大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
「……あ……あの……」
「ごめん、羽津紀……」
聖は、私から離れ、シュンと肩を落とす。
それはそれで、庇護欲をそそる可愛らしいしぐさだけれど。
「ああ、もう、ごめんなさい!でも、いろいろありすぎて、私だってパニックなのよ!」
そう叫ぶと、二人は、揃って私に頭を下げた。
「――申し訳ありません……重ね重ね、ご迷惑を……」
「そういう事じゃないです、想真さん。まず、聖と腹を割って話すのが先だと思いますが」
「――……っ……」
「聖が、何故、頑なに見合い話を嫌がっているのか――その理由を知ろうともせずに進めようとするのは、おかしくないですか」
まるで、江陽の事を言っているような錯覚を起こしそうになり、私は、唇を噛む。
そして、様子をうかがっている聖を見やると、大きく息を吐き、眉を下げた。
「聖、アンタも、子供じゃないんだから。嫌だ、嫌だ、で、済まそうとしないの」
「――……うん……」
まるで、妹を諭すように言うと、聖は、素直にうなづく。
こういうところは、実の妹よりも可愛げがある。
彼女は、少しだけ緊張しながらも、想真さんを真っ直ぐに見て言った。
「……想兄ちゃん、アタシ、結婚するなら、羽津紀みたいに――ちゃんと、恋愛したい」
私は、以前、彼女が言った事を思い出し、胸が詰まる。
――まだ、そう思ってくれていたのね。
――……なのに――……。
「――……でも、会ってから恋愛になる事もあるだろう。きっかけの一つだと思ってくれれば……」
想真さんは、なだめるように返すが、聖は頑なに首を振った。
「結婚前提っていうのが嫌なの。――年齢とかもあるけど……自分の意思で、結婚したいって思わなきゃ、意味無いよ」
聖は、口元を引き、それ以上は引かないとばかりに、想真さんを見つめた。
彼は、少しの間黙り込み、そして、私をチラリと見やる。
「……わかった。……じゃあ、気が変わったら、連絡してくれ。いつでも用意はしておくから」
「――う、うん!ありがとー、想兄ちゃん!」
聖は、目を丸くした後、満面の笑みで想真さんにうなづく。
だが、誰もが見惚れるようなその表情に耐性があるのか、彼は、肩をすくめ、うなづくだけだった。
そして、去って行った彼を見送った後、聖は、私を振り返った。
「ありがとー、羽津紀!」
「いえ……でも、良かったわね。想真さん、理解してくれて」
そう返すと、彼女は、複雑な表情を見せた。
「うん……と、言いたいところだけど……たぶん、年イチくらいで持ってきそう……」
「まあ、今は引き下がってくれたでしょう」
それだけでも、良しとしなければ。
私はそう続けるが、彼女は、表情を変えない。
「聖……?」
「ごめん……羽津紀……」
「え?」
突然の謝罪に、まだ、何か問題があったのかと身構える。
けれど――聖の口から出てきたのは、思ってもみない言葉だった。
「たぶん……だけど……想兄ちゃん、羽津紀に興味持っちゃった……」
「……は??」
意味をかみ砕けない。
興味、とは。
戸惑う私に、聖は、更に続けた。
「えっと――恋愛的な、興味?」
「……はぁ??」
――大して接触も無いのに??
「あのね、想兄ちゃん……気の強い女の人が好きなんだ」
「……私がそうだって言うの?」
「自覚あるでしょ?」
「……否定はしないけれど……」
だからと言って、すぐに恋愛云々は違うのではないか。
聖は、そんな私の顔を見て、眉を下げる。
「別に、確定じゃないけど……何か、羽津紀の事見る目が、昔、彼女と一緒にいた時と似ててさー……」
「気のせいよ。……それに、私は無理だし」
「そ、そうだよね!羽津紀には、江陽クンがいるんだし――……」
そう言いかけ、聖の言葉は止まった。
「……羽津紀」
「え」
自覚の無い涙は、彼女の暖かい手に包まれ、拭われた。
「……やっぱり、何かあったんだよね。……ゴメンね、ウチのゴタゴタに巻き込んじゃって……」
「……気にしないでいいのよ……」
うつむき、緩々と首を振る。
――その反動で、涙はあふれ出てきた。
昨夜、あんなに泣き崩れたのに――まだ、出てくるのか。
聖は、そっと、私を抱き寄せ、涙が収まるまで背中をずっと撫でていてくれた――。
「ごめん、羽津紀……」
聖は、私から離れ、シュンと肩を落とす。
それはそれで、庇護欲をそそる可愛らしいしぐさだけれど。
「ああ、もう、ごめんなさい!でも、いろいろありすぎて、私だってパニックなのよ!」
そう叫ぶと、二人は、揃って私に頭を下げた。
「――申し訳ありません……重ね重ね、ご迷惑を……」
「そういう事じゃないです、想真さん。まず、聖と腹を割って話すのが先だと思いますが」
「――……っ……」
「聖が、何故、頑なに見合い話を嫌がっているのか――その理由を知ろうともせずに進めようとするのは、おかしくないですか」
まるで、江陽の事を言っているような錯覚を起こしそうになり、私は、唇を噛む。
そして、様子をうかがっている聖を見やると、大きく息を吐き、眉を下げた。
「聖、アンタも、子供じゃないんだから。嫌だ、嫌だ、で、済まそうとしないの」
「――……うん……」
まるで、妹を諭すように言うと、聖は、素直にうなづく。
こういうところは、実の妹よりも可愛げがある。
彼女は、少しだけ緊張しながらも、想真さんを真っ直ぐに見て言った。
「……想兄ちゃん、アタシ、結婚するなら、羽津紀みたいに――ちゃんと、恋愛したい」
私は、以前、彼女が言った事を思い出し、胸が詰まる。
――まだ、そう思ってくれていたのね。
――……なのに――……。
「――……でも、会ってから恋愛になる事もあるだろう。きっかけの一つだと思ってくれれば……」
想真さんは、なだめるように返すが、聖は頑なに首を振った。
「結婚前提っていうのが嫌なの。――年齢とかもあるけど……自分の意思で、結婚したいって思わなきゃ、意味無いよ」
聖は、口元を引き、それ以上は引かないとばかりに、想真さんを見つめた。
彼は、少しの間黙り込み、そして、私をチラリと見やる。
「……わかった。……じゃあ、気が変わったら、連絡してくれ。いつでも用意はしておくから」
「――う、うん!ありがとー、想兄ちゃん!」
聖は、目を丸くした後、満面の笑みで想真さんにうなづく。
だが、誰もが見惚れるようなその表情に耐性があるのか、彼は、肩をすくめ、うなづくだけだった。
そして、去って行った彼を見送った後、聖は、私を振り返った。
「ありがとー、羽津紀!」
「いえ……でも、良かったわね。想真さん、理解してくれて」
そう返すと、彼女は、複雑な表情を見せた。
「うん……と、言いたいところだけど……たぶん、年イチくらいで持ってきそう……」
「まあ、今は引き下がってくれたでしょう」
それだけでも、良しとしなければ。
私はそう続けるが、彼女は、表情を変えない。
「聖……?」
「ごめん……羽津紀……」
「え?」
突然の謝罪に、まだ、何か問題があったのかと身構える。
けれど――聖の口から出てきたのは、思ってもみない言葉だった。
「たぶん……だけど……想兄ちゃん、羽津紀に興味持っちゃった……」
「……は??」
意味をかみ砕けない。
興味、とは。
戸惑う私に、聖は、更に続けた。
「えっと――恋愛的な、興味?」
「……はぁ??」
――大して接触も無いのに??
「あのね、想兄ちゃん……気の強い女の人が好きなんだ」
「……私がそうだって言うの?」
「自覚あるでしょ?」
「……否定はしないけれど……」
だからと言って、すぐに恋愛云々は違うのではないか。
聖は、そんな私の顔を見て、眉を下げる。
「別に、確定じゃないけど……何か、羽津紀の事見る目が、昔、彼女と一緒にいた時と似ててさー……」
「気のせいよ。……それに、私は無理だし」
「そ、そうだよね!羽津紀には、江陽クンがいるんだし――……」
そう言いかけ、聖の言葉は止まった。
「……羽津紀」
「え」
自覚の無い涙は、彼女の暖かい手に包まれ、拭われた。
「……やっぱり、何かあったんだよね。……ゴメンね、ウチのゴタゴタに巻き込んじゃって……」
「……気にしないでいいのよ……」
うつむき、緩々と首を振る。
――その反動で、涙はあふれ出てきた。
昨夜、あんなに泣き崩れたのに――まだ、出てくるのか。
聖は、そっと、私を抱き寄せ、涙が収まるまで背中をずっと撫でていてくれた――。