大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
レストランでは、見目も美しいコース料理をいただく。
テンション高く写真を撮ったり、雑談に花を咲かせている家族を見やりながら――私は、何の味も感じられなかった。
けれど、気遣ってくれるみんなの気持ちを台無しにはできない。
「いやぁ、お姉ちゃんのおかげで、美味しいものにありつけたわー」
食事が終わり、店を後にすると、皐津紀が、茶化すように笑いながら言った。
「ちょっと、皐津紀!」
そんな妹を、母親は険しい顔で見やった。
「――……ゴメン。……でもさ、あんまり深刻になるのもどうかと思うよ。もう、縁が無かったとでも思ってさ、心機一転しなきゃ」
「……そりゃあ、そうだけどさ……」
そして、二人は私をチラリと見やる。
それに、緩々と首を振って返した。
「……気にしないで。……でも、しばらくは……放っておいてくれないかしら……」
そう言うと、紫津紀が、勢いよく私の腕にしがみついた。
「……羽津紀ちゃん、きっと、もっと、素敵な人が現れるよ」
「……ありがと、紫津紀」
――でも、私は――
――江陽以外の男なんて――もう、いらない。
そうは、続けられず、私は取り繕うように微笑んだ。
それから、全員でお墓参りを終え、帰宅する。
「じゃあ、アンタ達、早くお風呂入ってね」
「「ハーイ」」
妹二人は、同じように返事をし、それぞれの部屋に入って行く。
特に来訪する親戚もいないので、後は通常仕様。
けれど、母親は、仏壇の前に正座していた。
今日だけは――いつもより、三割くらい大人しい。
まあ、これくらいがちょうど良いとは思うけれど。
私は、その隣に同じように正座した。
「――羽津紀」
「……ゴメン。……お母さん、楽しみにしてたでしょ、結婚の事……」
視線の先には、若いまま変わらない父親の写真。
母親は、肩をすくめて、私を見やった。
「何言ってんのよ。――アンタ達の決めた事でしょ」
「……それは……そう、なんだけど……」
口ごもってしまうのは、お互いにうなづき合った訳じゃないから。
母親は、何かを悟ったのか、少しの間、口を閉じる。
そして、ポツリと言った。
「……でも、お父さんが生きてたら――アンタ達まとめて、理詰めで説教されるかもねぇ」
「え」
何かを思い出したのか、クスクスと、母親は懐かしそうに笑う。
「アンタは覚えてないだろうけど――昔、こうちゃんが、保育園に迎えに行ったお父さんに、言った事があるのよ」
「――え?」
――オレ、うーちゃんとけっこんする!
――そうかい。……なら、まず、キミがちゃんとした大人になって、羽津紀を幸せにできるだけのものを身につけなさい。じゃなきゃ、僕の可愛い娘をあげられないからね。
「――……保育園児に、何を真正面から……」
苦笑いで、私は写真を見つめた。
――なら……きっと、今、お父さんがいたら……お説教、かな……。
テンション高く写真を撮ったり、雑談に花を咲かせている家族を見やりながら――私は、何の味も感じられなかった。
けれど、気遣ってくれるみんなの気持ちを台無しにはできない。
「いやぁ、お姉ちゃんのおかげで、美味しいものにありつけたわー」
食事が終わり、店を後にすると、皐津紀が、茶化すように笑いながら言った。
「ちょっと、皐津紀!」
そんな妹を、母親は険しい顔で見やった。
「――……ゴメン。……でもさ、あんまり深刻になるのもどうかと思うよ。もう、縁が無かったとでも思ってさ、心機一転しなきゃ」
「……そりゃあ、そうだけどさ……」
そして、二人は私をチラリと見やる。
それに、緩々と首を振って返した。
「……気にしないで。……でも、しばらくは……放っておいてくれないかしら……」
そう言うと、紫津紀が、勢いよく私の腕にしがみついた。
「……羽津紀ちゃん、きっと、もっと、素敵な人が現れるよ」
「……ありがと、紫津紀」
――でも、私は――
――江陽以外の男なんて――もう、いらない。
そうは、続けられず、私は取り繕うように微笑んだ。
それから、全員でお墓参りを終え、帰宅する。
「じゃあ、アンタ達、早くお風呂入ってね」
「「ハーイ」」
妹二人は、同じように返事をし、それぞれの部屋に入って行く。
特に来訪する親戚もいないので、後は通常仕様。
けれど、母親は、仏壇の前に正座していた。
今日だけは――いつもより、三割くらい大人しい。
まあ、これくらいがちょうど良いとは思うけれど。
私は、その隣に同じように正座した。
「――羽津紀」
「……ゴメン。……お母さん、楽しみにしてたでしょ、結婚の事……」
視線の先には、若いまま変わらない父親の写真。
母親は、肩をすくめて、私を見やった。
「何言ってんのよ。――アンタ達の決めた事でしょ」
「……それは……そう、なんだけど……」
口ごもってしまうのは、お互いにうなづき合った訳じゃないから。
母親は、何かを悟ったのか、少しの間、口を閉じる。
そして、ポツリと言った。
「……でも、お父さんが生きてたら――アンタ達まとめて、理詰めで説教されるかもねぇ」
「え」
何かを思い出したのか、クスクスと、母親は懐かしそうに笑う。
「アンタは覚えてないだろうけど――昔、こうちゃんが、保育園に迎えに行ったお父さんに、言った事があるのよ」
「――え?」
――オレ、うーちゃんとけっこんする!
――そうかい。……なら、まず、キミがちゃんとした大人になって、羽津紀を幸せにできるだけのものを身につけなさい。じゃなきゃ、僕の可愛い娘をあげられないからね。
「――……保育園児に、何を真正面から……」
苦笑いで、私は写真を見つめた。
――なら……きっと、今、お父さんがいたら……お説教、かな……。