大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
「……わかったわ。……でも、恋愛云々は無理だって、ちゃんと伝えておいてよね」
『……え、い、良いの、羽津紀⁉』
「自分で言ったんでしょうが」
『そうだけど――……本当に、良いの?』
聖は、何度も念を押す。
半分あきれながら、私は、うなづいた。
――気晴らしなんて、到底できないだろうけれど。
この先、聖と親友でい続ける以上、避けては通れない方なのだから、印象を悪くさせたくはなかった。
翌日、待ち合わせ場所の、会社の最寄り駅に到着すると、私は辺りを見回した。
まだ、お盆休み期間。人の流れは多い。
そんな中、駅ナカの店から出てきた男性に、周囲の女性の視線が向かった。
「おはようございます、羽津紀さん。お待たせしましたね」
「……お、おはようございます……想真さん……。あの、今来たところ、ですので……」
にこやかに目の前にやって来た想真さんは、そんな視線をものともせず。
「聖から聞いてます?」
「え」
唐突に尋ねられ、キョトンとして返してしまう。
すると、彼は、苦笑いだ。
「オレ、聖に言ったはずなんですけどね。――羽津紀さんを紹介してくれ、って」
「え、あ……」
その事か。
私は、身を縮こませると、うなづいた。
「……それは、ええ、まあ……」
曖昧に流そうとするが、彼は、逃がしてはくれなかった。
「それで、聞いた上で来てくれたのは、期待しても良いって事でしょうか?」
「――……っ……」
あまりにストレートな問いかけに、固まってしまう。
想真さんは、そんな私を楽しそうに見やった。
「すみません、こういうのは、早目に教えてもらいたいタチでして」
「あ、あの……聖から聞いたかもしれませんが――私……婚約者と、別れたばかりでして……」
まさか、自分がそんな言い回しをするとは思わなかったが、事実は事実だ。
けれど、彼は、初耳だったのか、目を丸くした。
「――え。……それは、知りませんでした」
という事は、きっと、聖は、気を遣ってくれたのだろう。
私は、うつむいたまま、続ける。
「――そういう訳でして……今は、そんな気持ちになれないというか……」
「そうでしたか。――じゃあ、逆にチャンスなのかな」
「え」
想真さんは、そう言って、私の手を取った。
「え、あ、あのっ……!」
「付け入るつもりは無いので、徐々にお互いを知っていきませんか?」
「想真さん」
「それで望みがあるのか無いのか、決めればいいので」
私は、彼を見上げる。
その、真っ直ぐな視線は――江陽と重なってしまった。
「……あの……すみません。……恋愛前提というのは――……」
「――別に、今すぐに決めろという訳じゃありませんよ」
何とか望みを繋ごうというのか、想真さんは、私の手を離す。
それは、彼なりの誠実さなのだろう。
――けれど。
江陽と重ねた時点で、もう、無理なのだ。
「申し訳ありません。――聖のお兄さんですので、突き放すのも気が引けたもので」
そう言って、頭を下げる。
すると、頭上から、クスクスと笑い声が聞こえ、私は顔を上げた。
「……あの……?」
「いやぁ、聖が言ってたとおり、頑固な女ですね」
「――……っ……」
――一体、何を吹き込んだのよ、聖は!
恥ずかしさに身体が熱くなってしまう。
想真さんは、笑いながら、私をのぞき込んだ。
「――わかりました。今日のところは、そういうものは無しで――ただ、気晴らしに出かけませんか」
「……ハ……ハイ……」
今日のところは、という言い回しに引っかかるが、これ以上、公共の場で悶着するのも申し訳無いし、何より恥ずかしい。
周囲の好奇の視線は、私にも向けられているのだから。
「……じ、じゃあ……よろしくお願いします……」
私は、半ばあきらめながら、彼に頭を下げたのだった。
『……え、い、良いの、羽津紀⁉』
「自分で言ったんでしょうが」
『そうだけど――……本当に、良いの?』
聖は、何度も念を押す。
半分あきれながら、私は、うなづいた。
――気晴らしなんて、到底できないだろうけれど。
この先、聖と親友でい続ける以上、避けては通れない方なのだから、印象を悪くさせたくはなかった。
翌日、待ち合わせ場所の、会社の最寄り駅に到着すると、私は辺りを見回した。
まだ、お盆休み期間。人の流れは多い。
そんな中、駅ナカの店から出てきた男性に、周囲の女性の視線が向かった。
「おはようございます、羽津紀さん。お待たせしましたね」
「……お、おはようございます……想真さん……。あの、今来たところ、ですので……」
にこやかに目の前にやって来た想真さんは、そんな視線をものともせず。
「聖から聞いてます?」
「え」
唐突に尋ねられ、キョトンとして返してしまう。
すると、彼は、苦笑いだ。
「オレ、聖に言ったはずなんですけどね。――羽津紀さんを紹介してくれ、って」
「え、あ……」
その事か。
私は、身を縮こませると、うなづいた。
「……それは、ええ、まあ……」
曖昧に流そうとするが、彼は、逃がしてはくれなかった。
「それで、聞いた上で来てくれたのは、期待しても良いって事でしょうか?」
「――……っ……」
あまりにストレートな問いかけに、固まってしまう。
想真さんは、そんな私を楽しそうに見やった。
「すみません、こういうのは、早目に教えてもらいたいタチでして」
「あ、あの……聖から聞いたかもしれませんが――私……婚約者と、別れたばかりでして……」
まさか、自分がそんな言い回しをするとは思わなかったが、事実は事実だ。
けれど、彼は、初耳だったのか、目を丸くした。
「――え。……それは、知りませんでした」
という事は、きっと、聖は、気を遣ってくれたのだろう。
私は、うつむいたまま、続ける。
「――そういう訳でして……今は、そんな気持ちになれないというか……」
「そうでしたか。――じゃあ、逆にチャンスなのかな」
「え」
想真さんは、そう言って、私の手を取った。
「え、あ、あのっ……!」
「付け入るつもりは無いので、徐々にお互いを知っていきませんか?」
「想真さん」
「それで望みがあるのか無いのか、決めればいいので」
私は、彼を見上げる。
その、真っ直ぐな視線は――江陽と重なってしまった。
「……あの……すみません。……恋愛前提というのは――……」
「――別に、今すぐに決めろという訳じゃありませんよ」
何とか望みを繋ごうというのか、想真さんは、私の手を離す。
それは、彼なりの誠実さなのだろう。
――けれど。
江陽と重ねた時点で、もう、無理なのだ。
「申し訳ありません。――聖のお兄さんですので、突き放すのも気が引けたもので」
そう言って、頭を下げる。
すると、頭上から、クスクスと笑い声が聞こえ、私は顔を上げた。
「……あの……?」
「いやぁ、聖が言ってたとおり、頑固な女ですね」
「――……っ……」
――一体、何を吹き込んだのよ、聖は!
恥ずかしさに身体が熱くなってしまう。
想真さんは、笑いながら、私をのぞき込んだ。
「――わかりました。今日のところは、そういうものは無しで――ただ、気晴らしに出かけませんか」
「……ハ……ハイ……」
今日のところは、という言い回しに引っかかるが、これ以上、公共の場で悶着するのも申し訳無いし、何より恥ずかしい。
周囲の好奇の視線は、私にも向けられているのだから。
「……じ、じゃあ……よろしくお願いします……」
私は、半ばあきらめながら、彼に頭を下げたのだった。