大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
18.失恋の痛みは――仕事で癒す
「――で、どこか、行きたいところはありますか?」
想真さんは、そう言って、周囲を見やる。
この人混みの中、どこへ行っても混雑しているのは、目に見えているのだが――。
「映画とか、観ます?」
「――あ、えっと……」
答えに詰まる。
そもそも、これまでの私の休日は、聖と飲みに行くか、ウィンドウショッピングをするか――部屋でひたすらダラダラしているかの三択なのだ。
――そこに、”デート”というものが加わったのは、ほんの二年前から。
すると、彼は、駅ナカのカフェを見やり言った。
「じゃあ、ひとまず、そこでも入って決めませんか?」
「――ハ、ハイ……すみません……」
気を遣ってもらい、恥ずかしさで埋まりたくなる。
――江陽相手なら、どこへ行きたいかなんて、アイツから提案して、私が乗るか乗らないかを決めるようなものだったのに。
少しだけ前を行く想真さんの後ろ姿を見つめ、心の中で苦ってしまう。
――こんな事を考えるなんて、失礼なのに。
今は――何をどうしたって、アイツの陰がついてまわるのだ。
全国チェーンのカフェに入ると、フワリ、と、コーヒーの香りに迎えられ、ほんの少しだけ、気持ちが凪ぐ。
注文カウンターに向かうと、女性店員が、一瞬だけ想真さんに見惚れるような表情を見せた。
――やはり、兄妹か。
その視線を、当然のものと流し、彼は、私を振り返った。
「羽津紀さん、どれにします?」
「え、あ、えっと……」
この二年で、何とか、舌を噛みそうなメニューは見慣れた。
でも、やはり、迷ってしまう。
「じゃあ、先に――」
想真さんは、そんな私を見やると、自分の分を先に注文した。
その間に、どうにか、無難にコーヒーを頼むと、彼は、私の分も払おうする。
「あの、自分の分は払いますので」
「でも」
「――お気になさらず」
淡々と返し、先に自分の分だけを支払ったので、少々戸惑いながらも、想真さんはうなづいた。
幸い、まだ、混雑する時間帯では無かったようで、そのままコーヒーを受け取ると、二人掛けの席を見つける。
「本当に、良いんですか」
向かいに座りながら、彼が言うので、私は、首を振って返した。
「良いんです。お気になさらないでください」
そう言って、視線を避けるように、コーヒーを口にする。
かぐわしい香りと、バランスの良い苦みと酸味。
さすがにシェアトップを誇る店。レベルは、やはり違うものだ。
想真さんも同じように口にすると、ほう、と、息を吐く。
その様子に違和感を覚え、彼を見やると、苦笑いで返された。
「――これでも、緊張してるんで、あまり見ないでもらえると助かりますが」
「……え」
完全に女慣れしている人だと思っていた。
今までの態度や行動――その、どこにも緊張など感じられなかったのに。
「……申し訳無いんですが……前カノの時にどうやっていたか、どうにか思い出していたくらいでして」
「……そ、そう、でしたか……」
何だか、聞いてはいけないような事を聞いたようで、申し訳無くなってしまう。
「――……あ、あの、そんなに気を遣っていただかなくても……」
「いや、そりゃあ遣いますよ。興味以前に、妹の親友ですから」
――その親友を、恋愛対象にしようとしてるのに?
そう口から出そうになって、ごまかすように、私はコーヒーを飲んだ。
想真さんは、そう言って、周囲を見やる。
この人混みの中、どこへ行っても混雑しているのは、目に見えているのだが――。
「映画とか、観ます?」
「――あ、えっと……」
答えに詰まる。
そもそも、これまでの私の休日は、聖と飲みに行くか、ウィンドウショッピングをするか――部屋でひたすらダラダラしているかの三択なのだ。
――そこに、”デート”というものが加わったのは、ほんの二年前から。
すると、彼は、駅ナカのカフェを見やり言った。
「じゃあ、ひとまず、そこでも入って決めませんか?」
「――ハ、ハイ……すみません……」
気を遣ってもらい、恥ずかしさで埋まりたくなる。
――江陽相手なら、どこへ行きたいかなんて、アイツから提案して、私が乗るか乗らないかを決めるようなものだったのに。
少しだけ前を行く想真さんの後ろ姿を見つめ、心の中で苦ってしまう。
――こんな事を考えるなんて、失礼なのに。
今は――何をどうしたって、アイツの陰がついてまわるのだ。
全国チェーンのカフェに入ると、フワリ、と、コーヒーの香りに迎えられ、ほんの少しだけ、気持ちが凪ぐ。
注文カウンターに向かうと、女性店員が、一瞬だけ想真さんに見惚れるような表情を見せた。
――やはり、兄妹か。
その視線を、当然のものと流し、彼は、私を振り返った。
「羽津紀さん、どれにします?」
「え、あ、えっと……」
この二年で、何とか、舌を噛みそうなメニューは見慣れた。
でも、やはり、迷ってしまう。
「じゃあ、先に――」
想真さんは、そんな私を見やると、自分の分を先に注文した。
その間に、どうにか、無難にコーヒーを頼むと、彼は、私の分も払おうする。
「あの、自分の分は払いますので」
「でも」
「――お気になさらず」
淡々と返し、先に自分の分だけを支払ったので、少々戸惑いながらも、想真さんはうなづいた。
幸い、まだ、混雑する時間帯では無かったようで、そのままコーヒーを受け取ると、二人掛けの席を見つける。
「本当に、良いんですか」
向かいに座りながら、彼が言うので、私は、首を振って返した。
「良いんです。お気になさらないでください」
そう言って、視線を避けるように、コーヒーを口にする。
かぐわしい香りと、バランスの良い苦みと酸味。
さすがにシェアトップを誇る店。レベルは、やはり違うものだ。
想真さんも同じように口にすると、ほう、と、息を吐く。
その様子に違和感を覚え、彼を見やると、苦笑いで返された。
「――これでも、緊張してるんで、あまり見ないでもらえると助かりますが」
「……え」
完全に女慣れしている人だと思っていた。
今までの態度や行動――その、どこにも緊張など感じられなかったのに。
「……申し訳無いんですが……前カノの時にどうやっていたか、どうにか思い出していたくらいでして」
「……そ、そう、でしたか……」
何だか、聞いてはいけないような事を聞いたようで、申し訳無くなってしまう。
「――……あ、あの、そんなに気を遣っていただかなくても……」
「いや、そりゃあ遣いますよ。興味以前に、妹の親友ですから」
――その親友を、恋愛対象にしようとしてるのに?
そう口から出そうになって、ごまかすように、私はコーヒーを飲んだ。