余計、罪悪感が募ってしまう気もするが――何とか、集中しなければ。
心の中で気合いを入れ、再び、書類に視線を落とす。
――けれど。
やはり、いつものようにはいかず、結局、ダラダラと、残業せざるを得なくなってしまったのだった。
「そろそろ、終わりにしませんか、名木沢さん?」
不意に、頭上から声がかかり、顔を上げる。
「――片桐さん」
私が呼べば、彼は、変わらない穏やかな微笑みをくれた。
そして、隣にイスを持って来ると、そのまま座る。
「あ、あの?」
「集中できないままの残業は、時間の無駄、でしょう?」
「――っ……」
思わず言葉を失ってしまう。
――ああ、やっぱり、この人にはお見通しなんだ……。
私は、持っていた書類を置くと、頭を下げた。
「――すみません」
「僕に謝る必要は無いけどね」
「でも」
彼は、私の机の上に肘をつくと、のぞき込んで尋ねる。
「――結婚間近で、集中切れた?」
茶化すように言う片桐さんの気持ちを考えると、一瞬、口ごもってしまう。
――彼からも、プロポーズはされたのだ。
――二年も、前に。
黙り込んでしまった私に、彼は、穏やかに――けれど、どこか、棘のある言い方で続けた。
「僕達の肝煎りの企画、浮ついた気分で目を通されてもね」
「――す、みま、せん……」
残業してまで、目を通していたのは――四班――片桐さんの新規企画班の書類。
先日から空いた時間をすべて使っていたけれど、何だかんだと集中できずにいたのだ。
それは、江陽とのいろんな問題もあるし、結婚自体が引っかかっていたという事もある。
私は、唇を噛み、片桐さんに頭を下げた。
――ああ、何て、恥ずかしい。
結婚に関するいろいろな問題で、頭が一杯というのもあったけれど――それで、仕事のパフォーマンスを落とすのは、違うだろう。
にじみ出てくる涙をこらえていると、そっと、頬を撫でられる。
顔を上げれば、眉を下げた片桐さんが、歪んだ視界に入った。