大嫌い同士の大恋愛     ー結婚狂騒曲ー
15.アイツを信じていたいと思ってしまうのだ
 インターフォンが響き渡り、うっすらと目を開ける。
 まぶたが重い。
 私は、目尻に残る涙を指で拭きながら、ゆっくりと立ち上がった。
 画面を見やれば、聖の心配そうな顔がアップで現れ、一拍置いて苦笑いだ。

「……どうしたの、聖?」

『どうしたの、は、羽津紀だよー!ずっと、メッセージ送ってたのにー!』

「え、ああ、ごめんなさい。……ちょっと、眠ってたの」

 すると、彼女は、眉を寄せる。
『中、入るよ?』
「……大丈夫よ」
 さすがに、大泣きした顔を見せたくはない。
 けれど、珍しく聖は引き下がらなかった。
『鍵、開けて。――じゃなきゃ、管理人さん呼ぶよ?』
「ちょっ……やめなさい、開けるわよ!」
 ギョッとして、私は、玄関まで小走りで向かう。
 こんな事で、呼ばないでちょうだい!
 慌てて鍵を開けると、聖は、仁王立ちで待機していた。

「聖――……」

 けれど、その後ろの影に、顔を上げた私は、硬直してしまった。

「そ……想真……さん……」

「――えっと……聖が、すみません。お邪魔なら引き取りますので」

 彼は、苦笑いで私に視線を向け――すぐに、逸らした。
 もしかしたら、泣いていたのを勘づかれたのかもしれない。
 その気遣いに感謝しながら、私は、首を振る。
「……いえ……構いません」
「お邪魔するね、羽津紀!想兄ちゃんは、帰った、帰った!」
 もしかしたら、緊急避難なのか。
 想真さんは、肩をすくめ、うなづく。
「わかった、わかった。ただな、聖。今回の男は、滅多にお目にかかれないハイスペックだぞ?」
「アタシには、必要無い!」
「だからな……」
 やはり、お見合い写真を持って来たのか。
 聖は、顔を真っ赤にしながら叫ぶ。
「一体、いつになったら、わかってくれるの⁉アタシには、そんなの、必要無いの!」
「でも、相手もいないんだろう。お前は、特に、変な男が寄って来るんだから、家族全員心配してるんだよ」
「人の話、聞いてる⁉」
 何とか聖をなだめようと、想真さんは下手(したで)に出るが、平行線だ。
 すると、完全にキレた彼女は、私の腕を取り、しがみついた。

「アタシには、羽津紀がいれば良いのー!!!」

「――ちょっと、聖!」

 慌てて引きはがそうとするが、思いのほか、力が強かった。
 火事場の馬鹿力、とでも言うのか。

 ――ただ……今じゃないでしょうに。

「……おい、聖、お前……」
 聖の癇癪に、ただならぬものを感じたのか、今度は、想真さんが慌てた。
「羽津紀さん、婚約者いるんですよね。――聖と、そういう関係(・・・・・・)じゃないですよね?」


「ハァア!??そんな訳、無いでしょう!もう、アンタ等、ちゃんと話し合いなさい‼」


 反射で叫んで――固まった。
 ――マズい。
 ――親友のお兄さんに、何という物言い。

 目を丸くした想真さんを、恐る恐る見やると、彼は、放心状態で私を見つめていた。
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