大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
「名木沢さん」
「……す、みま、せっ……」
私は、片桐さんの手を頬から外すと、頭を下げる。
――それでも――これ以上は、甘えられない。
――……誰より、この人とは、対等の立場でいたいから――……。
「……送ろうか」
彼に、その思いは伝わったのか。
そう、控えめに言われるが、首を振る。
「……じゃあ……気をつけて帰るんだよ」
「……ハ……イ……」
その場で頭を深く下げ、片桐さんを見送る。
そして、ハンカチを取り出し、崩壊しただろうメイクを押さえながら、涙を拭きとる。
――外が暗くて、良かった。
こんなグチャグチャな顔なんて、晒したくはない。
けれど、帰ったはずの彼は、何故か、すぐに戻って来た。
――どこか、あせった様子で。
「……片桐さん……?」
私は、ハンカチで顔を半分近く隠しながら、彼を呼ぶ。
「――名木沢さん、来て」
「え」
「――……弟くんが、来てる」
「――……え……」
片桐さんの後に続いて、小走りになって社屋を出る。
すると、以前のように、目の前で翔陽くんが学校の制服のまま、待ち構えていた。
「……翔陽くん……何で……」
「――……何で、は、こっちのセリフですよ」
「ハア⁉」
唐突に責められ、思わず目を剥いてしまう。
だが、彼は、当然のように私に言った。
「何を大人しくしてるんですか。――あなた、そんな女じゃなかったでしょう!」
「な……何よ、突然!訳のわからない事、言わないでよ!」
「何で、兄さんを取り戻しに来ないんですか!!!」
「――え」
私は、いら立つように言われた言葉に、硬直した。
――……江陽を……取り戻す……?
「な……何で、そんな事……」
私は、両手を握り締めると、翔陽くんをにらみつけた。
――今さら、そんな事を言われても、もう、遅いのに。
「悪いけど、私には、できない。アイツが、自分の意思で決めたんでしょう。それに……あなたには、願ったりだったんじゃないの。お見合いが成立して、アイツが望み通り結婚し――」
一気に、まくし立てるように言い終えようとしたが、翔陽くんの、悔しそうな表情に気がつき、言葉は止まった。
彼は、拳をキツく握り締め、そして、絞り出すように言った。
「僕は、それが、幸せだと思ったからっ……!――兄さんに、あんな表情させたかった訳じゃなかった!」
「――……え?」
「あんな――何もかも、あきらめたような――あんな……っ……」
言いながら――翔陽くんは、唇を噛みしめた。
そして、うつむいて肩を震わせる。
すると、私の隣で様子をうかがっていた片桐さんが、一歩前へ出ると、彼に声をかけた。
「……ねえ、弟くん。以前、キミ、名木沢さんに三ノ宮くんと別れろって、せっついていたよね?――彼に相応しい女性と結婚しろって言ってさ。それが、何で、そんな風になったのかな?」
「……す、みま、せっ……」
私は、片桐さんの手を頬から外すと、頭を下げる。
――それでも――これ以上は、甘えられない。
――……誰より、この人とは、対等の立場でいたいから――……。
「……送ろうか」
彼に、その思いは伝わったのか。
そう、控えめに言われるが、首を振る。
「……じゃあ……気をつけて帰るんだよ」
「……ハ……イ……」
その場で頭を深く下げ、片桐さんを見送る。
そして、ハンカチを取り出し、崩壊しただろうメイクを押さえながら、涙を拭きとる。
――外が暗くて、良かった。
こんなグチャグチャな顔なんて、晒したくはない。
けれど、帰ったはずの彼は、何故か、すぐに戻って来た。
――どこか、あせった様子で。
「……片桐さん……?」
私は、ハンカチで顔を半分近く隠しながら、彼を呼ぶ。
「――名木沢さん、来て」
「え」
「――……弟くんが、来てる」
「――……え……」
片桐さんの後に続いて、小走りになって社屋を出る。
すると、以前のように、目の前で翔陽くんが学校の制服のまま、待ち構えていた。
「……翔陽くん……何で……」
「――……何で、は、こっちのセリフですよ」
「ハア⁉」
唐突に責められ、思わず目を剥いてしまう。
だが、彼は、当然のように私に言った。
「何を大人しくしてるんですか。――あなた、そんな女じゃなかったでしょう!」
「な……何よ、突然!訳のわからない事、言わないでよ!」
「何で、兄さんを取り戻しに来ないんですか!!!」
「――え」
私は、いら立つように言われた言葉に、硬直した。
――……江陽を……取り戻す……?
「な……何で、そんな事……」
私は、両手を握り締めると、翔陽くんをにらみつけた。
――今さら、そんな事を言われても、もう、遅いのに。
「悪いけど、私には、できない。アイツが、自分の意思で決めたんでしょう。それに……あなたには、願ったりだったんじゃないの。お見合いが成立して、アイツが望み通り結婚し――」
一気に、まくし立てるように言い終えようとしたが、翔陽くんの、悔しそうな表情に気がつき、言葉は止まった。
彼は、拳をキツく握り締め、そして、絞り出すように言った。
「僕は、それが、幸せだと思ったからっ……!――兄さんに、あんな表情させたかった訳じゃなかった!」
「――……え?」
「あんな――何もかも、あきらめたような――あんな……っ……」
言いながら――翔陽くんは、唇を噛みしめた。
そして、うつむいて肩を震わせる。
すると、私の隣で様子をうかがっていた片桐さんが、一歩前へ出ると、彼に声をかけた。
「……ねえ、弟くん。以前、キミ、名木沢さんに三ノ宮くんと別れろって、せっついていたよね?――彼に相応しい女性と結婚しろって言ってさ。それが、何で、そんな風になったのかな?」